女子大生のお尻を追いかけるとき
久しぶりに行った大学からの帰り道。僕はふらふらと自転車を漕ぎながら、ぼんやりと物思いにふけっていた。
突然、ものすごいスピードの自転車に、うしろから追い抜かされた。その自転車のせいで、僕の高度な思考は分断されてしまった。もうちょっとで将来の日本を救うようなアイデアを考えついていたはずだったのだが。
少しムッとして前を走る自転車を確認してみると、肩までかからない髪を風になびかせている女子が見えた。
許そう。後ろ姿から判断すると可愛い女子大生である。もちろん許す。むしろありがとうと言いたい。これが男子大学生だったら話は別だ。自転車から引き摺り下ろすくらいではすまない。
ふとデニムのヒップあたりを見ると(これは断じて下心などではない。あくまで偶然である。)彼女のスマホが今にもポケットから落ちそうになっている。
「これは追いかけねば」
理性よりも本能が私に語りかける。彼女はスマホが落ちても気づかないかもしれない。私が後ろをついていき、落とした瞬間拾ってあげねば。
そんな正(性)義感を胸に、僕は自転車のギアをあげた。
走る女子大生。追う変態。誰が変態や。ひたたる汗。交わる青春。晩夏の思い出。
100メートルほど追いかけたが、結局スマホが落ちることはなかった。彼女は知り合いと思われる男子に追いつくと、並んで仲良く走り出した。
私の役割は終わった。あとは君が彼女を守るのだ。ゆけ青年。彼女を頼んだぞ、青年。
遠ざかっていく彼女のデニムからは、あいかわらず今にも落ちそうなスマホが見えていた。
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