【連載小説】「緑にゆれる」Vol.53 第六章
通学路を行くと、ちょうど帰ってくる二人が見えた。案の定、傘もなく、濡れてくる。カケルは、店の玄関からかろうじて持ってきた一本の傘を美晴に向かって差し出した。自分が差しているのと、手に一本。傘は二本しかない。美晴はうつむいて、こちらを見ない。何だか様子が変だ。
「どうした」
声をかけると、返事はせずに傘をいったん受け取ったが、そのままそれを圭に押しつけるように渡すと、一人で先にすたすたと歩きだした。
怒っている。しかも、ものすごく。頭から湯気が出そうな、という表現が