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映画編

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劇場で観た映画の感想です。「物語の核心となる部分は伏せる」というネタバレポリシーのもとに書いてます。
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「ソウルの春」この下剋上が、たった45年前の出来事とは…

「ソウルの春」この下剋上が、たった45年前の出来事とは…

どうも、安部スナヲです。

ハイパー韓国ノワール「アシュラ」の布陣=キム・ソシン監督&ファン・ジョンミン、チョンウソンW主演で、今度は実録軍事クーデターを描くというので、楽しみにしていました。

ところで、役に応じて七変化する役者のことを「カメレオンアクター」といいますが、別の文脈でファン・ジョンミンって爬虫類っぽいなぁー、と思いながら感想を述べます。

【あらましのあらすじ】

1979年10月

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「インサイド・ヘッド2」ライリーよ、次は理性を身につけて。

「インサイド・ヘッド2」ライリーよ、次は理性を身につけて。

どうも、安部スナヲです。

人の心理を“本能”と“煩悩”に分けるとするならば、前作からライリーの頭のなかにいた五つの感情は、本能に紐付くベーシックな喜怒哀楽や防衛本能で、思春期を迎えた今作で新たに加わった四つは、苦しみの因子となる、いわゆる煩悩?

まあ、そんなふうに考えると整理がつきやすかった「インサイド・ヘッド2」です。

【あらましのあらすじ】

主人公ライリーは13歳になり、秋からは高校生

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「ルックバック」藤野と京本は、才能の性質がハッキリとちがう。

「ルックバック」藤野と京本は、才能の性質がハッキリとちがう。

どうも、安部スナヲです。

最近のアニメ映画は、表現方法がますます革新的になったと感じているので、話題作は積極的に観るようにしています。

で、目下大評判の「ルックバック」

漫画や絵画のタッチを生かした映像という点では、「この世界の片隅に」や「ファーストスラムダンク」にも通じる印象を受けましたが、この映画はアニメーターの原画をダイレクトに映像にしているらしく、より筆描きのニュアンスが出ていて、ほ

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「密輸1970」社会問題を完璧にエンタメ化する神業に、あらためて敬服。

「密輸1970」社会問題を完璧にエンタメ化する神業に、あらためて敬服。

どうも、安部スナヲです。

韓国と北朝鮮の反目と親和を、ハリウッド顔負けの超ド級アクションアドベンチャーで描いた「モガディッシュ脱出までの14日間」のリュ・スンワン監督が、今度は海女さんの海洋密輸をモチーフに映画を撮ったというので、もう絶対面白いにちがいない!観なくてもわかる!と思いましたが、せっかくなので観て来ました。

【あらましのあらすじ】

1970年代半ば、韓国の貧しい漁村・クンチョンで

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「フェラーリ」自社の年間販売台数を把握してない社長ってどうよ?

「フェラーリ」自社の年間販売台数を把握してない社長ってどうよ?

どうも、安部スナヲです。

モータースポーツなどにあかるくない私にとって、フェラーリといえば、世界一のスポーツカー?或いは富の象徴?そういう紋切り型の認識しか持っていませんでした。

エンツォ・フェラーリという名前も、マット・デイモンとクリスチャン・ベールが出てた映画「フォードVSフェラーリ」ではじめて知ったくらいで、無論、その猛者のバックストーリーなどは知る由もありません。

今回、マイケル・マ

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「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」もっとも愛されるべき嫌われ者のロマン。

「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」もっとも愛されるべき嫌われ者のロマン。

どうも、安部スナヲです。

ジャック・ニコルソン主演作で私がいちばん好きな映画はアレクサンダー・ペイン監督の「アバウト・シュミット」です。

定年退職して時間を持て余すウォーレン・シュミットという男が、いろいろ思い詰めれば思い詰めるほど、どんどん言動がおかしくなっていく様子は、滑稽で可愛いらしいけど、たまらなく切ない気持ちになります。

ペイン監督は悲喜劇の〈悲〉の配分のしかたが独特で絶妙だなぁ…

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「碁盤斬り」清廉潔白が、正義にならない世知辛さ。

「碁盤斬り」清廉潔白が、正義にならない世知辛さ。

どうも、安部スナヲです。

白石和彌監督作品というところに力点を置くと、どうしても人がトチ狂うまでのプロセスやゴアなバイオレンス描写を想像しがちですが、本作は原案が古典落語というので、さらに謎めき、絶対観たいと思って観て来ました。

【あらましのあらすじ】

ある事件の濡れ衣によって故郷の彦根藩を追われた主人公・柳田格之進(草彅剛)。今は江戸のボロ長屋で、娘のお絹(清原果耶)と慎ましく暮らしている

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「関心領域」音がピタッと止んだ時、心底ゾッとする映画。

「関心領域」音がピタッと止んだ時、心底ゾッとする映画。

どうも、安部スナヲです。

「関心領域」というタイトル、そして「アウシュビッツ強制収容所の隣りで暮らす家族」という設定から、おのずと突きつけられてくるテーマが浮き彫りになる感じもありますが、実際観て思ったことは、漠然と抱いていた「映画を観る不特定多数の傍観者に、それぞれの“関心領域”を問う」というのとは、ちょっとちがうなということ。

そして、暴力や殺戮のシーンがいっさい出て来ないにもかかわらず、

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「ボブ・マーリー ONE LOVE」客観性に疑問は残るが、微笑ましく許容できるくらいの〈あたたかみ〉は感じた。

「ボブ・マーリー ONE LOVE」客観性に疑問は残るが、微笑ましく許容できるくらいの〈あたたかみ〉は感じた。

どうも、安部スナヲです。

「ボヘミアン・ラプソディ」以降(かどうかわかりませんが)最近の音楽伝記映画は、本人像と音響の作り込みがネクストレベルへ行ったなぁと感じております。

で、今度はボブ・マーリー。

この題材は相当ハードル高いのでは?と思ったら制作陣にはジギー、セデラ、リタと華麗なるMarley一族が挙って名を連ねるテッペキのファミリービジネス体制。

果たして本家・家元ガチ監修によるレゲ

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「ゴジラ×コング 新たなる帝国」不器用そうに見えて、意外と処世術を心得てるコング。

「ゴジラ×コング 新たなる帝国」不器用そうに見えて、意外と処世術を心得てるコング。

どうも、安部スナヲです。

レジェンダリーピクチャーズの怪獣映画シリーズ「モンスター・バース」の最新作、「ゴジラ×コング 新たなる帝国」観て来ました。

サブタイトルになんでもかんでも「帝国」とつけたがる太古のハリウッド様式に失笑してしまいましたが、実際は失笑ではなく爆笑の嵐。スッカリ童心に帰った至福の1時間55分でした!

【あらましのあらすじ】

タイタン(怪獣)の研究機関「モナーク」の管理下

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「インフィニティ・プール」新世代エログロ女優、ミア・ゴスの鬼畜っぷり◎

「インフィニティ・プール」新世代エログロ女優、ミア・ゴスの鬼畜っぷり◎

どうも、安部スナヲです。

奇才デヴィッド・クローネンバーグから、そのド変態DNAを受け継いだブランドン・クローネンバーグの、えげつなぁーい最新作、観て来ました。

【あらましのあらすじ】

売れない作家・ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)は、次回作のインスピレーションを得るべく、妻、エム(クレオパトラ・コールマン)とともに、リ・トルカ島という孤島の高級リゾート地に来ていた。

ある日、

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「オーメン:ザ・ファースト」“オレは反キリスト”と歌ったSex pistolsのデビューも1976年。

「オーメン:ザ・ファースト」“オレは反キリスト”と歌ったSex pistolsのデビューも1976年。

どうも、安部スナヲです。

「オーメン」1作目から48年を経た今、あの〈オカルトアイドル〉ダミアン出世の秘密が明かされる⁉︎というので観に行って来ました。

【あらましのあらすじ】

リチャード・ドナー監督による1976年の映画「オーメン」の前日譚。

1973年6月6日午前6時に悪魔の子が生まれるに至った顛末と、その子が外交官ロバート・ソーン夫妻に引き取られ〈ダミアン〉と名付けられるまでのハナシ

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「オッペンハイマー」批判できるのもケチをつけられるのも、映画を観た人だけである。

「オッペンハイマー」批判できるのもケチをつけられるのも、映画を観た人だけである。

どうも、安部スナヲです。

噂の「オッペンハイマー」遂に観ました。

本国公開から遅れること8ヶ月。

やいのやいのと物議を醸し、こと日本においては半分ケチがつけらた感も否めませんが、何にせよ、観ないことには始まりません。

【あらましのあらすじ】

ドイツからのユダヤ移民としてアメリカに生を受けたJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、コツコツ勉強した甲斐あって物理学者として頭

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「ドッグマン」“IN THE NAME OF GOD”逆から読めば“DOG MAN”ってなるかーい!

「ドッグマン」“IN THE NAME OF GOD”逆から読めば“DOG MAN”ってなるかーい!

どうも、安部スナヲです。

そう言えば、フランス人で初めて好きになった映画監督がリュック・ベッソンでした。

最新作「ドッグマン」は予告編やプロモーション関連のビジュアル、そして犬小屋で育った女装男が主人公という時点で、もうツカミはOK!観るに決まってますやん!つーことで観て来ました。

【あらましのあらすじ】

ある夜、ボロンちょに負傷した女装姿の男が警察に逮捕される。

男が運転するトラックの

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