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天地争乱(仮)

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記事一覧

天地争乱(仮) 7.幕間

道普との一戦を終えた風輝たちは村に向かって走っていた。
「渡した文には何を書いたの?」
蓮花が語気を強めて言った。
「あれには今度村の近くに来たら問答無用で刃を持って打ち払うということと国内の領主たちに忠誠を誓わせることは逆に忠誠心を失うことになるという内容だ」
「忠誠心?どうしてそんなことを?」
「全く柚葉は何もわかってないな。俺たち反乱分子が他にいないか確かめる必要があるからだ」
「僕たち以外

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天地争乱(仮) 6.佐谷の戦い 3

風輝の掛け声と共に五人は走り出し、敵の作る陣形を破壊を試みる。
刀と刀がぶつかり合う。火花を散らしながら。しかしそれは拮抗することはなかった。体の鍛え方から違う。例え刃がなくとも蓮花たちは力づくで押す。それによって倒れれば簡単に陣形は崩れる。
そして一分ももたずに陣形が崩れる。そこからはもう蓮花たちのやりたい放題好き放題だ。
ばらばらに襲いかかってくる敵兵の攻撃を軽く流し、頭は狙わず腕、腹と足を徹

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天地争乱(仮) 5.佐谷の戦い 2

風輝はこの日も変わらず測量や大福帳の確認をしていた。
村は大した大きさではないので村人は全員知り合いである。そこには大きくなってから知った者もいれば赤ん坊の頃から知っている者もいる。
風輝はあまり知らない者から始め、最後には自分の家族になるように知っている度合いの小さい方から順々に調べていったため、折り返し地点を過ぎた今、知る度合いが大きくなり、調査する家の者から話しかけられる頻度が増える。
内容

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天地争乱(仮) 4.佐谷の戦い 1

道普が出発して三日が経った。今日ようやく佐谷村に着く。整備された道は回り道のため、直線距離なら一日で行ける距離だが三日もかかってしまった。
風輝にどうやったら会えるか考えていたが、裏手から行くよりも表から入った方が警戒されないだろうと思い、正々堂々と行くことにした。

村まで残り2.5里になった頃、道の端に如何にも怪しい紙が落ちていた。
「道普様、私が取ってきます」
「止めておけ」
道普の制止を聞

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天地争乱(仮) 3.文書の返答

その頃出羽城では、城主でありこの国を任された大名である最上義昭は武官、文官の両方を含む三役会を急遽開いた。
内容はある村の領主が勝手に変わったこと。それがただの蛮族なら大量の兵を送れば済むのだが、今回の相手は大将級の者と力量が不明な者五人。推測でしかないが相当な腕の持ち主たち。
大広間に着いた義昭は上座に座るなりこう言った。
「突然の呼びかけに応じてくれて感謝する」
誰が来ているかを確認する。武官

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天地争乱(仮) 2.村の日常

早朝。
昨夜に送った伝令の鷲や鷹や犬や猫が屋敷に戻ってきた。
伝令の内容は領主が変わったこと、自分たちの目的など。国中の全ての町や村に送った。これで各領主の出方を探る。

風輝が連れてきた六人の一人、榊原柚葉は日課である馬に朝食をあげに厩舎にいた。六人の馬のご飯係を任されている。
昨日は五匹だった馬が六匹に増えていた。それは昨日大名に文書を送りに行った夜太郎が帰ってきたことを意味していた。
もちろ

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天地争乱(仮) 1.プロローグ

パラレルワールドが存在するなら現在も戦国時代だったのかもしれない。そんな物語。

この地は戦国乱世。武の才、知の才のある者が生き残る世界。
その地を統一せんとする者ありけり。名を千田風輝という。

「変わらないな」
出羽の国の山岳地帯にある小さな村、佐谷。約300人が住み、ほとんどが農業を営んでいる。
山の頂上から村を見下ろす風輝は三年ぶりに帰る故郷。三年前と同じ場所から眺めるその景色は何一つ変わ

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