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なぜ人々はDAOに集まるのか

web3時代の新しい組織形態として注目されているDAO(ダオ)。
2021年~2022年、NFTブームの際には、多くのDAO(厳密にはDAOを意識したコミュニティ)が自然発生的に生まれ、人々が集まり、活動しました。

DAOで有名なところだと『山古志DAO』があります。
800人の集落に対して、1000人を超えるデジタル村民が集まり、web3×地方創生の注目事例となりました。


また、現在、自治体だけでなく、大企業も『DAO』に乗り出しています。
最近では、東急不動産ホールディングスとMeTownが、web3領域で地域課題解決を目指す実証実験として、Local DAO『おさかなだお長崎』をスタートしました。

(一次産業や地方創生とDAOはすごく相性が良いと思っているので、個人としても注目しております。現在、『おさかなだお長崎』では、初期参画メンバーを募集中ですので、ご興味ある方はぜひ。わたしも応募しています^^)


さらには、自民党のweb3プロジェクトチームでDAOに関する意見交換が行われるなど、DAOに関する社会の動きは本格化しています。

"web3PTの特別編として、DAOを使ったビジネスの可能性について当事者からヒアリングと意見交換を行う全4回のハッカソンシリーズを開催。今後のDAO法人に関する法整備の議論にも繋げていく予定です。"


そもそも、なぜ、DAOは、これほどまで注目されているのか。
それは、そのムーブメントを無視できないほどに、そこに人が集まっているからです。

わたしはこの1年半以上、DAO運営に携わり、DAOの社会実装化に向けてDAOを基盤とした事業作りや、企業×DAOの協業共創をすすめてきました(現在もゴリゴリ進めています)。
この記事では、「なぜDAOに人が集まるのか」を中心に、わたしが実践検証を繰り返す中で見えてきた『DAO』について再考察します。

こちらは、先日のイベントでお披露目した考察内容の一部を、一般公開向けに編集・追記した記事になります。



DAOとは:構造的な話

DAOとは、自律分散型組織(Decentralized Autonomous Organization)の略で、web3技術によって実現した新しい組織形態と言われています。

自律分散型組織という名前のとおり、"特定の"管理者はおらず、"固定化された"階層もありません。

その代わりに、パーパスやルールに基づいて、人々が自律的に判断して活動して発展していく組織となっています。組織論の分類的には、『ティール組織(進化型組)』と呼ばれるものに近いです。

それが成り立つためには、いくつか前提となる条件があります。

・求心力や判断基準となる人とパーパス(存在理由)とルールがある
・情報が全員にオープンになっていること
・個々が高度に(中央を介さなくても)結びつきあっていること
・共有資産が存在し、それをもとに、人的ネットワークのなかで自律的に、価値の共創と循環が行われる

そして、この前提を支えているのが、ブロックチェーン技術やインターネット技術など、科学技術の発展でした。


なぜ人々はDAOに集まるのか:社会背景の話

では、なぜ、人々はDAOに集まるのでしょうか。

それは、私たち人間が、社会的な生き物だからです。

"人間が子供を育てるには、仲間が力を合わせなければならないのだ。したがって、進化は強い社会的絆を結べるものを優遇した。"

サピエンス全史(上)より

社会的な生物である『人間』は、地域コミュニティ(地縁)や親族間コミュニティ(血縁)のように、いつの時代も、相互扶助や共有資産のシェアをベースとしたコミュニティ(共同体)を形成し、そのなかで繋がりあい支え合い共有しあうことで生きてきました。

しかし戦後、経済成長を前提として、都市への産業集積と郊外化が進むに伴って、地縁や血縁は希薄化。

核家族が増え、終身雇用を保証する企業が、地縁や血縁に代わる相互扶助的なコミュニティの機能も担いました。

しかし、成長しつづけるという経済の前提が崩れた現代では、会社もコミュニティとしての機能が弱まり、世帯人数もさらに減っています。また、仕事も多様化し、フリーランスやパラレルキャリアへの流れも加速しています。

生活も仕事も、『個』に還元されつつあるこれからの社会に、新たに多様な繋がりが求められいる。それが現代です。

そして、その器の1つとして、いま、DAOに人々が集まっているのです。

"戦後の日本は、疲弊した国土を復興するために都市に産業を集積させ、環境の良い郊外に住居を開発し、それを放射状の鉄道網で結んだ。地縁や血縁を断ち切り、新しい環境で自分の意志で生活したいという国民の夢に応えたこの政策は、親類間の独立性が高まる核家族を生み出した。視点を変えれば、家族を最小単位にしたことは住宅の着工件数を最大化し、都心と郊外を鉄道でつなぐことは交通の利用機会を増やすという、私鉄やディベロッパーの投資が加速する仕組みとも言える。地域ぐるみで行われていた冠婚葬祭は衰退し、核家族の居場所は図書館とホールといった公共施設と、ショッピングモールのような民間施設に回収された。生産の場としての都市、消費の場としての郊外、それを支える施設とインフラという構造は、すべて成長を前提とした社会の部品のようなものであった。
しかし今日、人口減少やグローバル化によって、国全体が成長し続けることを前提とした理想の型は崩れつつある。人口が増えない自治体は公共施設やインフラを維持する税収が不足し、景気や人材流動によって終身雇用を保障できなくなった企業は、コミュニティとしての側面が弱くなった。住宅は平均世帯人数3人を下回り、核家族が必ずしも基本型ではなくなりつつある。今私たちの社会は、最小単位である個人に還元されつつある。
私たちの扱うのは、こうした社会の状況を解決したり、そこから新たな価値をつくり出すようなシェアである。地縁や血縁のようなコミュニティではなく、核家族や企業といった近代的な組織単位でもなく、個人に還元された社会に、新たに多様な繋がりを生み出すためのシェアである。"

『シェア空間の設計手法』より



DAOの持つ可能性:機能的な話

多様な繋がりを求める「個」が集まり、自律的な共創活動が行われている『DAO』。

これからの社会における、DAOがもつ"役割/価値"を突き詰めると、大きく3つあると考えています。

1. 相互扶助ネットワーク

Give&Giveの関係の中で、ノウハウや共有資産をシェアしあうDAOは地縁や血縁に似た相互扶助ネットワークとしての役割を果たしうる、補いうる、と考えています。

2. 共創によるイノベーションや価値の創出

主体的な個人が自由に集まるDAOでは、クリエイティブやイノベーティブな活動が自然と起きる組織構造となっています。

わたしは特に、『価値の生産装置(OS)』として、このDAOに可能性を感じています。

分かりやすさのために比較して説明すると…
右肩上がりの経済の"競争"原理が強く働く社会の中で、特定の目的を効率よく達成することに長けた『価値の生産装置(OS)』が、『階層型の伝統的な株式会社』だとすると

右肩上がりが約束された経済ではなくなり、持続可能性が重視される現代において、環境変化に適応進化しながら"共創"という形で価値を生産することができる装置(OS)が『DAO』です。

3. 柔軟で自律的な働き方とキャリア形成の実現

DAOのなかでは、肩書といったラベルが表に出ない代わりに、活動内容といった中身で判断されます。また、自律的に活動できる場なので、ライフステージや環境に合わせた柔軟な働き方やキャリア形成を可能にしうると考えています。


DAOの社会実装にむけて

わたしは「社会では、女性など多彩な人材の活躍が急務とされている。なのになぜ、私も含め、意欲的な女性たちが経済的な自立にこんなにも苦労しているのか。仕事と家庭はトレードオフなのか」という、社会に対する疑問と悔しさのなかにいたときに、DAOに出会い、救われました。

そこでDAOの可能性を強く感じたことをきっかけに、「DAOを社会実装する」という私の挑戦はスタートしています。

DAOの社会実装の形としては、超簡単に説明すると、前述した『相互扶助ネットワークとしてのコミュニティ機能』をベースとし、その上に、『柔軟で自律的な働き方とキャリア形成』を実現していくための場を創り、さらにそこで活動している個人を『企業との協業共創』という形で社会に繋げることで、人とお金の流れを新しい産むことを考えています。

そうすることで、子育て中のママを含め、多様な人達が社会で価値を発揮をし、そして社会全体にとっても価値が生まれるシステムを創れるのではと仮説し、事業作りとDAO作りに取り組んでいます。

具体的な形はこちらをご覧ください。
ともにこの壮大な社会実験をする仲間や事業パートナーを募集しています!

企業×DAOについても、DAOで出会った魅力的な仲間と一緒にどんどん進めています!


最後に

今は、ブロックチェーンをはじめとした技術の進歩により、トラストレス(信用が無くても)で経済活動が行える時代へとどんどん進化しています。

こういった技術の流れは『交換』をスムーズにし、私たちの生活をより便利にし、可能性を広げます。この流れは止められません。

しかし、なんでも『交換』できてしまうということは、すべてが『代替可能』になるということです。そして、その対象は、モノだけでなく、"人"も含まれています。

「あなたの代わりなら簡単に手に入る」と言われる未来を想像してみてください。わたしはそんな世界に生きたくありません。

だから、私たちは、技術やシステムの便利さや可能性を享受しつつも、使い道を間違えると、そのシステムの一部として埋没してしまう危険性があることをよく理解する必要があります。そしてすでに、私たちの多くはその危険性を本能で感じ取っています。

だから、web3においても、web3の外においても、私たちは『唯一無二』に惹かれ、『豊かな繋がり』のような目に見えない価値が注目されているはないでしょうか。

わたしは、最先端のテクノロジーを駆使ししつつ、人が手段とならない、持続可能で豊かな事業を創る挑戦を続けます。



参考情報

"システムに依存した社会は「社会の穴を、経済で埋め合わせる」ものです。だから「経済が回らなくなれば、社会の穴に人々が落ち込む」のです。"

"現在のシステム化した世界における人間関係は、利己的な主体同士の「交換」が基本ですが、人間の出発点であったアニミズム的社会での生活は、より利他的な「贈与」に基づいています。"

"現在のシステム化した世界における人間関係は、利己的な主体同士の「交換」が基本ですが、人間の出発点であったアニミズム的社会での生活は、より利他的な「贈与」に基づいています。"

『経営リーダーのための社会システム論』より

"モノは、誰かから贈られた瞬間に、この世界にたった一つしかない特別な存在へと変貌します。贈与とは、モノを「モノではないもの」へと変換させる創造的行為に他ならないのです。 だから僕らは、他者から贈与されることでしか、本当に大切なものを手にすることができないのです。"

"交換の論理を採用している社会、つまり贈与を失った社会では、誰かに向かって「助けて」と乞うことが原理的にできなくなる"

『世界は贈与でできている~資本主義の隙間を埋める倫理学~』より

"近年、「組織」のパラダイムに大きな転換が起こりつつある。これまで組織は、人や組織を「機械」のように見立て、上意下達で統治してきた。だが、新たなパラダイムでは、人や組織を複雑に変容していく「生命体」と見なし、人や組織の〈いま・ここ〉に息づく物語を共有する。そこでは、権限を組織全体に分散させ、現場レベルで柔軟に意思決定を行う。まさに、パーパスに向かって共鳴しながら協働する自己組織化のかたちをとる。"

『ヒューマノクラシー「人」が中心の組織をつくる』より

ティール組織はもちろん、その組織論のベースとなっている『インテグラル理論』や、ティールさらに進化した組織形態である『ターコイズ組織』も勉強中です。気になる方は、こちらのふたつの記事がおすすめです!


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