【SS】文学トリマー
俺は文学トリマーだ。
数多の本を読み、美しい文章に出会えば写経も辞さなかった俺は、トリマーが動物の毛や爪を整えるように、人の書いた文章を綺麗に整えられる。
今日の依頼人は常連の文香さんだ。
「前から聞きたかったんですが、自分では書かないのですか?」
痛いところを突いてくる。さすがは常連さんだ。
「書けないんです。書きたいという発意、自分の言葉で書きたい題材が見つからないんです」
「せっかく、きれいな文章が書けるのに」
「文香さんは、どこから着想を得るんですか?」
「過去の経