たなかさん

獅子座

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最近の記事

映画紹介「ファイト・クラブ」

 わたくし、23歳、男、学生。  お恥ずかしい話ですが、今まで人に殴られたことがない。もちろん僕の拳を友達の頬にクリティカルヒットさせたことはないし、そもそもろくに喧嘩をした記憶もない。  つまり僕はこれまでの人生で、“violence”とは一定の距離を保ってきた。そしてきっとこれからもこの関係は続くのだろう。  でも、ほんのすこしだけど、殴り合いの喧嘩に憧れる“もう一人の僕”もいる。たぶん女子には共感してもらえないだろうけど。  夕方の河川敷に対峙するは二人の男。拳

    • くたばれグローバル人材

       「グローバル人材」という言葉を聞くと寒気がする。悪寒が走る。ふつふつと怒りさえ覚える。 なんと軽薄な言葉だろう!グローバル人材などに私は決してなりたくない。 「どうもこんにちは!私がグローバル人材です」  こんな輩に出会ったら、いくら普段温厚な私でも、2発のビンタに加えて,右側頭部へのハイキックくらいはおみまいしてしまうだろう。  ただ岡山県は ―いや日本の教育界全体なのだが― グローバル人材とやらをどんどん育成したいらしい。 「新晴れの国おかやま生き活きプラン」の

      • 女子大生のお尻を追いかけるとき

         久しぶりに行った大学からの帰り道。僕はふらふらと自転車を漕ぎながら、ぼんやりと物思いにふけっていた。  突然、ものすごいスピードの自転車に、うしろから追い抜かされた。その自転車のせいで、僕の高度な思考は分断されてしまった。もうちょっとで将来の日本を救うようなアイデアを考えついていたはずだったのだが。  少しムッとして前を走る自転車を確認してみると、肩までかからない髪を風になびかせている女子が見えた。  許そう。後ろ姿から判断すると可愛い女子大生である。もちろん許す。む

        • 映画紹介「クロコダイルダンディー」

          大学4年生になった。正直仕事なんてしたくない。 自然に囲まれた田舎でのほほんと暮らしたい。 昼からビールを飲みながら好きな本を読みたい。心地よい風が吹く木陰でまどろみたい。    お金も最低限あればいい。          欲はなく決して怒らず、いつも静かに笑っていたい。 しかし、現実はそうはいかない。       働かざる者食うべからず。仕事はしなくちゃいけない。  「働きたくない」「働かなきゃいけない」 この二つの相反する欲望と現実に対して、前者を心の奥底に押し込

        映画紹介「ファイト・クラブ」

          恐竜はなぜ巨大化したのか

          恐竜の特徴はその大きさにある。 ジュラ紀後期に生息していた「ブラキオサウルス」は全長が25メートル。25mプールを思い浮かべると、その大きさがよくわかる。また最大級の恐竜といわれる「ディプロドクス」は全長が30メートルを超えていた。現在では、40メートルほどの恐竜がいた可能性も考えられている。 アメリカにあるブラキオサウルスの化石標本 現在、陸生動物で最大のアフリカゾウでも全長は6メートルほどである。恐竜はなぜこれほどまでに巨大化したのだろう。 恐竜の巨大化にはいくつ

          恐竜はなぜ巨大化したのか

          「恐竜」と出会った人類

          「恐竜」という言葉は、おそらくほとんどの人が知っているだろう。また「恐竜」の姿をイメージするのも難しくないはずだ。 このように、現代の多くの人にとって「恐竜」は身近な存在となっている。しかし、「恐竜」という言葉が生まれたのは、1842年と言われている。計算してみると、まだ200年も経っていないことがわかる。「恐竜」は比較的最近できた言葉なのだ。 まだこの世に「恐竜」という言葉がなかった1824年、イギリスの古生物学者である「ウィリアム・バックランド」は巨大な爬虫類の化石を

          「恐竜」と出会った人類

          「教育」という言葉について

          我々が、普段何気なく使っている「教育」という言葉。実はこの言葉が一般的に使われるようになったのは、近代になってからである。 「教育」という言葉自体は古代中国ですでに誕生していた。「教育」という漢字は儒教の教典である「孟子」のなかに初めて登場する。 得天下英才而教育之             (天下の英才を得て之を教育す)「孟子」 君子が統治する地域から優秀な人材を選び「教育」することは、君子ならではの楽しみ、喜びであると「孟子」は述べている。 このように「教育」という

          「教育」という言葉について

          僕が幼稚園児だったころの思い出

          彼女は待っていた。ともや君が自分を選んでくれることを。 日頃から好意は伝えてきた。好きなのだ。とにかく好きなのだ。 ともや君と一瞬目が合う。しかし私の願いは届かない。ともや君は私の前を通り抜け、別の子を選んだ。 思わずうつむいてしまう。いまにも涙がこぼれそうで、必死で歯を食いしばる。 その時、私の前で誰かが立ち止まる気配を感じた。顔を上げると、こちらに手を差し出している男がいた。逆光で表情は読み取れない。私は一度大きく深呼吸をする。そして彼の手を強く握った。 僕が通っていた

          僕が幼稚園児だったころの思い出

          開幕宣言

          夜風が心地よいので、500mlの缶ビールとじゃがりこを買って、近くの運動公園を散歩した。 左手にアサヒスゥゥゥパァードゥラーイ、右手にじゃがりこを持ちながら、夜の公園を怪しげに歩き回っている男がいたら、それは僕です。 小学生のとき、帰りの会で作文を書く時間があった。本来はその日起こった出来事などを書くことになっていたが、僕は途中から、あることないことごちゃまぜにして自由に書くようになった。ユーモアたっぷりに。 その作文を担任の先生が面白がってくれて、職員室でも僕の作文が