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『孫子』の兵法と備忘録

『孫子』は紀元前500年ごろの中国の兵法書です。兵法書ですので、いかに「勝利」を得るかがテーマです。現代日本において”戦”はありませんが、その中身は、日々、苦労されている日本のビジネスマンにも活用できるエッセンスがつまっています。

私自身は、20代前半に初めて『孫子』の現代語訳の本を読みましたが、当時は、あまり響きませんでした。
自分自身の読解力の無さもあると思いますが、経験不足であったことも大きいと思います。30代後半に、再度、読んでみると、ずいぶんと納得できる点や、これから役立ちそうなことがたくさん記載されていました。
自分自身のチーム・プロジェクトマネジメントの経験から納得感が違ったのかと思います。

今後の自分自身のマネジメントに活かすためにも、ここにアウトプットします。(厳密には自分の解釈と、本当は違うところもあるかもしれませんが、ご容赦ください)。

チームマネジメント

それ、呉人と越人は相い悪むも、その舟を同じくして済(わた)るに風に遇えば、その相い救うや左右の手の如からん。(呉越同舟)

どんなに中が悪くても、目的を共有するところから始める。運命共同体をつくる。目的を共有して、同じゴールを目指そう。
もしくは共通敵をつくる。

道とは民をして上と意を同じうせ令むる者なり

統治者(リーダ)の考える「道(ビジョン)」を日々伝えることによって、メンバーが動きやすく、活躍できる。

兵の形は実を避けて虚を撃つ。

敵は弱みを攻撃する。
メンバーの弱みをフォローし、強みをどのように強化するかを考える。そのためには、弱みと強みをあらかじめ明らかにして共有する。

法とは、曲制、官道、主用なり。

ルールをきちんと作り、暗黙のルールは明文化する。
社内の人間関係も相関図を創っておくと、スムーズにいく(正直、ちょっと気が引けるけど)

よく兵を持ちうる者の、手をたずさうること一人を使うがごときは、やむを得ざらしむればなり。

多くの部下メンバーがよく働き、成果を出せるチームは、そのように計画的に仕向けられているものである。

窮地に陥るとチームは結束して強くなる。大きな課題・ゴールについても、小さな目標・タスクを一つ一つクリアさせることによって達成できる。
厳しさだけでなく達成感も重要。

窮地=ストレッチ状態を意識的につくり、一つ一つをクリアさせるということかな。(潮時も含めて)ここが「ゴール」というのも重要。

卒をみること嬰児のごとし。故に之と深淵に赴くべし。

自分の子供のように慈しんで、メンバーと接する方法が一番親密になる近道

■職場の雰囲気を変える
一つ、モチベーションを上げる。
 ・自ら率先する。
 ・風通しをよくする。
 ・相互に認め合う。
二つ、方針や目標をはっきりと示す。
 ・一人一人の目標・タスクも明確にする。
 ・呉越同舟、ルールの明確か。
 ・時間厳守
三つ、状況を見て軌道修正する。
 ・ハーフタイムをもうける。状況をみて判断する。
  ずっと良い状態が続くわけもなく。
  悪い状態は、変更方針を示す。

■組織の硬直化パターン
以下のような状態にならないようにしよう。
 ①個人プレー
 ②成功体験への固執・依存(考えずに踏襲する)
 ③新しい仕組みチャレンジへの忌避
 ④自分がよければ良い。個人主義。
 ⑤短期的な成果ばかりを求める。

仕事の環境

天とは、陰陽・寒暑・時制なり。地とは、高下・広狭・遠近・険易・死生なり。

時には環境を、変える。
仕事道具も環境と一緒(武器を自分にあわせて変える)。
状況をみて、自分自身が勝つための、環境を変えることを考える。
自分がサボらないための工夫をしてみる。

プロとしての方針

進みて名を求めず、退きて罪を避けず、唯だ民を是れ保ちて、而も利の主に合うは、国の宝なり。

自分だけの功名をもとめず、組織と社会の利益を考えて行動する。
プロフェッショナルの貢献と模範、責任、倫理。

利にあわば即ち動き、利にあわざれば即ち止む。

臨機応援に緩急をつけて、仕事で成果をあげる。

将とは、智・信・仁・勇・厳なり。

リーダの資質:物事の判断力、部下を信じる心、部下を慈しむ心、困難にくじけない勇気、ルールを守る厳格さ。

先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。

まずはマイナスを無くす。
「勝つ」よりも「負けないこと」に重点を置く。
長所の強化よりも、短所の克服のほうが、高パフォーマンスを生む。

よく戦うものは、人にいたすも、人にいたされず。

他人に左右されずに、自分の思惑通りに進めることができれば勝ち。
自分自身の目的をしっかりと持ち。
「人にどう思われるか」よりも「自分がどうしたいか」に信念を持つ。

我れ寡くして敵は衆きも、能く寡を以て衆を撃つ者は、則ち吾が与に戦う所の者約なればなり。

弱くても勝つためには、一点集中。一点突破。選択と集中が重要。
よし「専門性」を磨こう。

上司やチームメンバーとの関係

それ将とは国の輔なり。輔周なれば、すなわち国は必ず強く、輔隙あれば、すなわち国は必ず弱し。 (国=会社・上司、将=中間管理職)

上司とはよくコミュニケーションをとろう。むしろ、これが、できていないかもな。
自分自身が上司であれば、メンバー・部下とよくコミュニケーションをとる。仕事を「任せる」。
ポイント1:相手の力量の推し量り。
ポイント2:ミスが起こりそうなところは伝達し、先人の智恵を伝える。
ポイント3:サポートは手厚く。(いやな顔しない)

軍争の難きは、迂をもって直となし、うれいをもって利となせばなり。

難しい案件やケースも、事前の「根回し」こそ、よくする上での秘訣。

成功するための考え方

天の災いにはあらずして、将の過ちなり。

軍隊(チーム)は潰走することもある。崩壊することもある。たるむこともある。落ち込むこともある。乱れることもある。敗北することもある。
これらの事柄は、天が降ろした厄災のせいではなく、将軍(リーダ)自身の過失のせいである。

爵禄百金をおしみて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。

情報収集に苦労や時間を惜しまないこと。
事前の情報収集が何もよりも勝率に影響を与える。
勝てない戦はしないためにも、先に情報を集めるべき。
現場にたって自分の目でみて確かめる。

勝兵は先ず勝ちてしかる後に戦い、敗兵は先ず戦いてしかるのちに勝ちを望む。

”とりあえずやる・・・”は負けパターン。
勝ちたければ、まずは目的の整理と状況の把握、戦術と計画を立てる。
リスクを抽出・対策を検討する。勝算があることを明確にしてから戦う。
段取り八分。

兵を形すの極みは、无形に至る。无形なれば、則ち深間も窺うこと能わざるなり。

无形とは形がないこと。
状況や、相手をみて臨機応変に形を変える。
形を変えられないのは、過去の成功体験に縛られる。リスクを恐れすぎるから。バランス大事。

百戦百勝は、善の善なる者にはあらざるなり。戦わずして人の兵に屈するは、善の善なるものになり。

目的は「戦う」ことではなく「勝つ」こと。
戦いがなければ、自分も相手も消耗がなく、時間も早い。しかも、目的が達成できるのであれば、戦わない方がよい。
長期的・戦略的にみて得なら、一時的にいやな思いをしても、最終的に得すればよい。(合理的!)

上に雨水ありて、水流いたらば、渉るを止めて其の定まるを待て。

雨が降って増水しているとわかっているのであれば、渡るのをやめて待つ。
当たり前だけど、「状況が見えずに止められない」「状況がわかっていても止められない(サンクコスト)」ことがある。
サンクコストを意識して、冷静に未来の損益をもとに判断する。このときに過去のコストは検討材料にしない。

吾が以て待つこと有るを恃むなり。

(過大な)期待をするよりも、期待せずにリスクに備えておく方がよい。
期待をして失敗する方が痛い。
期待される方もプレッシャー。
「期待」を使うときに、今後、注意しよう。むやみに使ってきてしまったかもしれない。
使うときは、戦略的に使う。リスクを検討し、フォローできる状態を十分につくってから使うこととする。

彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し。

特に有名。
今さら書き起こしておく必要もないが、「彼我の違いを知る」ということ。
特に自分・自チームに関する分析は、SWOTやジョハリの窓をも使ってみよう。
彼我の把握においては、経営戦略における内部環境分析と外部環境分析のほかのフレームワークも駆使すると検討の幅と深みも出るかもしれない。
ジョハリの窓の「盲点の窓」を出していくためには、言いたいことを言い合える状態をつくること、意見交換の頻度を上げることが重要かも。

利にあらざれば動かず、得るにあらざれば用いず、危うきにあらざれば戦わず。主は怒りを以て軍をおこすべからず。
将は憤りをもって戦うべからず。

自分の保身や自分の心のあり方よりも、まずは仕事の成否を優先し、どのような状況であろうと結果を出す。
 冷静に客観的に自分がおかれている状況を分析し、理解する。
 理解した上で、戦略的判断をくだす。
一時の感情にまかせて、怒ったり、相手に対して不条理な行動をとってしまうといい結果を生まない。
うーん、難しいが頑張ろう!

地を知り天を知らば、勝ちは乃ち全うすべし。

自らの仕事以外の状況についても知っておくと負けにくくなる。
周辺情報を探索・共有し、そこから導き出した行動をとれるか。
ミスは当事者に自ら考えさせることで失敗を「勝ち」に変えていくことができる。厳しいからこそ、伝え方も重要かも。

よく戦う者は、その勢は険にして、その節は短なり。勢は弩をひくがごとく、節は気を発するが如し。

逆境を力に、不遇のときこそ力をためる。チャンスをみて、ためた力を一気に放出する。
チャンスがないときは、雌伏して時の至るのを待つ。これ、いいな!

衆を治むること寡を治むるが如くするは、分数是なり。

大人数を仕切るには、数人程度の小部隊に分割し、これを大部隊に編成する。小集団として、配置し、有機的に動けるように部隊編成する。
自分自身も苦労したプロジェクトは自然とこのような形態にした。
当時を振り返ると、どのような単位で分割するのか悩んだことと、小集団の「リーダ」に乏しい場合は、にわかリーダの教育も重要だった。

■働き蟻の法則
どんなに分割しても時間がたてば、約2割がサボり出す。数人であれば、サボりにくく、継続しやすい。

善く戦う者は、之れを勢に求め、人に責めずして、之れが用を為す。故に善く戦う者は人を選びて勢に従わしむることあり。

組織としての能力は、「勢い」「モチベーション」にある。個人個人のスキルよりも、「勢い」が重要である。
そのためには、優秀な人材に頼りきるのではなく、優秀ではない人材であっても、”自信”を取り戻し活躍することによって、組織としての「勢い」をつけるように仕向ける。(野村監督系マネジメント)
実際にチームの士気を下げている人の多くは「自分自身は中間職であり、士気は高くも低くもない」「自分の責任ではない」と考えている。

まずは、このような主体性の低い中間意識のメンバーを、どのようにマネジメントするかが重要かも。

鼓金・旌旗なる者は民の耳目を壱にする所以なり。民既己に専壱なれば、則ち勇者も独り進むを得ず、怯者も独り退くを得ず。
此れ衆を用うるの法なり。

チームが有機的に動くために、太鼓をたたき、旗を掲げる。大人数を動かすためには、わかりやすい「目標」と「指標」が必要。
大多数で目標を達成するためには、チームの意思統一が大切。
チームの意識統一を図るために、
 1.目標を伝える。
 2.価値を伝える。
 ~何にとって、どのような価値があるか、大きな視点と、小さな視点~
 3.手段を伝える。
 4.障害・課題を伝える。
 5.数字を伝える。
 6.成果を発表し、見せる。

算多きは勝ち、算少なきは勝たず。

情報をもとに計画(謀)をすることが重要。

2万の大軍を率いる陶晴賢に4千の兵を用いて厳島の戦いで勝った毛利元就も、「謀おおきは勝ち、少なきは負け候と申す」と言っている。






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