マガジンのカバー画像

緑にゆれる(ロングバージョン)

93
長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
運営しているクリエイター

2023年7月の記事一覧

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.82 第八章

 カケルは、強くつかんだ手を放さずに、うつむいたまま言った。ひとつひとつの言葉を、しぼり…

清水愛
11か月前
6

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.83 第八章

 記憶を失うように眠りこけて、目が覚めたのは、昼も近くになってからだった。ただいま! と…

清水愛
11か月前
5

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.84 第八章

「……何が」  やっとのことで聞き返すと、美晴は、なおも手に力を込めた。 「だめなんです。…

清水愛
11か月前
5

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.85 第八章

 カケルは、風呂場への暗い廊下を、ぼんやりと見つめた。いつもより、少し乱暴に風呂のドアが…

清水愛
11か月前
3

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.86 第八章

   「すきなもののこと」 …

清水愛
11か月前
6

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.87 第九章

   第九章  彼が去ってからの夏は、ほとんど記憶がない。白い夏。すべての色が、強い陽光…

清水愛
11か月前
14

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.88 第九章

 息が詰まるような夏が過ぎ、風に涼やかなものが混じるころ、店に思いがけない客がやって来た。マリは、九月の風と共に、ひらりと店に舞い込んできた。 「すみません、今日は、ランチ、やっていなくて」  それは分かっていた、というように、マリは軽く手を振った。そして、テーブルに座ると、店の中を見回し、外に続くデッキの方を見ながら、カケルは? と聞いた。カケルさんは、いないの。  マリが訪ねて来た目的を察し、美晴はごく簡単に、出て行ったことを告げた。 「なぁんだ。私は、てっきり」  運

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.89 第九章

 何か、言おうとしたのだけれど、口がカラカラに乾いてしまって、美晴はごまかすようにコーヒ…

清水愛
11か月前
9

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.90 第九章

 それから、秋が去って、冬が来て、春が来て、また夏が来た。二度目の秋と、そして冬。  そ…

清水愛
11か月前
11

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.91 第十章

   十章  パーティー、やろうよ。  久しぶりの鎌倉の道を歩きながら、先日の試写会後の…

清水愛
11か月前
2

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.92 第十章

 延々と続くかのように思われた宴も、一人、二人と人が抜けて、終息に向かっていく。あとには…

清水愛
11か月前
6

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.93 終章

   終章  カケルさんと、お母さんと、ぼく。  それからのぼくらは、また一緒に暮らすよ…

清水愛
11か月前
9