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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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2022年2月の記事一覧

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.6 第一章

 小さな店内は、温かい静けさに満ちていた。南に開いた大きな窓から、日差しがたっぷりと入っ…

清水愛
2年前
5

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.7 第一章

 夕ごはんも食べていって、と言われて、そのまま夜までごちそうになった。 「ランチの残りで…

清水愛
2年前
3

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.8 第一章

 そのとき、彼女は立ち止まって、小さく、あ、と声を漏らした。 「どうした?」  カケルも…

清水愛
2年前
2

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.9 第二章

   第二章  このピアスをするのは、久しぶりだ。鏡に向かって、ピアスをつけたあと、マリ…

清水愛
2年前
7

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.10 第二章

「そう言えば、先月、カケルさんが来てくれました」  美晴が屈託なくそう言ったとき、計らず…

清水愛
2年前
2

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.11 第二章

 ふいに、おそろしく虚しい気分に襲われた。ぽかーん、とした昼間。みんな忙しく自分の世界で…

清水愛
2年前
4

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.12 第二章

「どうしたの? こんな所で」  肩越しにこちらを振り向いたカケルは、少しだけ眉間にしわを寄せて、何かいたわるような、いたたまれないような顔をしていた。 「あ……近くを通りかかったから」  とっさについた嘘を、彼が見抜いたかどうかは分からない。でも、何かの事情を読み取ったのは確かだ。 彼は、そういう人だ。 「大丈夫?」  彼は、静かな口調でたずねた。マリは、黙って、彼の顔を見つめた。 「いや、あまり大丈夫そうに見えなかったから」  相変わらず、鋭い、と思う。そして

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.13 第二章

 カケルは、リラックスした様子で、マリを見て、そのまま緑に目を移している。 「この間、美…

清水愛
2年前
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