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銭湯を日本から消さない!サウナの梅湯経営者インタビュー ~銭湯の廃業が相次ぐ中、危機感を覚えた湊三次郎さんは24歳のとき、銭湯再生の道へと乗り出しました。

 2015年から銭湯を始めて8年目。24歳のときでした。銭湯を始めたきっかけは、前職を辞めるとき退職日まで3カ月ぐらいあってどうしようかと考えてる最中に、たまたま梅湯をたたむ話を聞いたから、やることにしたって感じです。もともと学生時代に梅湯でバイトはしていたんです。
 でも、実際やってみたら、それはもう大変。社会経験が浅いからお客さんのトラブルもうまく対処できないし、修理もどの業者に頼めばいいか分からないし、知らないことが多過ぎました。1年目は全くダメで、徐々にやっていけそうと感じたのは2年目くらいから。最初はずっと一人でやっていたんですけど、同世代のお客さんが面白そうだからといって助っ人で手伝ってくれたりもして。そこから雇用ができるようになって、今は20代を中心にデザインや音楽、映画をやっているようなスタッフが集まっています。

サウナの梅湯は天然地下水をで沸かすスタイル。京都は地下水が豊富で水質もよく、ほとんどの銭湯が地下水を使っているという
ゆとなみ社ではオリジナルグッズを多数扱う。サウナの梅湯Tシャツ

銭湯は令和カルチャー

 今のサウナブームも含めて銭湯が過熱してるのは、若者が昭和レトロに回帰してるわけじゃなくて、令和のカルチャーとして受け入れてるんだと思います。2000年生まれくらいだと昭和に全然ピンときてなくて、じゃあなんで彼らがそんなに銭湯に来てるのかっていったら、今の新しい文化として捉えてるんです。もちろん昔の文化から地続きではあるけど、昭和回帰の文脈とは全然違いますね。
 家にお風呂があっても、あえて銭湯に来たり、あとはSNS で友達やインフルエンサーが行ってるのを見て来る。ワンコインで遊べる場所っていう感じで発信されたりもして。それと共に銭湯もメディアに出るようになって、SNS と結びついて、ある程度分かりやすい形ができた。

サウナの梅湯の浴場。噴水がある浴槽の奥に水風呂とサウナ室が

 僕が銭湯を始めた頃は取材自体も珍しかったし、若い子が銭湯に来ることもなかったんで、何で知って来たんですかって聞くくらいでしたから。SNSの力は強いと思います。
 ただ、SNS で発信されるような頑張ってる銭湯はごく一部で、高齢化が進んでいるのが現実。だから、そういう銭湯は早めに継がしてもらいたいですね。いくら頑張れと言われてもできないものはできないんで、だったら現役
は退いて不動産オーナーとして僕らに貸してもらって、その分の賃貸収入を得る、と。
 僕もそうですが、銭湯を借りて運営する業態を「預かり」というんです。その預かりのオーナーにやる気のある若者が入れば、今からでもそれなりの結果が出るんじゃないかと思っています。
 ポテンシャルはあるけど、うまく引き出せてない銭湯がたくさんあると思うし、お金をかけて全面改装しなくてもソフト面で変えられます。銭湯そのものの魅力で来てもらえるようにしていきたいですね。あとは、いい銭湯が一つだけあっても後に続かないと仕方ないので、若い人たちがいいと思える銭湯をどんどん増やしていくことが一番重要だと思っています。

昭和初期に創業した源湯をゆとなみ社が2019年にリニューアル。湯上がりにゴロゴロくつろげる20畳の和室スペースが人気

サウナの梅湯
京都府京都市下京区岩滝町175 
営業時間:14:00〜26:00、土日朝風呂6:00〜12:00 休み:木曜

源湯
京都府京都市上京区北町580-6
営業時間:14:00〜25:00 休み:火曜

話:湊三次郎さん(みなと・さんじろう)
1990年静岡県浜松生まれ。2015年銭湯継業の専門集団「ゆとなみ社」設立。
京都の「サウナの梅湯」「源湯」の他、「容輝湯」(滋賀)、「みやの湯」(大阪)、「にんじん湯」(愛知)など廃業寸前の銭湯を継業し、日本全国の銭湯の再生を試みる。https://youkiyu.stores.jp


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