見出し画像

『ゴッドハンド』 #aeuのショート

神野じんの先生、先週手術を終えた506号室の阿久津あくつさんですが、このまま何事もなく退院予定ですか」
「ああ、江戸えどくん。先週も言っただろう、彼の胃がんは早期発見で転移も無しだから、摘出手術で完治。あとは身体の回復を待って退院」
「そうかぁ、ちょっと残念ですね。もう少しスーパードクターの凄腕を見たい気もしたんだけどなぁ」
「江戸くんキミね、間違っても外でそんなこと言うなよ、人の命を何だと思って——」
「わかってますよ。そういえば徳田とくだが研修医として初めて手術室に入るから、最初は複雑な病状の患者は避けたいと言っていましたもんね」
「ったく」

 江戸とは長い付き合いになるが、この失言の多さには毎度手を焼く。いつか自分まで巻き添えを食らうのではないかと、神野は最近懸念にさえ思うことがある。

「次は、前立腺がんの患者さんですか」
 神野の手元の資料を覗き込んで江戸が尋ねた。

「ああ、彼女は将来子どもを持つことを希望している。治療は妊孕にんよう性温存治療法で進める。ここは少し時間が掛かるよ」
「患者さん一人ひとりのニーズに合わせた治療、さすがスーパードクターですね!」
「キミはいちいちノリが軽いんだよ。患者1人の受診から治療まで進めるのだって大変な苦労なんだ。この後も16歳の少年が控えている。他の患者に関してももちろんだが、より精神面に重きを置いて進めていきたい」

 神野の目の下には大きなクマができ、デスクは病気の詳細や治療法、同じ症例のデータ等の資料で溢れ返っていた。

「先生、その少年も助けるんですか?」
「まだ16歳の子どもだぞ、さすがに可哀そうだろう。でもそうだな、ここらで1人くらい殺しておくか。発見が遅くてもう助かる見込みはなかったことにして」
「それいいですね、助からない患者さんがいたほうがリアル感が出ますし」

「でも先生、締め切りまでもう1週間切っていますよ、原稿間に合いそうですか?」





 下の記事でもタイトルだけ挙げておりました。
 3月頃に書いていた、拙いショートショートでした。

 お蔵入りさせようかなと思いつつ、ずっと下書きに入れていたのだけど、気が向いたので投稿してみました。

 うーん。創作って難しい🥺💔
 ちなみに「江戸くん」の名前の由来は「editor(編集者)」から付けました。

 こういう種明かしみたいの、言うのは野暮なのかもしれないけど、創作するときは、名前とか描写とか言い回しとか、結構隅々までこだわって考えたり書いたりしてるから(この『ゴッドハンド』は全然だけど←)どうにも言いたくなってしまう……もちろん連載中のは言わないけども。
 でも『』とか言いたい、「100円の桜」の意図とか、どうして「春夏秋冬」を「しゅんかしゅうとう」ではなく「はるなつあきふゆ」と読ませることにこだわっているのかとか言いたい……!!😇

 だがしかしbut けどけれどyet
 やっぱり作者が自分で言っちゃうのって野暮なのかなあ……

 こんなところでここまで言っちゃってる時点であかん気はするけども。
 だってプロや人気作家さんであれば、たくさんのひとが読んで、その中にはもちろん隅々まで考察してくれるような読者さんも大勢いるだろうと思うけれど、こだわりが誰にも気付いてもらえず透明なままなんて寂しい。

「愛する人に先立たれるのと自分が先立つの、どちらがマシか」っていう話並みに私のなかでは永遠の課題。
 ちなみに相手を思うとやはり先立たれるほうがまだマシかなと思う、今のところ(とてつもなく嫌だけど)。

 話題が逸れたところで終わります。(自由だな)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?