【SS】一方通行風呂

生活安全課の宮沢警部は頭を抱えていた。
行方不明の届け出がうなぎ上りなのだ。
最近できた『スパ・マウンテンキャット』が怪しい。

潜入捜査を命じた高田巡査も行方不明になった。
そして『私は大丈夫です。探さないでください』という手紙が届いた。
終わらない仕事、部下を行方不明にした後悔、上司への説明。
宮沢は追い詰められていた。
いっそ猫になってしまいたい。

宮沢は自ら潜入を試みた。
名前から考えると山猫軒のもじりだ。
化け猫が経営しているのかもしれない。

ここは一方通行風呂だそうだ。
用意された椅子に座ると、機械が洗ってくれて湯につからせてくれる。
正に全自動。
注文は全くない。
つい、うとうとしてしまった。

気が付くと猫に囲まれていた。
にゃーにゃー(きちゃいましたか)。
猫語がわかる?

にゃーにゃー(お前は誰だ)
にゃーにゃー(高田です)

どうやら猫になってしまったらしい。
でも、もはや人間には戻りたくなかった。

一方通行風呂は、猫界への一方通行だった。

お読み頂いありがとうございます。記事が役に立てばうれしいです。このエリアまで読んで頂いた方が、これまでもこれからも幸せでありますように。