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【短編小説】 シャルトリューズからの手紙

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ある日突然、〝弟〟から〝私〟に手紙が届いた。30年以上音信不通だった〝弟〟はカトリックに改宗し、山中の無言の行を行う修道院にいると言う。 弟はなぜ、修道士の道を選んだのだろうか?…
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#読書

【短編小説】 シャルトリューズからの手紙 第2章

【短編小説】 シャルトリューズからの手紙 第2章

 生きていくのは辛いことだと思う。
 今年も、クリスマスが近づいていた。もう3日もすれば、裕人が子どもを連れて帰ってくる。いまごろはシンガポールだろうか。海外の感覚を身につけさせるのだと言って裕人がひとり息子を連れ出すようになったのは、一昨年のことだった。以来彼らは年に1度か2度、クリスマスなどの節目のときにしか戻ってこない。けれどわたしはそれを寂しく感じたことは一度もない。
 昔から、ひとりで過

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