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「人間」「社会」の課題はスポーツにヒントあり【作戦タイム】No.1

私たちADCPAは、日本学術振興会と大阪大学大学院の研究助成を受けて、
スポーツ×人間社会をつなげていくラジオ【作戦タイム】の配信をスタートしました。
MCは、奥村武博(ADCPA代表理事)×岡田千あき(大阪大学大学院人間科学研究科・准教授)。
プロフィールなどはこちら

選手の功績ではなく、人間や社会の在り方を語る

もともとADCPAの活動は、従来的なスポーツ競技振興というよりも、アスリートの社会的価値を高め、多角的視点で社会とつなぎ、社会全体を豊かにするというポリシー。
そんな思いを共にしながら、異なる視点からアプローチするコラボ番組が誕生しました。
いわゆるスポーツ選手の功績やスポーツ界の話ではなく、スポーツを通して人間や社会の在り方や課題、その解決の糸口を探ります。

毎回ジャンル問わずの多彩なゲストと共に、硬軟織り交ぜ(時々関西風!)た化学反応からの気づきをお届け、シェアします。

音声ノーカット版はspotifyへ  #1-1,  #1-2

⇩ダイジェスト

スポーツの中に見える「社会」がある

MCパートナー岡田先生
「私の研究は、スポーツの持つ力を手段として使うことで、一見スポーツとは関係ないけど社会課題にアプローチしたり解決を考えるのがテーマです。日本ではなじみが薄いけど、世界では普通にある分野。私は、『スポーツの中に見える社会』と『スポーツを通じて社会を見る』両面に興味を持って研究しています」。 

スポーツを競技や体力という「ハード面」ばかりではなく、「人のソフト面」という切り口で見ると、社会に通じる価値やお国柄が見える。
そんな視点から、初回はクリケットにスポットを当て、
ゲストは木村昇吾さん(元プロ野球選手からクリケット選手に転身)。
なぜクリケット?

世界で2位の競技人口を誇るクリケットは、実は教育的なツールとして世界中に拡がった歴史を持つ。

「自分で考えて動く」マインドを育てるクリケット

教育として当たり前

ゲスト木村さん
「イギリス発祥のクリケットは、野球と似てるけどルールはだいぶ違うし自由度が高い。だから『自分たちで考えて動くマインド』を育てるためのスポーツとしてイギリス軍の士官学校のカリキュラムにも入っていて、イギリスでは王室も含めて教育として当たり前なんです」。

元は貴族のスポーツだったクリケット。やがて大英帝国時代に植民地として多くの国を統治するとき、「自分たちで国をつくるために動く」人が必要になったことから、指示待ちではなく「自分たちで動く、考える」教育としてクリケットが世界に拡がっていったそうだ。

技術よりも「目に見えにくい能力」を評価

木村さん
「打つ・投げる、の技術よりも、「チームとして勝たせる」というキャプテンシーや誰をどこに使うか、戦略の立て方、指示の仕方、信頼、とか色んなことをする、この能力は日本語に訳せないんだけど、これが優れているキャプテンが良い選手として評価されて、年俸も高いんです」
“日本語に訳しづらい”いわゆる「マネジメント能力」こそが、良いクリケッターとして稼げる土壌になっている。

スポーツを「人を育てる」ツールに

思考力やマネジメント能力をつけるツールとしてスポーツを活用する。
ゲームとしての楽しさを使いながら、社会に活かせる人・能力を育てる。
この位置づけが日本とは大きく違う。
 
奥村
「僕自身も、スポーツをしていたときと、会計士の受験勉強するときの頭の使い方は共通点が多いなと気づいた。だから「考えながらプレーする」ことは大事で、そこを意識する指導によって、アスリートたちのマインドが育つし、競技のパフォーマンスも上がる。実はアスリートのキャリア問題ともつながるのでは、と思う。こういうスポーツの活用はすそ野も拡げる側面になるし、僕はこれが本来スポーツの在り方なんじゃないかなと思っている」
 
➡なぜクリケットが「自分で考えて動く」能力を育てるのか、
実は日本人に向いている理由、など奥深くておもしろいエピソードは、
ぜひ音声spotifyへ

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培われるマインドこそが、スポーツの真の力

【アディショナルタイム】 byかしわぎ

競技力や勝敗、スーパースターの活躍ばかりが注目され、更には「体を動かすこと」というイメージで人によっては苦手意識もあるかもしれない。
でも実は、そこに至る、思考法、トライ&エラー、判断力、対応力、戦略力、仲間とのコミュニケーションなど目には見えにくいプロセスにこそ学びや価値が詰まっている
私が長年、アスリートに取材してきたのもそこに魅力を感じたからで、フォーカスしてきたのもその部分。

スポーツでは協調性や規律尊重などが謳われがちだけど、クリケットが「自分で考えるマインドを育てる」ツールとして世界に普及したとは!
「自分で考えて動く」これが「個の力」の真の意味だと思う。

「個の力」は「協調性」と相反しない

スポーツでも話題になる「個の力」は、わりと日本人が弱いところ。
その意味は「技」がズバ抜けることのように捉えられるかもしれないけれど、私はそれ以上に「局面を打開するために自分で考える力」が大切だと思う。

その個の力は、けっして協調性とも相反しない。
いかにも個が強いと協調性に欠ける、かのように捉えられてしまうことがあるけれど、矛盾するものではないと思う。

「自分で考えて判断できる力」があってこそ、いざというピンチで「技の使いどころ」や周囲の中での自分の役割を的確に効果的に判断できるわけだから。

今は不安定で先が見通せず、柔軟に局面を打開しなければならない時代。
アスリートに限らず、一つの正解や指示に依存するのではなく、「自分で考えて自発的に動く」力こそが、誰にとっても社会で生きるうえでとても大切な力として必要だと思う。

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