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第二話:広告業界のキャリアステップとしての記事広告(タイアップ広告)制作の魅力

具体的な書き方の話に入る前に、記事広告(≒タイアップ広告)の制作業務は広告業界のキャリアステップとしてかなりオイシイぞということをお伝えしたいと思います(既に大手代理店でコピーライターやってますが?というやんごとなき方には当てはまりません)。広告代理店に入った人って、業務範囲が狭まるイメージがあるせいか、実はあまりメディアサイドに移ろうとはしないのですが、実際に入ってみると本人の動きようによっては結構なチャレンジができます。

※"検索利便性向上"のため、この記事のみ本文内「記事体広告」を「記事広告」表記にしております。

記事広告/タイアップ広告制作を軸に、大胆に仕事の枠を広げる

私は代理店出身という立場も活かすため、記事広告以外にも提案すべきものは提案していました。インフルエンサー施策はうんざりすほどやりましたし、他にもたとえばメディアにいると多くのクライアントと出会うので、クライアント同士をつないだコラボ企画(3社タイアップ)やコラボ商品の開発。また記事内容と実店舗での体験や販促物を絡めた立体的な展開や、読者の「持ち物調査」をベースにしたメディア拡販施策まで。記事広告でプロモを打ちたいという背景には、もっと大きな全体プロモとその予算があるので、手の届く範囲は全て取りに行くようにすれば業務範囲は狭まるどころか大きく広げることも可能です。

事業部経験が積める

マーケティングの中のさらに「マーコム領域」に特化している広告代理店という組織は結構特殊な場所なので、案外クライアントサイド(普通の会社)の状況がわかりません。その意味では、メディアというのはそのメディアをプロダクトとした一つの事業なので、その中に事業企画やプロダクトオーナーもいれば開発エンジニアもいて、広告予算もあります。PLシートも都度共有されます。一度事業部経験をして、普通の会社がどのようなロジックで動いているのかを知っておくことで、代理店に戻った時もより「気の利いた」提案ができるのではないでしょうか(ここは代理店に戻ったことがないのでわかりませんが)。

「メディア」という立場を利用しまくれる

私も10年以上いましたが、広告代理店というのは過酷な商売だと思います。自社独自の売り物がない中で、電通・博報堂もその他代理店もフラットに競い合わねばなりません。パフォーマンスが悪ければ他の代理店に切り替えればいいので、クライアントの対応も非常にシビアです。それに比べると、メディアはそれぞれが編集コンテンツを支持する独自のオーディエンス(視聴者や読者)を囲っています。メディアの編集の立場であれば、その気になればタダで読者に情報を届けることもできる、その意味においては(多かれ少なかれ)メディアは「権威」あるいは「権力」を持っているともいえます。だから、クライアントとも対等に議論がしやすいですし、メディアブランドが確立されていれば、記事広告であっても競合に扱いを奪われないために無茶を引き受ける必要もありません。もちろんそこで浮いた「余力」で楽をしろといいたいのではなく、その分の余力をさらにコンテンツ作りに投下しましょうということです。

一番のメリットは「medium=中間存在」でいられること

私が広告会社に入った理由のひとつは、1社で同じ商品に関わり続けるのではなく、様々な会社の様々な商品に関われる自由度に魅力を感じたからです。しかしこのメリットは、実はメディアの方が何倍も享受できます。一業種一社制が厳密に適用されているわけではないにせよ、広告会社においては同じチームが競合商品をかけもちすることはありません。しかし、偏向のないことが基本的価値であるメディアでは、同時期に同ジャンルのブランドと複数お付き合いするのが当たり前です。

私がライフスタイルメディアにいた時は、例えばインテリア業界ならIKEAもニトリもイオンのHOME COORDY(ホームコーディ)も、家電業界ならSONYもPanasonicも日本HPもキヤノンも富士フイルムもアイロボットも同時に担当していました。各社のオリエンを年間50回ほど横並びで聞けるので、ターゲット認識や課題の共通点が見えてきますからその時代の空気感をグロスでつかむことができます。何より、そんなブランド担当者から直接オリエンしてもらえること自体、なんて贅沢なことなんだろうと内心感動を覚えていました(もちろんその内容は数十億円かけてTVCMを打つ時の代理店向けオリエンの濃度とは違いますが)。また、その間に入る電通・博報堂・ADKの方たちともメディアの立場でお付き合いできるので、改めて勉強になることが非常に多かったです。

私がライフスタイルメディアに入った2016年頃はちょうどネイティブ広告への注目が高まっていた時期でもあり、大手のクライアントから大量に記事広告の出稿がありました。ガシガシ書いていた2年間くらいで担当したのは、主なクライアントだけでも以下です。

【主な担当クライアント】SONY、Panasonic、東芝、キヤノン、日本HP、富士フイルム、サムスン電子、アイロボット(ルンバ)、ダイキン工業、YKK AP、ソフトバンク、NTT docomo、資生堂、花王、ライオン、ユニリーバ、アンファー、サンスター、旭化成、ニトリ、IKEA、Bo Concept、ANA、JTB、JR東海、Air b&b、キユーピー、ヤマサ、ハナマルキ、ネスプレッソ、雪印メグミルク、イオン、イトーヨーカドー、ローソン、セブンイレブン、三井不動産(ららぽーと)、松屋銀座、島忠ホームズ、ぺんてる、とんぼ、日本郵便、伊藤忠商事、武田薬品、大正製薬、第一三共ヘルスケア、ニチバン、FCAジャパン(FIAT 500:チンクエチェント)、ユーキャン、ブラザー工業、東京スカイツリー

今は当時よりは少し落ち着いているかもしれませんが、短期間に様々な大手クライアントのブランド担当と仕事できるのはメディアサイドの制作にいるメリットだと思います。

読者の専門家という立場で対等な議論ができる

ターゲットの議論の場合、広告主と広告代理店の関係では広告主の方が自社製品のユーザーを直接知っているので口を挟めないところも多いのですが、メディアタイアップ広告の場合はその読者がターゲットなので「うちの読者はこうです」と主張することができます。日々何本もコンテンツを回しているメディアは、ある意味毎日市場調査をやっているようなもの。読者の反響の傾向変化やハネた記事の分析から、ある程度の根拠を提示することもできるので、それを元に正解に向けた議論を重ねることができます。もちろん広告案件ですから、広告主から「それは分かるがこうしてほしい」と具体的なオーダーが入ればそれに合わせるべきですが、そうでなければ対等な立場で言うべきことは伝えるのが読者を誰よりも知るメディアとして、また記事広告のプロとしての誠実なスタンスだと思います。

記事広告を書き上げることで自力の「納品力」がつく

ライフスタイルメディアにいた時はだいたい年間で60本ほど記事広告を上げていました。撮影案件であればカメラマンやモデル、スタイリストなどのスタッフが関わり、それらのディレクションもやらねばなりませんが、半分以上はライター一人で完結する案件です。広告のライティングと編集のライティングは全く違うので、私は全て自分で執筆して納品をしていました。3月など年度末には一か月で最大16本納品したこともあり、その時は死ぬかと思いましたが、代理店で毎週完徹していた時期とスペインで当時若者の間で流行していた首絞め強盗に遭ったことを交互に思い出すことによって無事乗り切りました。

とにかく一流の広告主に納品するコンテンツを書きまくれるというのはやりがいも得るものも大きいです。ゆくゆくはディレクションだけするつもりであっても「最終的には自分が書けば納品できる」という自信ができるまでは自分で書き続けるべきだと思います。そしてその記事広告を「書きまくる」という経験を積むには、メディアのタイアップ広告の仕事はうってつけです。

数字を通した読者との対話ができる

前回の記事で書き方によって反応は10倍くらい変わると書きましたが、記事広告の醍醐味のひとつは読者の反応がビビッドにわかるということです。もちろん漠然と記事を書いていては何もわかりません。自分なりの仮説を明確に持ち、記事の中に検証可能な形でその仮説を盛り込み、検証する必要があります。具体的には、1つの訴求商材に対してだいたい1記事で3通りの刺し方を試し、それぞれにCTAボタンをつけてどの切り口が読者の反応がよいかを確認していくのです。自分で計算しながら書いた記事なので、毎回新たな発見があります。これを10記事、20記事と積み重ねていくと、徐々にどう言われれば読者が自分ゴトとして捉えてくれるかがつかめるようになっていきます。

消費の中心=F1層向けに記事広告(≒タイアップ広告)を手がけられる環境がベスト

記事メディアだと若い女性向けメディアが多いですが、この20-34歳女性というのはいわゆる「F1層」と呼ばれ、消費の中心とされています(一時期のフジテレビが最強だったのは、このF1層支持が圧倒的だったからです)。よって、この層の読者に向けて記事広告を書ける環境ならベストといえるのではないでしょうか。でも、ただ書きまくればいいというわけではなくて、ちゃんと「広告」として書かないと、経験として蓄積されるとはいえません。次回以降は、どんな記事が記事広告(≒タイアップ広告)として良いのかについて考察を進めていきます。

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