【連載小説】「緑にゆれる」Vol.88 第九章
息が詰まるような夏が過ぎ、風に涼やかなものが混じるころ、店に思いがけない客がやって来た。マリは、九月の風と共に、ひらりと店に舞い込んできた。
「すみません、今日は、ランチ、やっていなくて」
それは分かっていた、というように、マリは軽く手を振った。そして、テーブルに座ると、店の中を見回し、外に続くデッキの方を見ながら、カケルは? と聞いた。カケルさんは、いないの。
マリが訪ねて来た目的を察し、美晴はごく簡単に、出て行ったことを告げた。
「なぁんだ。私は、てっきり」
運