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「インサイド・ヘッド2」ライリーよ、次は理性を身につけて。

どうも、安部スナヲです。

人の心理を“本能”と“煩悩”に分けるとするならば、前作からライリーの頭のなかにいた五つの感情は、本能に紐付くベーシックな喜怒哀楽や防衛本能で、思春期を迎えた今作で新たに加わった四つは、苦しみの因子となる、いわゆる煩悩?

まあ、そんなふうに考えると整理がつきやすかった「インサイド・ヘッド2」です。

【あらましのあらすじ】

主人公ライリーは13歳になり、秋からは高校生。

頭のなかの“司令部”では、ヨロコビ/カナシミ/
ムカムカ/イカリ/ビビリが、変わらず良好なチームワークで感情をコントロールし、ライリーのしあわせな日々を支えていた。

ある日、ライリーはホッケーの試合で親友のグレイス、ブリーとのあざやかな連携によってチームを勝利に導く。

その活躍を見ていた、ライリーの進学先である高校のロバーツコーチは、彼女たちをホッケーの体験合宿に誘う。

とても喜ぶライリーだが、同時に、失敗した時のことを思い出してモヤモヤしたり、なかなか複雑な様子だ。司令部の感情メンバーも、ライリーからネガティブな考えを排除しようと、いろいろ頑張る。

合宿場へ向かう道中、ライリーは、グレイスとブリーが自分とは別の高校へ進学すると知らされ、ガッカリする。

合宿場にてライリーは、ずっと憧れていたスター選手ヴァルと会う。ところが緊張のあまり、思ってもいないことを言ってヴァルに話を合わせてしまう。

このあたりからライリーの頭のなかには新しい感情メンバー、シンパイ/イイナー/ハズカシ/ダリィがあらわれる。

なかでもシンパイは、来るべく高校生活でライリーがヴァルや先輩たちとうまくやっていけるよう、緻密な計画を立てており、これまでのヨロコビたちのやり方ではダメだと主張、司令部の主導権を奪いに来る。

そんななか、ライリーはある“おふざけ”によってロバーツコーチを怒らせ、その連帯責任として、チームに迷惑をかけてしまう。

追い詰められて焦るライリーは、ますます先輩たちの顔色を見て迎合し、やがてグレイスやブリーをないがしろにする。

一方、司令部では、それまでのライリーの信念で育った“ジブンラシサの花”を、シンパイが闇に葬ってしまい…

出典:映画.com

【感想】

ともあれ、13歳になったライリーには苦しみが増したという印象が強い。

今作で主導権を握るシンパイは、危機管理や計画には最適任だが、これに感情制御をさせておくと、うまく行かないのがよくわかる。

出典:映画.com

つまり、ライリーに行動を促すモチベーションがシンパイかヨロコビかによって、彼女が得る幸福感はちがって来る。

一方で、心身の成長に連れ、ライリーの性格的特徴が際立ったという見方もできる。

例えば前作で、引越し先に馴染めず家出を企てているところからも、ライリーという子は元々衝動性が強い。

そのうえで今作終盤での試合における、乱暴極まるプレイを見ると、性格的特徴のそういう部分がより顕在化してるようにも見える。

出典:映画.com

何としても試合で3ポイントとるという目標のため、親友のグレイスをつき飛ばし、チームから強引にパック(ボール)を奪う。

まず3ポイントという目標にしても、精鋭チーム“ファイヤーホークス”に入団するためには、入団前にヴァルが獲得したポイントを上回るのが必須と、勝手に思い込んでるだけである。

こういうのを強迫観念と呼ぶのであって、ライリーは性格的に、これに陥りやすい。

出典:映画.com

あの試合の時にライリーを采配をしていた筈のシンパイでさえ、いつの間にやら暴走したライリーの強迫観念に振り回され、制御不能のパニックに陥る。

そう見るとライリーの内に時折こだまする「私はイイ人」という自己暗示的な響きも、「ジブンラシサの花」も、強迫観念の象徴のようなものだ。

危険プレイによってペナルティボックスに入れられたライリーは、そこで自責の念に襲われ、激しく葛藤する。

その末に自ら、再びヨロコビを呼び寄せる。

やはり、ヨロコビが原動力でなければ、彼女はしあわせになれないのだ。

進学先で仲間に気に入られたいのも、ホッケーをやるなら学校でいちばんのチームに入団したいのも、ごく自然な願望だ。

そういう願望にワクワクしているうちは良いが、ライリーは想いが強まるほど危ういという一面がある。

今回、この“ワクワク”が強迫観念へ転じたスイッチは、やはりグレイスとブリーが別の高校へ進学すると知ったことだろう。

ショックなのは、彼女たちがそのことを自分に黙っていたことだ。

あの時、前作のように、“カナシミ”が動いてくれればスッキリできたかも知れないのに、あそこで“シンパイ”や“イイナー”がしゃしゃり出て来たのでおかしくなった。

まずはあの2人に「黙ってるなんて酷い!寂しいよー辛いよー」という気持ちを素直にぶつけ、悲しむべきだった。高校生活のことなどはその後で良いのだ。

それでも私は、この先ライリーのなかで理性が育ち、それによって感情を抑える術を身につけることを願う。

…というか、こんな大人の意見過ぎてつまらん映画感想大丈夫か?

まぁいいか…

で、今回私的MVPを授けたいキャラクターは「ダリィ」である。

出典:映画.com

ライリーが格好つけて冷めた振りをする時に出動するコイツは、一見異端児だが思春期にその存在感を増すのは至極納得。

あとライリーが皮肉を言う度に、頭のなかで“SAR-CHAMS=皮肉の裂け目”というのが出来て“意識の川”を分断するのだが、これは“CIRCUSM=皮肉”に引っかけた、ただのダジャレだということを知り、私の脳内にもSAR-CHAMSが出来たのか、失笑を禁じ得ませんでした。

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