デザインがさらにおいしくなる話vol.12【小豆島アローズクエスト】
「昨日の敵は今日の友。」
少年漫画やRPGでよく目にするフレーズですね。
「昨日の敵がそんな簡単に友達になるわけないだろ!」
ってめちゃくちゃ思ってました。
特に小さい頃は。
実際、そんな簡単に他人って味方についてくれないじゃないか、と大人になっても思うことがあります。
だけど不思議なもので、あちこちで死闘を繰り広げながらも最後にはみーんな引き連れて仲間にしていってしまう物語の主人公は、悔しいことに、やっぱりものすごくかっこいい。
そんな主人公が現実にいたら……。
そんな冒険活劇が、現実にあったら……。
今回は、そんな少年ジャンプ的発想からできあがったポスターデザインのお話を聞いてきました!
小豆島で巻き起こった冒険活劇がオチまで完璧だった件
香川県高松市小豆島。
瀬戸内海に浮かぶ、おそうめんとお醤油とオリーブが有名な島です。(食べ物の話ばかりでごめんなさい汗。)
今回のポスターデザインの依頼は、そんなおいしい特産物であふれた小豆島で、
「スポーツで小豆島を盛り上げよう!」
と奮闘する小豆島スポーティーズの方々からのものでした。
小豆島スポーティーズ公式ホームページ↓
「小豆島に香川ファイブアローズさんを呼びました!この公式戦で観客席を満席にして、小豆島を盛り上げたいんです。ポスターのデザインをお願いします!」
香川ファイブアローズ公式ホームページ↓
※香川ファイブアローズとは、香川県のバスケットボールチームです。
しかし、この依頼が来たときふと脳裏によぎっていたのは、
「小豆島って船じゃないと行けないんじゃなかったっけ……?」
という一抹の不安。
そして後々わかったことですが、実は小豆島は野球が人気。
バスケットボールは完全にアウェイだったのです。
「制作期間は当たり前のように短いし、島はバスケ不人気で、しかも島までフェリーで片道一時間……だと?」
本当に少年漫画みたいな逆境っぷりですよね!
私はけらけら笑ながら聞いていましたが、当時の制作メンバーはずっと胃が痛かったはず。
車が空を飛ぶか、橋を建設するか、(※)神力で海を真っ二つにでもしない限りはフェリーで片道1時間という交通面での億劫さは拭えない……
となると、もう小豆島の人たちに来てもらう他ありません。
(※)モーセの十戒 海割り↓
どうしたら全く知らないスポーツチームの公式戦に足を運んでくれるだろう?
現地で徹底的に聞き取りをすると、思いがけない言葉が返ってきました。
「うーん、面白くても行かないかな……知ってたら行くかもしれないけど。」
「あ、友達が面白いって言ったら見に行くかもしれない。」
「あとは……友達がやってたら知らなくても見に行くよ。」
これだ!と思ったそうです。
「ドラクエや!
ポスター自体を冒険にすればええんや!!」
(※ドラクエ好きの特殊な思考回路です。)
ドラクエ(ドラゴンクエスト)とは↓
なにがどうしてドラクエになったのか。
家族連れの年代みんなが当時夢中になったものを思い出していたら、丁度ドラクエがドンピシャの世代だったそう。
「ファイブアローズを主人公に、小豆島で冒険活劇を繰り広げる。」
組み立てたシナリオはこうでした。
より強力な仲間を求めて小豆島へ足を踏み入れた香川ファイブアローズ。
小豆島の行く先々で島民と激しいバスケバトルを繰り広げ、時には悔し涙を流しながらもバスケにとって、自分にとって、そして仲間にとって大切な気づきを手に入れ、島民を仲間にしていく。
そうして公式戦当日。進化したファイブアローズは仲間を引き連れ、ついに決戦会場フレストピアへ―――。
こちらが実際に制作したポスターとストーリーです。
ファイブアローズの選手と島民の方々が本気でバスケをやっている、この二度見しちゃうようなミスマッチ感が面白くてかっこいいですよね!
撮影では小豆島へおもむき、ファイブアローズの選手とご協力いただく島民のみなさんと一緒に小豆島各地を巡りました。
ストーリーはSNSに投稿し、ポスターはことでんをジャックして大々的に掲載しました。
そうして迎えた公式戦当日。
会場はまさかまさかの満員御礼。
香川ファイブアローズの公式戦のなかでもかつてないほどの熱気にあふれ、ファイブアローズへの声援が飛び交いました。
そしてなんと、その当時B2で2位というかなりの格上相手に本当に勝ってしまったそう!
観客席を満員にできた時点でクリエイティブとしては大成功だったのですが、この熱気が本物の勝利を引き寄せました。
本当に少年漫画みたいだなあと、このお話を取材しながら思いました。
商業デザインというと、やっぱりビジネスだし、売り上げを上げてなんぼの世界ではあります。
だけど心を揺さぶるクリエイティブは、時にはこんな奇跡みたいなシチュエーションを生み出してしまう。
デザインってすごい。クリエイティブってすごい。
「じゃあ公式戦当日はモリローさん(※当ポスターデザイン担当)もめちゃくちゃ楽しかったんじゃないですか?」
「楽しかった!ってことだけ覚えとるな。ビール飲みすぎて当日の記憶こま切れなんよ笑」
「デザインがさらにおいしくなる話」とは?
CREDIT
Creative Direction:村上モリロー
Art Direction:村上モリロー
Graphic Design:村上モリロー/久利優実
Copywriting:村上モリロー
Photograph:藤井将弘/中村政秀/久保親平/仁田慎吾/Masayuki Nishimoto
Creative Produce:柳田梨絵
小豆島スポーティーズ
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