Accent and Idea

毎週ショートショートに参加し始めたら、思いの他はまってしまいました。 毎週楽しくショー…

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毎週ショートショートに参加し始めたら、思いの他はまってしまいました。 毎週楽しくショートショート書いています。 小説にも挑戦してみたい今日この頃。

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  • 勉強をする意味と理由

    勉強をする意味と理由について、小話形式で語ります。

  • お父さんといっしょ

    息子との対話や遊び

  • 雑感

    日々の雑感をまとめます。

最近の記事

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【ss】リベンジトリートメント

僕の父は毛深かった。 男性ホルモンが強いのだろう。 そうすると必然的に僕も毛深くなる。 僕はすね毛に悩んでいた。 そしてついに除毛剤を買った。 早速風呂場で除毛していると父に馬鹿にされた。 男が容姿を気にしすぎた。 すね毛なんか気にするなと。 僕は憤りを感じた。 一体誰の遺伝のせいで悩んでいるのかと。 学校ですね毛をからかわれているのに。 僕の父は頭を除いて毛深かった。 男性ホルモンが強いのだろう。 後退しつつある髪の毛を気にして毎日育毛剤を使っている。 これから何

    • 【見たことがないスポーツ:幸福レース】

      世界で最も参加者の多いスポーツ、それは蓄財レースだ。 資本主義に則り、皆、様々なものを犠牲にして蓄財レースに励んでいる。 しかし、このレースは酷く不平等であることが知られている。 生まれた場所や親の財産によって結果が大きく変わる。 一人のお金持ちの陰に百人の貧乏人が泣くこのシステムは数百年と人間達を支配してきた。 このような悪しき蓄財レースに反発する形で提案されたのが幸福レースだ。 これまで資本主義の犠牲になってきた一人一人の幸福感を大事にする考え方で、参加者は生涯を

      • 【ss】海のピ

        日本はユーラシア大陸の東端に位置し、周囲を海に囲まれているため、地政学上シーパワーに強い国である。 つまり、海運において大きなアドバンテージがあるのだ。空路の方が早いという意見が聞こえてきそうだが、運べる物量が違う。 その一方で、日本は中国、ロシアが太平洋にアクセスするのを邪魔する位置にあり、あからさまに表現したならば反感を招きかねない。 そんな日本の強みを活かす機運を高めるために打ち出されたキャッチコピーが「海のピ」である。 海の日の「日」をカタカナにして親しみやす

        • 【SS】彦星誘拐・織姫妖怪

          織姫は魔女の毒針に触れて永遠の眠りにつく。 月日が経ち、彦星宛てに「洞窟の奥で待つ」と織姫から手紙が届く。 彦星は洞窟に着くいたところで後ろから鈍器で殴られ気を失う。 誘拐されて監禁された彦星は暗闇の中で織姫の声をきく。 「洞窟を出るまで決して振り返らないでください。」 誘惑に勝てずに織姫の声の方へ振り返った彦星が見たのは、織姫妖怪。 織姫は怒り狂い彦星を追い立てる。 逃げ切った彦星が川で身を清めるとアマテラス、ツキヨミ、スサノオが生まれ、織姫の父である天帝と戦う。

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        【ss】リベンジトリートメント

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          22本

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          【SS】一方通行風呂

          生活安全課の宮沢警部は頭を抱えていた。 行方不明の届け出がうなぎ上りなのだ。 最近できた『スパ・マウンテンキャット』が怪しい。 潜入捜査を命じた高田巡査も行方不明になった。 そして『私は大丈夫です。探さないでください』という手紙が届いた。 終わらない仕事、部下を行方不明にした後悔、上司への説明。 宮沢は追い詰められていた。 いっそ猫になってしまいたい。 宮沢は自ら潜入を試みた。 名前から考えると山猫軒のもじりだ。 化け猫が経営しているのかもしれない。 ここは一方通行風呂

          【SS】一方通行風呂

          【ss】天ぷら不眠

          不眠は国家的な課題である。 2030年厚労省の白書に不眠の文字が並んだ。 今度のビッグウェーブは不眠か。 大学病院の新人医師はポツリと独り言を言った。 「あの、最近よく眠れなくて」 「どれくらい眠れないんですか?」 「いつもより一時間くらい短いです」 「わかりました。薬出しときます」 患者の症状を書いたカルテにはこう記載した。 「深夜まで眠れない」 新人医師のカルテを見た医長はカルテを見て改ざんした。 「朝まで眠れない」 そして、院長も改ざんした。 「全く眠れない」

          【ss】天ぷら不眠

          【SS】隔週警察

          人が思考をAIに渡してから10年。 財政が崩壊したこの国は、小さな政府への転換を迫られた。 無造作に増えた官庁は解体され、最低限の機能のみが残された。 その一つが警察だ。 残された警察においても、徹底的なコストカットが求められた。 証拠に基づく政策立案が声高に叫ばれ、警察機構を担う複数の警察会社がテストを経て入札を行うのだ。 今週はA社、そして来週はB社といった具合だ。 A社とB社の成績は、常にA/Bテストされ、成績の悪かった会社は応札できない。 その結果、A社が警察

          【SS】隔週警察

          【SS】復習Tシャツ

          折り曲げられるディスプレーの開発が進められている。 液体金属を導線に用いることで折り曲げても電気抵抗が上がらないらしい。 現在ではドットが少なく、表示できるものに限りがある。 しかし、数年後には普通のディスプレー並みの解像度になることだろう。 そこで作られたのが復習Tシャツ。 テストで間違えたところが順繰りに表示され、丁寧な解説までついている。 当初、子供サイズが作られたが、子ども達の学力は上がらなかった。 自分の服を自分で見ることなんてほとんどないためだ。 洋服は、自

          【SS】復習Tシャツ

          【ss】粒状の総料理長

          古びたアーケード街の一角に異世界の飯を出す店があるらしい。 人が異世界に飛ばされるのはよくあることだが、この店の従業員達は異世界から召喚されたそうだ。 板長のキラーサーベル。 焼き物長のイフリート。 そして、総料理長の死海ゴーレム。 皆、異世界の錬金術師に生成•召喚されたもので、人間に危害を加えないよう制約が施されている。 評判は上々でメディアにも取り上げられた。 隠し味は総料理長が指を擦り合わせるおまじないだそうだ。 テレビに放送されたその晩、店は賊に襲われ、従業員

          【ss】粒状の総料理長

          【ss】友情の総重量

          かつて人の価値は血筋で決まった。 次は金銭的価値の総量。 その次は信用の総量であった。 そして2050年現在、友情の総重量が人の価値を決めている。 結局人の価値は、人と人との関係の中でしか存在しないのだ。 よって現代人は、友情の総重量を増やすべく活動している。 かつての人々がお金を求めていたように。 友情の総重量を正確に量ることは不可能である。 しかし、snsのフォローフォロワー関係は数値化が容易である。 そこでこれらの数値を用いて、友情の総重量を推定するための指標を求

          【ss】友情の総重量

          【SS】てるてる坊主のラブレター

          降水確率80%にも関わらず、雨はまだ降っていない。 「降らなくて残念ね」 動物園に似つかわしくない都会的なワンピースに身を包み、ほんのりと薄いピンクのヒールを履いた彼女が言った。 彼女は口が悪い。それでもどこか心を引くものがあり、つい先日デートに誘ったのだ。彼女は、もし雨が降らなければと了承してくれた。 「歩きにくくて嫌ね。中止だと思っていたのに…」 時折彼女は文句を言う。僕は彼女の機嫌を取らなくてはと喫茶店に入ることにした。 「紅茶もケーキも普通ですわね」 「今

          【SS】てるてる坊主のラブレター

          【SS】祈願上手

          「赤コーナー、旧世界王者、モーゼー!」 老人が四角いリングの中央で両腕を上げた。 「青コーナー、日本王者、ひーみーこー!」 観客席から黄色い歓声が沸き上がる。 先手はモーゼだった。 祈りを捧げると、海がパカッと割れた。 「さすが旧世界王者、海を割りました。対してひみこ日本王者はどう反撃するのか!」 解説者のテンションは急上昇している。 ひみこは両手を合わせ祈りをささげた。 すると、辺りが徐々に暗くなった。 太陽が、月でいうところの半月になり、三日月になり、新月になった

          【SS】祈願上手

          【SS】文学トリマー

          俺は文学トリマーだ。 数多の本を読み、美しい文章に出会えば写経も辞さなかった俺は、トリマーが動物の毛や爪を整えるように、人の書いた文章を綺麗に整えられる。 今日の依頼人は常連の文香さんだ。 「前から聞きたかったんですが、自分では書かないのですか?」 痛いところを突いてくる。さすがは常連さんだ。 「書けないんです。書きたいという発意、自分の言葉で書きたい題材が見つからないんです」 「せっかく、きれいな文章が書けるのに」 「文香さんは、どこから着想を得るんですか?」 「過去の経

          【SS】文学トリマー

          【SS】冷凍記憶

          2000年代の前半には呟きや短い動画の共有が流行っていたらしいが、2100年代に入ると冷凍記憶がブームになった。 メモリーダンプと呼ばれるセンサーが付いた特殊な帽子を被ると、視覚野や聴覚野から側頭葉に流れる信号が事細かに記録される。 そして、ブレインバーチャルリアリティと呼ばれる細やかな磁場を創り出す特殊な装置が付いた帽子を被ってスイッチを入れると、先ほど記録された信号がそっくりそのまま脳内で再現されるのだ。 人々は、こぞって自らの経験を記録した。そしてウェブ上の記憶投

          【SS】冷凍記憶

          【SS】放課後ランプ

          少年がランプを擦ると何かが現れた。 「このランプは放課後ランプです。擦ると放課後になります。勉強も仕事も精霊の私が代理します」 とても魅力的な提案に思えた。 面倒くさい勉強も、将来の面倒くさい仕事も全部丸投げして、自分は楽しい放課後だけ過ごせばいいなんて。 男は放課後ランプを使い続け、あっという間に60歳になった。 これからは毎日が放課後だ。 「定年延長しますよね?」 ランプの精はささやいた。 確かに十分な蓄えがあるわけではなかった。 そして、その男は働き続け、寿

          【SS】放課後ランプ

          【SS】雪解けアルペジオ

          冬用のコートをクリーニングに出した帰り道。 駅前の広場で一組の男女が言い争いをしているのに気が付いた。 ここでよく見る二人だった。 路上で弾き語りをする男と、熱心な女のファン。 昨年のクリスマス、極寒の吹雪の中で歌っているのを見かけて以来だった。 二人の言い争いによると、男の指が軽い凍傷にかかり、完治までギターを弾けなくなったそうだ。 女はそんなことも知らないので、毎日ここに来てはガッカリしていたらしい。 二人の言い争いは、見事なまでに不協和音の応酬だった。 マイナーコ

          【SS】雪解けアルペジオ