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第五話:"効く"記事体広告(タイアップ広告)の書き方 ~スタンス編~

さて、いよいよ具体的な書き方の話に入っていきます。まずは基本的な心構えとして、どんなスタンスで記事を制作すべきかというところから。

前回までの記事で、記事体広告(≒タイアップ広告)はあくまで「広告」である。だからその目的である「態度変容」に向けて逆算して書かねばならない。そして、それはこれまでにない新しいブランドの語り口を持ち、読んだ読者が今すぐに買って使ってみたくなるものでなければならないという話をしました。これを踏まえると、まず最初に心がけるべきスタンスはこれです。

広告は嫌われ者である。という前提で書く

これは広告クリエイティブの基本スタンスですが、記事体広告も広告ですから、同じスタンスで書く必要があります(このスタンスができてないケースが圧倒的に多い)。メディアの読者は、あくまでそのメディアに掲載されている通常の編集記事を目当てに閲覧しています。よって編集記事の制作は、この読者の興味そのままのテーマを扱ったコンテンツを提供すれば読者の満足が得られますが、記事体広告の場合は読者の興味ではなく広告主の伝えたいことがテーマになります。なので商品をそのままストレートに紹介したら嫌がられるか無視されます(参考:嫌がる犬の口に薬をむりやり押し込むの図)。

それを避けるためには、記事の入り口であるタイトルやリード文は、あくまで読者の関心ごとから話を始めて、途中からくくっと曲げて最終的に商品の魅力に落ちる文脈を作る必要があります(参考:薄々薬が入っていると犬は気づきながらも、お肉巻きだから我慢できず食べちゃうの図)。読者の関心に対して、編集記事は「直球」、記事体広告は「変化球(読者の関心を入射角に→反射角の先が商品USP)」で攻めるのが基本です。

伝えることは1つの記事で1つに絞る

これも広告の基本ですが、記事体広告の場合は文字数が多いのであれもこれも盛り込みがちです。でも自分が読み手の時を思い出してほしいのですが、長い記事を読んでも、読後に残るのは最も印象的な1つか2つのイメージではないでしょうか。「態度変容」という明確な目的がある記事体広告において、記事であれもこれも書いて、読者によって印象に残るポイントが変わる、というのでは目的を充分に達成できません。

まず、読後どんなイメージを残すのかを明確に絞り、そのイメージをブラさず正確に伝えるために必要な最小限の言葉で記事をまとめる、というのが記事体広告の書き方です。どんなイメージに絞るかは別途記事にしますが、ざっくり言うと読者が持っている大きな「〇〇観」、たとえば「お掃除観」とか「収納観」のような前提イメージをちょっぴり覆し(=脳内天変地異)、そこに商品を紐づけることで強く印象に残すことができます。

コストコのような文章を書く

前述の通り、受け手は記事の中の一部しか受け取ってくれません。だからロジカルに整然と書くことは論文ではともかく、こと記事体広告においてはそこまで効果的ではないと思います。そもそも、専門外の人にとっての論文ほど読んでいてつまらないものはないように、「NGクリームをオススメする理由として、まずA、次にB、最後のCの話をします。まずAは・・・」と言われた瞬間、強烈な退屈感が読者を襲います。

メディアにもよりますが、リビングで気楽に読むメディアの場合はガチガチにロジカルな文章ではなく、雑然としていてもいいからワクワク読み進められる文章を心掛けるべきです。整然と並んだスーパーマーケットのような文章では、目的買いしか発生せず、読者は自分の知りたいことを知ったら情報摂取を終えて帰ってしまいます。記事体広告で促すべき体験は、ワクワク売り場を歩き回り、読者にとって意外なアイデア(=広告で伝えたいこと)を持ち帰ってもらうエンカウンタリング(出会いがしらの素敵な衝突)な体験です。

文字は文字通りに伝わらない。

書き手として文字の力を信じることは悪いことではありませんが、少なくとも「書いた分は全て伝わる」という前提で書くと文章が冗長になり、結果書き手の自己満足で終わる危険性があります。むしろ、書いたことはほとんど伝わらない、という前提で確実に読者の心に残したいポイントを伝達する技術を磨くべきです。そしてそういう目的のために縷々綿々(るるめんめん)と培われてきた技術、それがコピーライティングです。

レトリックの「プチ謎かけ」で読者を認識的に関与させる

「私たちはガソリンを入れるだけでなく、心をこめた接客もお約束しますくどくどくど・・」と並べたてるよりは「ココロも満タンに。」とギュっと一言に集約したほうが、くどくどくど・・の何倍ものイメージを伝えられます。ここには、送り手目線を受け手目線に変えることで一瞬でメリットが腑に落ちるという「翻訳」の技術はもちろん、「ガソリンの満タンとココロが満ちるをかける」というレトリックも入っています。詩のような難しいレトリックではなく、0.5秒考えたらパッとわかる程度のレトリックのさじ加減が重要です。「一瞬考えて、隠された意味を発見する」という体験によって、受け手はブランドに関与し、記憶します。書き手が溢れる想いを一行のコピーにエンコードする。それを受け手が0.5秒でデコードしたら、パッとブランドイメージが膨らむ。それがコピーライティングの力であり、記事体広告において活用しない手はありません。

メディアの「大文脈」を梃子(テコ)として活用する

タイアップの記事体広告は、必ず掲載するメディアがあります。最低限、そのメディアのトーン&マナーを毀損するようなコンテンツにしないのは当然のこととして、広告コンテンツとして強いものを作るために、そのメディアが綿々と読者と共有してきた文脈を活用しない手はありません。文脈活用には文脈の流れに沿った「順接」と、文脈をあえて裏切る「逆接」の2パターンがありますが、打率狙いなら前者、ホームラン狙いならエッジが立つ後者がよいように思います。

分かりにくいので実例を挙げます。あるナチュラルライフメディアでのこと、天然素材100%のシャンプーの案件です。商品コンセプト自体がそのメディアのテーマとぴったりだったので、普通は順接のアプローチをとります。「添加物ナシ、天然果実成分がこれだけ。ナチュラルライフを選ぶ人は、このシャンプーを選ぶべき」とすればまあハナシは成立しますが、その案件は直接CVで100件レベルの実売を目標にしていたので、「順接ではメディア文脈に合いすぎて、逆に埋もれるリスクもある。」とあえて逆接を提案しました。

当時は「詰め替え用シャンプー」ブームで、お洒落でエコな人はみんな詰め替えるのが当たり前。詰め替える時にスッキリ全部出せる容器を出した花王商品がバカ売れしている、という特集がWBSで放映された翌週でした。この、ある種盲目的に「詰め替えサイコー」になっている時代の文脈を逆手にとって、「時代に流されず、あえて詰め替えられないシャンプーを買う人こそ、真のナチュラリストだ」という文脈を作りました。防腐剤など一切無添加なそのシャンプーは、ボトルから出したら当然雑菌に触れて腐ってしまいます。その「詰め替えられない」というこの商品の最大の弱みを、逆に「天然100%の証」という唯一無二の強みに転換し読者に提示しました。

結果、順接で訴求した競合メディアに比べて圧倒的に商品は売れました。ちなみにこのシャンプー、一本4,000円するのですがいまだに私は愛用してます。書き手は最初の読者でもあるので、少なくともその人がすっかり態度変容しないとその先の読者には届かないと思います。オリエンで毎回感激するくらい「惚れっぽい」人がこの仕事には向いていると思います。

結論:広告を制作するように、記事体広告を制作する。

記事体広告の基本スタンスをまとめると、こうなります。基本的には通常の広告制作と同じ心構えで作っていけばよく、唯一意識すべきは掲載するメディアの文脈を強めに意識する必要があるところくらいです。このスタンスで取り組めば、記事体広告制作でも充分広告制作の経験が積めますので、「いつかは制作に・・」と思いながらいつあるか分からないクリ転試験を待っている代理店営業の方などは「メディアサイドで制作修行する」という選択肢もアタマに入れておいていただければと思います。

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