恐竜はなぜ巨大化したのか

恐竜の特徴はその大きさにある。

ジュラ紀後期に生息していた「ブラキオサウルス」は全長が25メートル。25mプールを思い浮かべると、その大きさがよくわかる。また最大級の恐竜といわれる「ディプロドクス」は全長が30メートルを超えていた。現在では、40メートルほどの恐竜がいた可能性も考えられている。

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アメリカにあるブラキオサウルスの化石標本

現在、陸生動物で最大のアフリカゾウでも全長は6メートルほどである。恐竜はなぜこれほどまでに巨大化したのだろう。

恐竜の巨大化にはいくつかの説がある。そのなかのどの説が正しく、どの説が間違っていると断定することはできない。きっと様々な要素が絡み合いながら、「巨大化」というひとつの道がつくられたはずだ。ここではそのことを念頭に置きつつ、私の独断と偏見で「おもしろい!」と思った説を中心に取り上げる。

まず、巨大化のきっかけとなるキーワードを4つ挙げる。一つ目は、「捕食者」。二つ目は、「効率」。三つ目は、「繁殖」。そして四つ目が「植物」である。ここでは最後の「植物」と恐竜の「巨大化」を紐づけて詳しく解説する。

その前に他のキーワードもさらっと解説。

一つ目の「捕食者」とは、「捕食者」から身を守るための巨大化である。恐竜が地球上に現れた時代には、恐竜以外の巨大な捕食者がいた。その捕食者から身を守るために、恐竜は自身の体を大きくしたと考えられている。たしかに現在でも大人のゾウを狙う肉食動物はほとんどいない。

二つ目の「効率」とは、「効率」よく生きていくための巨大化である。恐竜は活動的な生き物で、その分エネルギーも多く使う。そのため無駄なエネルギーはなるべく抑える必要がある。首を長くすれば、動き回らなくても広い範囲の植物を食べることができる。つまり「効率」のよい食事をすることができる。首が長くなると、バランスをとるために体や尻尾も長くなる。こうして巨大化が進んだ。

三つ目の「繁殖」とは、その名の通り「繁殖」のための巨大化である。生物はより優れた異性を選ぼうとする。その基準は様々だが、体が大きいことが異性へのアピールにつながった可能性は高い。体が大きいことは「捕食者」からも襲われにくく「効率」よく生きていく能力も高い。こうして巨大化が繁殖に有利だったため、ますます恐竜の巨大化は進んだと考えられる。

では本題にはいり、「植物」と「巨大化」の関係についてみていこう。

恐竜が登場する前の地球では、大規模な火山噴火により二酸化炭素が増えていた。逆に酸素の量は少なくなり、地球上ではあらゆる有害物質が大気を満たしていた。当時の地層からは、酸素と結合していない鉄(鉄と酸素は非常に結合しやすい)も見つかっている。

これらを受けて、当時の地球の生態系における生物種の実に96%が絶滅した。この絶滅を境にそれまでの「古生代」という時代区分から、恐竜が繁栄する「中生代」が幕を開ける。ちなみに中生代を三つの区分に分けて、それぞれ「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」と呼ぶ。

続く中生代初期も酸素の量は今の半分ほどしかなく、生物にとっては生きづらい時代だった。

当時の自然環境は「植物」にも影響を与える。植物は、高濃度の二酸化炭素のなかで育った場合、植物内の窒素の量が減る。これでは植物の成長スピードは速いが、中身はスカスカな状態になってしまう。つまり当時の環境は、植物を栄養がないただの葉っぱに変えてしまった。また三畳紀の後期になると、植物は頑丈な外皮やとげ、毒をもちはじめるようになった。

当時の草食恐竜は、「栄養がないうえに、なかなか消化できない植物」を食べて生きていく必要があった。栄養がないのでたくさんの量を食べなくてはならない。丈夫な植物を消化するためには「長い腸」も必要になる。

こうして栄養がなく頑丈で消化しにくい植物を食べるために、長くて大きな腸が必要になった恐竜は、巨大化せざるをえなかった。草食恐竜が巨大化すると、肉食恐竜もそれにともなって巨大化への道をたどることになる。

当時の環境が植物に影響を与え、その植物を食べる草食動物が巨大化し、対する肉食恐竜も巨大化していく。これが「植物」と「巨大化」の関係である。

恐竜の巨大化にはほかにも様々な説がある。ここからはぜひご自身で恐竜の巨大化の謎を考えてみてほしい。きっと面白い発見があなたを待っている。

参考文献

平山簾「新説恐竜学」

キム・ドユン「恐竜の生態」




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