安部スナヲ 娯楽酩酊記

芸術・文化は洒落臭い。クリエイターと呼ばれるはおこがましい。安部スナヲの「娯楽酩酊記」▪︎ピンボケサマーズというバンドで音楽活動をしています。▪︎写真やグラフィックデザインも嗜みます。▪︎ヒマな時は小説を読むか映画を観るかヒマしています。

安部スナヲ 娯楽酩酊記

芸術・文化は洒落臭い。クリエイターと呼ばれるはおこがましい。安部スナヲの「娯楽酩酊記」▪︎ピンボケサマーズというバンドで音楽活動をしています。▪︎写真やグラフィックデザインも嗜みます。▪︎ヒマな時は小説を読むか映画を観るかヒマしています。

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  • 映画編

    劇場で観た映画の感想です。「物語の核心となる部分は伏せる」というネタバレポリシーのもとに書いてます。

  • 月刊プレイリストボーイ

    音楽でその月を振り返る極私的プレイリスト(Apple music)を毎月シェアしています。昔、自分のアイデンティティを込めて作った「マイベスト」カセットテープの思想を受け継ぎ、尺は46分。

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    私設フォトギャラリーや、カメラや写真に纏わる投稿です。

  • ピンボケサマーズ

    アコースティックロックユニット・ピンボケサマーズ(安部スナヲ&金井ひろゆき)に関する情報やコンテンツを紹介します。

最近の記事

「侍タイムスリッパー」本編以上に、製作過程が愛おしい映画。

どうも、安部スナヲです。 映画好きの知人から「侍タイムスリッパー、絶対観てください」と言われたのは、確か9月でした。 その知人というのは、年に数回仕事で顔を合わせる同業他社の人で、会えばいつも仕事そっちのけで、最近面白かった映画をすすめ合うのですが、このように内容にも感想にも触れず、とにかく観て!と勢い込んですすめられたのは初めてでした。 ならば早速と、その翌日に観に行こうとしたのですが、体調を崩してしまい、その時は断念しました。 そうこうしているうちに「しかし、それ

    • 「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」完璧な続編、これ以外はない。

      どうも、安部スナヲです。 今や魔力的なスゴ味を持つレディ・ガガが、ハーレクインにキャスティングされているというだけで期待値が爆あがりする続編でした。 さぞや前作の鬱屈と悲哀から「ジョーカー」を解き放ち、カタルシス全開のなかで最恐のヴィランが完成するのだろうと。 さらにタイトルの「フォリ・ア・ドゥ(二人狂い)」という響きからも、耽美で狂気な香りを嗅ぎ取り、まんまと「その手」に乗ってしまったのですが… 【あらましのあらすじ】 2年前ー。 度重なる理不尽と不遇に追い詰め

      • 「シビル・ウォー アメリカ最後の日」戦場の記録に意味があるかないかを決めるのは、カメラマンではない。

        どうも、安部スナヲです。 予告編の冒頭で、ヘンテコなサングラスとチープな迷彩服のジェシー・プレモンスがライフルを手に「What kind of American?(どんな種類のアメリカ人だ?)」と言ってるのを見た時は、正直コメディかと思いました。 で、実際に観た印象をひとことで言えば「近未来のアメリカを想定した社会派ロードムービー」といった感じですが、現状が現状だけに、そんな表現は軽すぎます。というか、あまりにも笑えんのです。。。 【あらましのあらすじ】 アメリカで内

        • 月刊プレイリストボーイ2024年10月号

          【今月のプレイリスト】 1.二人のアカボシ/キンモクセイ いよいよ気候がおかしい。金木犀が一瞬フワッと香ったかと思ったら、秋に不相応な湿気に忽ち消されてしまう。なんでやねん。この曲は確か大むかし、FM802のヘヴィローテーションだった。「キンモクセイ」というバンド名を不意に思い出した。フワッと。 2.Sweet Dreams/ユーリズミックス 映画「憐れみの3章」のオープニングで流れる曲。「Some of them want to use you
Some of them

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          「憐れみの3章」真面目に観てたら、不意打ちでおちょくられる。

          どうも、安部スナヲです。 ヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンが天下を取った「哀れなるものたち」 ご多聞に漏れず、私もあの奇天烈な世界感と物語に衝撃を受け、それからランティモス監督作品をいくつか遡って観ました。 特に刺さったのは「聖なる鹿殺し」と「ロブスター」。 いずれも物語の面白さに興奮しながらも、深層心理を抉られたような、曰く言い難い恐怖を味わいました。 本作「憐れみ3章」は、それらの作品でタッグを組んでいたエフティミス・フィリップという脚本家との、しばらく振

          「憐れみの3章」真面目に観てたら、不意打ちでおちょくられる。

          「cloud」地味な厭がらせから、超エンタメバトルへの飛躍のさせ方がお見事!

          どうも、安部スナヲです。 メーカー営業の仕事に就いてる私にとって、「転売ヤー」は忌まわしい存在です。 今や市場を脅かす影響力を持ってしまった彼らに、日々翻弄されていますが、正直、それによって売上が担保されるというジレンマもあったりします。 しかしながら、本当にその商品を求める人に届かない理不尽は由々しき問題であり、従来の正当な販売・流通・営業の形式にケチがつけらてる感じも実に腹立たしい。 そんな転売ヤーが追い詰められて行くサスペンス/スリラーを、darkの巨匠・黒沢清

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          月刊プレイリストボーイ2024年9月号

          【今月のプレイリスト】 1.Twilight Time/高木大丈夫 出張で倉敷に行った。夕暮れ時の美観地区の散歩にこの曲がピッタリだった。白壁に柳。江戸風情のなか、老舗から今時の洒落た店までが雑多に軒を連ねる感じと、モダンで雑多なトイミュージックには共通の何かがある。きっとそれを「モダン」と呼ぶのだ。 2.Movin'On Up/プライマル・スクリーム 「地面師たち」は確かに面白いが、刺激的な展開によって脳の快楽報酬系が弄ばれてるみたいでやや閉口。あの感じはスナック菓子が

          月刊プレイリストボーイ2024年9月号

          倉敷、お江戸情緒な美観地区をお散歩スナップ。

          どうも、安部スナヲです。 先週末、出張で倉敷へ行ってました。 土日のイベント仕事だったのですが、前日の夕方に現地入りで、せっかくなのでちょっとだけ美観地区をぶらぶらして来ました。 江戸時代、倉敷は長崎などと同じように徳川幕府直轄の「天領」で、交易の拠点だったといいます。なんとなく京都や奈良などの古都とはちがった栄華な雰囲気を感じます。 JR倉敷駅の北側にある商店街が美観地区への玄関口になっています。

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          「ソウルの春」この下剋上が、たった45年前の出来事とは…

          どうも、安部スナヲです。 ハイパー韓国ノワール「アシュラ」の布陣=キム・ソシン監督&ファン・ジョンミン、チョンウソンW主演で、今度は実録軍事クーデターを描くというので、楽しみにしていました。 ところで、役に応じて七変化する役者のことを「カメレオンアクター」といいますが、別の文脈でファン・ジョンミンって爬虫類っぽいなぁー、と思いながら感想を述べます。 【あらましのあらすじ】 1979年10月26日、軍事独裁政権下の韓国にて、パク・チョンヒ大統領が側近に暗殺された。 国

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          和歌山・那智勝浦旅行〜後編〜

          どうも、安部スナヲです。 夏の那智勝浦旅行、後編です。(前編はこちら) さて、旅は2日目、8月24日の朝です。 海からのRising sunを見たくて、早起きして那智ブルービーチへ行きましたが、到着した5時半頃には、既に朝陽は水平線からスッカリ顔を出していました。 それでも早朝の海はとても気持ちいいです。 というか、これくらいの時間帯でなければ暑すぎてとてもいられません。 そして熊野古道ー。 大門坂付近までは車で移動し、そこから杉木立ちに覆われた険しい石段を登っ

          和歌山・那智勝浦旅行〜後編〜

          和歌山・那智勝浦旅行〜前編〜

          どうも、安部スナヲです。 8月23日から2泊3日で和歌山・那智勝浦へ行って来ました。 実は昨年の夏にも一泊で行ったのですが、車で片道4時間強のみちのりを踏まえると、かなりタイトだったので、今年は余裕を持って遊ぶつもりで2泊にしました。 朝、大阪市内を出発し、正午前には最初の目的地、南紀白浜・とれとれ市場に到着しました。 まずは腹ごしらえです。 人気の海鮮丼売り場へは、平日でもさすがの混雑振りでしたが、いかんせん腹ペコで、並ぶのも厭なので、比較的空いているお刺身・お惣

          和歌山・那智勝浦旅行〜前編〜

          月刊プレイリストボーイ2024年8月号

          【今月のプレイリスト】 1.夏の光/キリンジ 那智勝浦へ行って来た。「Road to wakayama」と名付けたプレイリストから、紀伊半島の海岸沿いを車で走っている時にこの曲が流れた。歌のシチュエーションとしては、これから出発するぞ!というタイミングで聞くのがいいのだが、シャッフル再生にしたのは自分だからしょうがない。海も空もサイコーだったなぁ。あと鮪な。 2.Love's Theme/ ラブ・アンリミテッド・オーケストラ ピーター・バラカンのラジオで、あるリスナーから

          月刊プレイリストボーイ2024年8月号

          「インサイド・ヘッド2」ライリーよ、次は理性を身につけて。

          どうも、安部スナヲです。 人の心理を“本能”と“煩悩”に分けるとするならば、前作からライリーの頭のなかにいた五つの感情は、本能に紐付くベーシックな喜怒哀楽や防衛本能で、思春期を迎えた今作で新たに加わった四つは、苦しみの因子となる、いわゆる煩悩? まあ、そんなふうに考えると整理がつきやすかった「インサイド・ヘッド2」です。 【あらましのあらすじ】 主人公ライリーは13歳になり、秋からは高校生。 頭のなかの“司令部”では、ヨロコビ/カナシミ/ ムカムカ/イカリ/ビビリが

          「インサイド・ヘッド2」ライリーよ、次は理性を身につけて。

          「ルックバック」藤野と京本は、才能の性質がハッキリとちがう。

          どうも、安部スナヲです。 最近のアニメ映画は、表現方法がますます革新的になったと感じているので、話題作は積極的に観るようにしています。 で、目下大評判の「ルックバック」 漫画や絵画のタッチを生かした映像という点では、「この世界の片隅に」や「ファーストスラムダンク」にも通じる印象を受けましたが、この映画はアニメーターの原画をダイレクトに映像にしているらしく、より筆描きのニュアンスが出ていて、ほのぼのと懐かしい感じがしました。 で、ストーリーはというと、ほのぼのから奈落へ

          「ルックバック」藤野と京本は、才能の性質がハッキリとちがう。

          月刊プレイリストボーイ2024年7月号

          【今月のプレイリスト】 1.ビール/SEX MACHINEGUNS つらい夏。ビールは欠かせない褒美だが、尿酸値、コレステロール、肝機能に難ある身としては、杯が進むほどこの曲のように快楽と罪悪感が高速で絶叫し合う心境になる。メタルもやっぱり夏がいい。 2.にくまれそうなNEWフェイス/吉川晃司 紙幣の顔ぶれが新しくなった。それぞれはじめて手にした時の違和感は「人見知り」ならぬ「札見知り」か。あの仏頂面が 、どうも良くない。そんなことよりも、券売機を導入している飲食店などは

          月刊プレイリストボーイ2024年7月号

          「密輸1970」社会問題を完璧にエンタメ化する神業に、あらためて敬服。

          どうも、安部スナヲです。 韓国と北朝鮮の反目と親和を、ハリウッド顔負けの超ド級アクションアドベンチャーで描いた「モガディッシュ脱出までの14日間」のリュ・スンワン監督が、今度は海女さんの海洋密輸をモチーフに映画を撮ったというので、もう絶対面白いにちがいない!観なくてもわかる!と思いましたが、せっかくなので観て来ました。 【あらましのあらすじ】 1970年代半ば、韓国の貧しい漁村・クンチョンでは、化学工場による水質汚濁が海産物を駄目にし、漁業を生業とする人たちは、死活問題

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