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【長編小説】「青く、きらめく」

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大学の演劇サークルで出会った、カケル、マリ、美晴。三人の視点で描いた、恋愛青春小説。
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#演劇

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.22 第四章 風の章、再び

「あ。カケル部長、復活」  練習室のドアをバタン、と開けると、ファッション誌をめくってい…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.24 第四章 風の章、再び

 二週間のアメリカ行きを、マリから切り出されたのは、部活帰りに寄ったコーヒーショップだっ…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.25 第四章 風の章、再び

「全く、マリには言えねえな」  蔵之助が、ぐいっとバーボンのグラスを傾けながらこぼす。 「…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.26第五章 波の章

五、波の章  タラップを降り立って、最初に思ったのが、カケルに会いたい、だった。会いたい…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.27 第五章 波の章

 不信という感情は、言葉にしなくてもおのずと相手に伝わってしまうのだろう。  アメリカか…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.28 第五章 波の章

 家に帰って自分の部屋のベッドに座ると、マリは急いで台本を開いた。そして、何度か深く呼吸…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.29 第五章 波の章

 きっと、カケルなら普通に答えるだろう。心のどこかでは、そう思っていた。でも、実際そう言われると、傷ついた。 「私とデートした後でも、もう一人の彼女と会ってたのね」  問い詰めるというより、つぶやくように口にした。 「でも、もう終わったんだ。その子とは」 「でも、もしも彼女からもう会うのをやめよう、って言われなかったら、続いてたんでしょう。この部屋で。私の知らないところで」  カケルの瞳孔が開いている。 「私の知らないところで……あなたの心のすき間に他の誰かがすべりこんでしま

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.30 第五章 波の章

 それからしばらくの間、マリは部活に顔を出すことができなかった。  カケルと、あんなこと…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.31 第五章 波の章

 学内の木立が、冬じたくを始めている。マリは、色づき始めたイチョウの木のてっぺんを見上げ…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.32 第六章 風花の章

  六、風花の章 「分かんねぇよなぁ、女って」  よく行く居酒屋でビールをあおると、カケ…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.33 第六章 風花の章

   ***  弟からの留守電が入っていたのは、昨夜遅くだった。第一声は、 「母ちゃん、…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.34 第六章 風花の章

 鼻がちぎれそうな風の中で、美晴は形にならないその想いを抱きしめる。そこには空っぽな自分…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.35 第六章 風花の章

   ***  美晴から直接電話があったのは、水曜日の夜遅くだった。彼女がバイト先に現れ…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.36 第六章 風花の章

 もし、手に缶コーヒーを握っていなかったら、その手でマリを抱き寄せていたかもしれない。  好きだった人になった、と言い切って結ばれた口は、でも、まだ、ひょっとしたら好きなのかもしれない、という気持ちがこぼれてしまうのを喰いとめているかに見えた。それは、単なるうぬぼれだったかもしれない。けれど、揺れる気持ちが彼女の潤んだ瞳に映りこんだとき、たまらない愛おしさがこみ上げてきたのだ。  反射的にカケルはベンチから立ち上がると、缶コーヒーを上着のポケットに突っ込み、マリの手を引っ張っ