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#14 雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.III 「30€」

 出国前最後に渋谷のレストランで友人とラクレットチーズを味わい、成田空港近くのホテルで一泊。ようやく東京のこの地獄のような暑さとはおさらばできる。寝坊は絶対に許されないので念入りに目覚まし時計をセットして早めに就寝。

成田からマドリードへの直行便、初めてのイベリア航空の印象はあまり良くなかった。座席に用意されていた映画のパンフレットは日本語と英語であらすじが書いてあったがなぜか複数の映画が一字一句違わなかった。

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 12時間超のフライトを終え、バラハス空港に着き、タクシーに乗り込んだのが現地時間午後九時。空港、市内間の運賃は一律30€なのでぼったくられる心配はなし。運ちゃんは漏れなく英語を話せないのでわかるところは下手くそなスペイン語で返答し、たまにわかったような顔で笑ってごまかしながら滞在先へ向かった。

日本人の悪い癖だ。おそらく全体の一割も理解できていなかった。

 なんとか玄関まで辿り着き、部屋に案内してもらった。ひととおり家の中を説明してもらった後、とりあえずスーツケースを開けてスーツをハンガーに掛ける。

ベッドに座ってみると今までに寝たどのベッドよりも深く沈んだ。もうそれだけで満足。他には勉強机、棚、ベッド横のライトだけのシンプルな部屋だったが、広さは申し分ない。

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 翌朝はまずホストマザーと地下鉄やバスの支払いに使うICカードを駅の事務所へ作りに行った。日本の定期券とは違い、顔写真の記載が義務付けられている。学生割を利用するという理由もあるのだろう。1か月間20€で市内のバスと地下鉄、そして一部の”JR”は乗り放題だ。札幌と比べるとなまら安い。

午後は早速滞在許可証を作るために交番へ向かった。長々と説明し、取得までに約三ヶ月を要したビザは有効期限が三ヶ月しかないので十一月下旬には失効してしまう。そのため、ビザとは別に現地で滞在許可証を取得する必要があるのだ。

 事前に調べたところ、こちらも交番等での手続きに二ヶ月近くかかるとのことだったため、入国してすぐ手続きを始めるべきだそうだ。インターネットで最寄りの交番を探して何とか辿り着いたが、ここでは受け付けていない、と言われ、別の警察署の住所が書かれた紙を渡された。

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歩き回ったせいか、いや、明らかに暑い。

 太陽が近いというよりは青空が近くて深く感じる。太陽は近くないが日差しが強烈だ。空気は乾いているので東京のような辛さは感じない。あそこは辛かったぞ。

暑い日はなぜか酸っぱい料理がおいしく感じる。初めての外食は交番近くのペルー料理店でのセビチェだった。魚のマリネのような料理で、早速生魚を食した。

次回予告『雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.IV「方言と言語」』

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現在、海外の大学院に通っています。是非、よろしくお願いします。