数字や時間ばっかり気にしてるとかダセえw byインドの天才ラッパー・釈迦
「この世には実体なんてないっす!カラッポっす!」という態度のことを、仏教では『空観(くーがん)』と呼び、
「カラッポだとしても、まあ仮にもあるっぽく見えてるんだからいいじゃないっすか!」という態度のことを、『仮観(けがん)』と呼ぶ。
めっちゃざっくりだけど。
たとえば、
「どーせこんな仕事、社畜だし、来年には会社つぶれてるかもしれないし、意味ねーよ」が空観。
「いや!まあ、そうかもしれないけど、とりあえずやるっしょ!」が仮観。
2500年前にインドで大ブレイクした、「釈迦」ことラッパー・ゴータマシッダルタ(名前かっけえ)は、空観に偏りすぎると社会的に終わるし、仮観すぎても行き詰まるから、ほどほどがいいよってリリックを書いて、めちゃくちゃ売れた。
言ってることフツーじゃん?
って思うけど、めちゃくちゃ売れた。
このゴータマのMCのスタイルはちょっと変わってた。SEPPOU(説法)というスタイルだった。これはいわゆる1対1で向き合ってラップかます的なやり方なんだよね。
あ、でも現代のMCバトルみたいな感じじゃないんだ。どっちがすげえか、勝負しよーぜ!ってやつじゃない。どっちかというと、カウンセリング。即興で相談されて、それに即興で答える、みたいなパフォーマンスだった。
この即興が、毎回ヤバくて、めっちゃ人気でちゃったんだよね。
この時のインドって、国的にもけっこう荒れてるわけですよ。生きるのにシンドイ状況なわけね。カースト制っていう身分制度がガチガチで、生活が苦しい。
みんな輪廻転生とかカルマとかを信じてたりもするんだけど、別に専門的な教育を受けれたわけではなくて、基本的に無知なんすよ。無知なまま、権力者から言われた世界観をそのまま信じて暮らすしかない、っていう。
お前が奴隷なのはお前のカルマのせい。あきらめろ。
お前の妻が殺されたのはお前の妻のカルマのせい。あきらめろ。
お前の家族が貧乏なのはお前の家族のカルマのせい。あきらめろ。
そんな感じですよ。で、権力者は金も持ってるし、暴力もふるう。勝てないんすよ。下の階層にいる人間は。食べ物がなくなれば、餓死するしかないし、救いが全然ない。
そんな状況を見るに見かねてラップしてたのがMCゴータマなんだよね。
やっぱ、すげえラッパーってのは、こういう逆境から生まれてくるもんなんだなーって、思います。歴史の法則っすね。
MCゴータマはカマすんすよ。
たとえば、もう色々ツラすぎて、
「どーせこの世のものには実体なんてないし、なんもしたくねえんす俺は!!」
っていう空観すぎちゃってるファンには、
「ってことは、そう言ってるお前にも実体なんてないはずだけど、その実体のないお前の言葉を信じてる実体のないお前って、一体なんなん?www」
とすかさずカマして(多分ヒンディー語で韻もバッチリ踏んでたはず)、格の違いをまずは見せつけるんです。頭、めっちゃ柔らかいぞ俺は、みたいな。
そう言われたファンは、
「ふぁ!!???」
ってなるんで、そっからMCゴータマのリリックに耳を貸すようになる、っていう、そういう順序だったみたいっす。
この「ふぁ!!???」ってなる体験が、きっとMCゴータマの人気が爆上がりした理由なんじゃないかな?って、言われてます。(多分)
人が「ふぁ!!???」ってなる瞬間には、2つの矛盾した思考が頭の中でいい感じにクロスしてるみたいなんです。
それは、
「え???コイツ何言ってんのどうゆうこと???」
と
「あ、でもなんか分かる気がするwウケるwww謎いwww」
っていう、一見相反する2つの感覚です。
つまり、
「何言ってるのかよく分かんないけど、なんか妙にスッキリしちゃう何コレw」
ってなるポイントを、MCゴータマは毎回のSEPPOUで、ほぼ100%の命中率でパンチラインをクリーンヒットさせてたっぽいです。
このラインに当てると、一番オーディエンスが沸く、ということを熟知していた。それが人気の由縁でした。
だってこの時代、他のMCは、
お前が奴隷なのはお前のカルマのせい。あきらめろ。
お前の妻が殺されたのはお前の妻のカルマのせい。あきらめろ。
お前の家族が貧乏なのはお前の家族のカルマのせい。あきらめろ。
とかばっか言ってたり、
だいたい「空観」か「仮観」のどっちかに偏ってることしか言わなかったので、オーディエンスはモヤモヤしてたんですよね。
だから、そういう頭の硬いMCのリリックばかり聴かされたせいで、おんなじように頭が硬くなっちゃってたオーディエンスの、色んな偏見とか思い込みをひっくり返す。いわゆる「アハ体験」的なスタイルがバカ受けしました。
「何言ってるのかよく分かんないけど、なんか妙にスッキリしちゃう何コレw」
そんな体験をみんな求めてたんですね。
ぶっちゃけ、MCゴータマは当時の先輩MCにはかなりムカついてたみたいです。なんで、けっこうMCバトル的なこともやってて、他の人気MCをボッコボコにして、そのファンをかっさらう、みたいなことをしてファン層をさらに拡大させてたみたいです。
なんか、そんなMCゴータマさんのことを、タイトルの数字や時間ばっかり気にしてるとかダセえwを書いたら思い出したんで勢いで書きました。
(数字や時間ばっかり気にしてるとかダセえwのは、今日の俺のことで決してあなたのことではありません)
ちなみに、一部には「MCゴータマさんはラッパーではない。あれはリリックではない、お経と言うんだ!」という方もおられるようですし、そこんところの解釈は自由かな、と。音楽なんでね。
当時はたしかに2500年前なので、録音機材はおろか、たぶん紙とかもロクにない時代だったので、そのリリックは主に口伝(口から口へのサイファーで頑張ってみんなでバトンリレーするっていうめっちゃエモいファンによる努力)で伝わったし、その後は紙の上に文字として残ってました。コレを経典と読んだりします。レコードみたいなもんです。
このレコードは中国大陸のレーベルからリリースされてて、日本国内では流通してなかったので、わざわざ命がけで船で海を渡って死にかけて失明してまでこの激レアレコードを手に入れたっていうMC GANJIN(鑑真)のエピソードは社会科の教科書にも載ってるくらいあまりにも有名っすよね。
機材が安価に手に入るようになった現代では、しっかりこんな感じになってるんで、やっぱ僕的にはMCゴータマさんはラッパーだったっしょ!!って言いたい。
この般若心経の、
ギャーテーギャーテーボウジーソワカー
とかまさに、
「何言ってるのかよく分かんないけど、なんか妙にスッキリしちゃう何コレw」
をめがけて放たれたパンチラインだと思うんすよ。
とまあ、2500年たってもまだまだリバイバルが止まんないMCゴータマさんやばあ!!っていう話を長々としました。
ちなみに、MCゴータマさんの死因は、
毒キノコ
です。
そんな漫画みたいな死に方ある?
でも、マジらしいっす。やっぱラッパーは死に方までキュートでたまんないな、って、思いません?
そんな死に方されたら好きになってまうやろ。ってね。
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