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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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#自然

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.43 第六章

 気になるという寺は、その先だった。さらに、奥へ奥へと歩いて行った。細い道は、やがてゆる…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.45 第六章

 切り立った山や岩、その間を埋めるように作られた住宅地の中にあって、その園庭は、ぽっかり…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.47 第六章

「これは……」  それから、カケルの顔と画面を見比べて、微笑した。 「いいもの、見ました…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.49 第六章

 その姿に、なぜか無性に胸が苦しくなった。 「会いに行けば」  唐突に、しかし、きっぱり…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.51 第六章

「あ―――っ」  今まで聞いたなかで、それが一番大きな圭の声だった。 「こ、こ、これ、ど…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.52 第六章

「はい。えっ? そうですか」  仕事上の電話ではないみたいだ。 「はい。はい。……分かり…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.53 第六章

 通学路を行くと、ちょうど帰ってくる二人が見えた。案の定、傘もなく、濡れてくる。カケルは、店の玄関からかろうじて持ってきた一本の傘を美晴に向かって差し出した。自分が差しているのと、手に一本。傘は二本しかない。美晴はうつむいて、こちらを見ない。何だか様子が変だ。 「どうした」  声をかけると、返事はせずに傘をいったん受け取ったが、そのままそれを圭に押しつけるように渡すと、一人で先にすたすたと歩きだした。  怒っている。しかも、ものすごく。頭から湯気が出そうな、という表現が

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.54 第六章

 二階にいた圭が、下に下りてきた。おなかが空いた、と言う。仕方ないので、簡単に夕食を済ま…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.55 第七章

【これまでのあらすじ】  桜の季節。番組のディレクターであるカケルは、ロケ中に食べた弁当…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.56 第七章

 あいつら、というのは、クラスでも活発な三人組で、時々授業中席を立ったり、休み時間とっく…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.57 第七章

 カケルさんは普通の大人と、少し違う気がする。  普通の大人の男の人がどういうものなのか…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.58 第七章

 次の日の朝起きたとき、一瞬ここがどこだか分からなかった。  そうだ、昨晩はカケルさんの…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.59

 玄関を出ると、カケルさんがうきうきした調子で言った。 「さぁ、これからどこを連れまわそ…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.60 第七章

 途中で国道沿いの歩道から外れて、中の住宅街へ入った。水筒も、何も持ってない。歩き続けるうちに、のどが渇いた。 「カケルさん、のどがかわいた」  そう言うと、カケルさんは歩きながらそっけなく答えた。 「じゃあ、どこかで手に入れないとな」 「どこかって?」 「うーん。どこだろう」 「コンビニ?」  圭がうれしそうに言うと、カケルさんは苦虫をかみつぶしたみたいな顔をして圭を見た。 「誘拐犯は、金がない」 「ええーっ」 「金がないから、誘拐するんだ」  どこまで本気か