僕が幼稚園児だったころの思い出
彼女は待っていた。ともや君が自分を選んでくれることを。
日頃から好意は伝えてきた。好きなのだ。とにかく好きなのだ。
ともや君と一瞬目が合う。しかし私の願いは届かない。ともや君は私の前を通り抜け、別の子を選んだ。
思わずうつむいてしまう。いまにも涙がこぼれそうで、必死で歯を食いしばる。
その時、私の前で誰かが立ち止まる気配を感じた。顔を上げると、こちらに手を差し出している男がいた。逆光で表情は読み取れない。私は一度大きく深呼吸をする。そして彼の手を強く握った。
僕が通っていた