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より良い選択は、知識と自分を"タブー視"しないことから【作戦タイム】No.4

<スポーツ×人間社会>をつなげていくラジオ【作戦タイム】のシェア。日本学術振興会と大阪大学大学院の研究助成により、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構(ADCPA)がお届けしています。

MC奥村武博(ADCPA代表理事)×岡田千あき(大阪大学大学院人間科学研究科・准教授)。
ゲストは伊藤華英さん(競泳元日本代表)。プロフィールなど詳細はhttps://www.adcpa.or.jp/sakusen-time

ダイジェスト⇩

正しく知るためにはタブー視しない

大切でありながら意外と正しく知らない、その典型的な一つが女性アスリートが抱える月経の課題。
かつて競泳の日本代表だった伊藤華英さんは自らも悩ましかった経験から『1252プロジェクト』を立ち上げ情報発信している。
その目的は、女性だけでなく、男性にも知ってもらうため。

知らなきゃいけない、ということすら知らなかった

伊藤華英さん
「女性は1年(52週間)のうち12週間が月経期間。男性にも知ってもらいたいので、イメージしやすくするために『1252』と数字にしました。
そもそも私自身、15歳で日本代表になってから悩ましくて20歳前後が毎月しんどくて結局アテネ五輪には行けなかった。次の北京五輪では生理期間をずらすピルを使いましたが、3か月前から始めたのでずっとコンディションが悪くて、医師から3か月前からでは遅い!って言われてしまいました。
ピルが悪者ではなくて、ちゃんと生理と向き合って正しく知っていたら少し違う判断ができていた。14、5年前の私の時代はそれができていなかった、その経験が原点です」
 
岡田先生
「女性同士も話す機会もないし、わかっていないことも多い。PMSの存在自体、生理前にもイライラしたりだるい症状があることも、つい最近まで知られてなかったしね。でも人によっても違うし、ちょっとしたことだと3日過ぎればいいやって耐えちゃうし黙っちゃう

「頑張る気持ち」がかえって悪化させてしまう

伊藤華英さん
「アスリートにとっては、月経のことを考えるのもメンドクサイし考えたくない。しんどいということは弱みになるので言わないほうがいいと思ってて、実は練習や競技力に影響することも知らなかった。アスリートだと、休むと感覚が変わっちゃう、パワーが落ちる不安もあるから、休みたいとも思わなかったし。でも意外と疾患を抱えている人も多いんです…」
 
奥村
「リスクを考えちゃうからだね。それごときで休んでたら頑張ってきたのに置いていかれちゃう、休みたくないって体調を崩してしまうパターン。一般の会社でも同じことが起きている」
 
伊藤華英さん
「そうやって社会から離脱していくのがもったいない。女性だけのものじゃないとして、知らなきゃいけないんだ、ということにしていきたいです」

「よくわからない」から気遣いしすぎや偏見に

『1252プロジェクト』では、東大病院のドクターが監修して正しい知識と医学的根拠に基づいた教材を作り、楽しくわかりやすい講義やワークショップ、アンケート調査、インスタやユーチューブで発信している。
 
奥村
男性の指導者にも見てもらいたいし、勉強してもらいたい。根本的には若いうちからしっかり仕組みを知っていくことだけど、やっぱり男性から投げかけるとハラスメントとの線引き、接し方が難しい
 
伊藤華英さん
よくわからない認識不足から気遣いしすぎて話せなくなったりセクハラになっちゃう。私たちの課題でもあるけど、生理2日目?はセクハラ。今しんどい?体調どうですか?無理しなくていいですよ、ならいいのかもしれない。症状は男性がいると言いにくいけど、月経や体の仕組みは一緒に学んだ方がいいと思います」

オープンに一緒に学んで共通理解へ

伊藤華英さん
「私たちが学校で授業するときは、男子にも女子にも同じ内容を一緒に聞いてもらって恥ずかしくないこと、認識を同じにすることを大事にしています。男性女性で成り立ってる社会だし。男子には、自分事として好きな人ができたときにイメージしてもらえるように」
 
海外の選手はピルの使い方もよく知ってるし使用率も高い。普通に話していて恥ずかしいことではない感覚です。症状も人それぞれだから正しく知ってサポートや対策を選択できればいいなと思います。それしかない、ってガマンせずに色々知って選択肢から選ぶことが違和感のなさにつながります」
 
奥村
より良い選択の前提には正しい認識が必要。自分の体のことを良く知る一環で、体だけじゃなくて色々なことに同じことが言える。そして一般の会社でも、僕も含め男性も知って周りの理解も大事ですよね」

ノーカット音声はSpotifyで⇩
月経について発信する『1252プロジェクトとは』(#2-1)
月経とうまくつき合うには正しい理解(#2-2)

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ミスマッチを防ぐ「知る」大切さ

【アディショナルタイム】 配信考記 byかしわぎ

今回はたまたま女性アスリートを通した月経の話だったけれど、「知らない」ことによる不利益、「知る」ことの大切さをあらためて感じた。
月経に限らず、生きる上での様々なことにも通じてくると思う。

知る① コレしかない、より「コレがいい」の選択肢を

「コレしかない」という確信が、自分にとって心強い時もある。
反面、そこに違和感や疑問が残る「ガマン」や「あきらめ」があるようでは全く違う。

それしか知らずにあてがわれたか、理解して自分で納得して選べたか。
たとえ同じものだったとしても、その心持ちは全然違うし、その後の取り組み方や効果も違う。「ガマン」は長続きしないし、心身に良くない。

他の選択肢がないのか一度見渡して、なるべく選択肢を増やすことが「納得の選択」「より良い選択」につながる。
選択肢を増やすには、「今自分が知っていることが全てではないかも」と、自分の視野を拡げて、なるべく正しい情報や知識を得たほうがいい。

コレしかない、より「コレがいい」に。

知る②「自分に合う見極め」には、自分の特性

いくら情報や知識を集めて選択肢を増やしても、自分に合う取捨選択ができなければ意味がなく、むしろこれが肝心。
「自分に合うか」を見定める判断材料は、やはり「自分自身を知る」ことに尽きる。

生き方やキャリアも同じことが言える。

周りと同じ、前例の踏襲、あてがわれたものは、考えなくていいし、一時的にはラクかもしれないけれど、窮屈さや違和感、ミスマッチにもつながる。
それは結果的に自分にとっては不利益になる。

ミスマッチを減らし、自分に合うものを選び取るには、知識や情報を集めるだけではなく、まずは自分自身のスキルや価値観、特性をきちんと知った上で。
自分を知れば、多くの選択肢に振り回されることもなく、「より良い選択」につながると思う。

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