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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.93 終章


   終章

 カケルさんと、お母さんと、ぼく。
 それからのぼくらは、また一緒に暮らすようになった。同居人としてではなく、家族として。
 二人は、籍は入れていないけれど、そういう形を事実婚っていうらしい。カケルさんは、人に紹介するとき、ぼくのお母さんのことをパートナー、と言っている。

 そんなぼくらの生活にも、大きな変化がやってきた。
 赤ちゃんができたのだ。
 ぼくの妹。

 今日は四人で、公園に来ている。大きな木の下で、お母さんはゆったり風に吹かれて笑っていて、カケルさんは寝ころがってまどろんでいる。穏やかで、とても幸せそうな顔をして。妹の楓は、ぼくが拾ってきた葉っぱを手にとって、きゃっきゃと笑う。もみじのような小さな手で。

 可愛いなぁ。可愛くって、可愛くってたまらない。
 こんな未来が、ぼくにやってくるなんて、誰が想像できただろう。
 お父さんとお母さんからもらった命があって、お母さんとカケルさんからもらった愛があって、これはずーっと続いて、ぼくらがまた誰かと出会って、つなげていくんだろう。きっと。

 空は美しく晴れていて、ゆったりとみんなが幸せで、日の光の中で笑っている。
 それだけで、何も、言うことはないのだ。


                             (了)
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これで、この物語の連載は終わりとなります。
読んでくださったみなさま、どうもありがとうございました!

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