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【読書記録 #45】『夜明けのすべて』(瀬尾まいこ 著)を読みました

※本記事にはネタバレが含まれます。

あらすじ

小さな会社で働く藤沢さんはある日、同僚の山添くんが仕事中に炭酸飲料を飲み、ペットボトルのふたを開ける音にぶち切れる。些細なことにイライラして、我慢できなくなる彼女のそれは、PMS (月経前症候群)の症状であった。

別の日、藤沢さんが会社のトイレ掃除をしていると、薬が落ちているのに気づく。そこには「ソラナックス」と書かれていた。事務所に戻ると、山添くんが息苦しそうにしゃがみこんでいた。それを見た藤沢さんは、拾った薬を彼のものだと確信し、水とともに渡す。薬を飲むとしばらくして、彼の症状は治まった。藤沢さんの拾った薬は、パニック障害の発作を抑えるための薬だったのだ。

PMSに悩む藤沢さんと、パニック障害に悩む山添くんが、少しずつ前に進んでいく物語。

感想

まず、私は恋愛モノが苦手なので、2人の関係が恋に発展しないところが良かったです。物語自体が面白かったので、恋に発展したら興醒めだな…と思いながら読んでいたのですが、一応最後まで2人がそういう関係にならなくて安心しました。

さて、本の感想です。

2年前まで、明るくて、友達もたくさんいて、彼女もいて、仕事も楽しかった山添くんが、ある日突然パニック障害になり、すべてを失う。歩く以外に移動手段がないから、どこにも行けない。何を食べても美味しくない。やりたいことが何もない。そんな彼が藤沢さんと出会い、少しずつ、自分の好きだったものを思い出したり、自転車に乗ってみたりする。

正直、この展開は読めます。藤沢さんと山添くんが出会った時点で、そうなるだろうな、と。それでもこの本が面白いのは、その過程での2人の心の内が細かく描かれている点と、単にこの2人を応援したくなるからでした。

私自身(病気ではないはずですが)、短気で、ぶち切れてしまうことがあります。自分のそんなところを嫌だなぁ、治したいなぁと思っているものの、真剣に向き合うこともなく、特に対策もしていません。だから、自分の病気と向き合って改善しようとしている彼らはすごいな、立派だなと思いました。

この本の中で私が1番好きだなと思ったのは、山添くんの以下の言葉でした。

パニック障害が完治しても、仲間と集まったり、あちこちに出向いたり、前と同じようなことをしたいとは思えない気がする。何一つ迷いなく生きていたはずなのに、あのころの自分に戻るのはどこか違っている。

過去の自分は大好きでも、当時の自分に戻りたいとは言わないところ。現実=変わってしまった自分を受け入れているところが、強いなぁと感じました。

この本を読んで、人は誰しも大なり小なり悩みや事情を抱えて生きているものなのかな、と思いました。障害であれ病気であれ、欠点であれ、その大小に関わらず自分を受け入れることの大切さを学んだ1冊でした。

・読んだ時期 :2021年8月上旬
・かかった時間:3日×1.5時間
・おすすめ度 :★★★☆☆


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