【SS】隔週警察

人が思考をAIに渡してから10年。
財政が崩壊したこの国は、小さな政府への転換を迫られた。

無造作に増えた官庁は解体され、最低限の機能のみが残された。
その一つが警察だ。

残された警察においても、徹底的なコストカットが求められた。
証拠に基づく政策立案が声高に叫ばれ、警察機構を担う複数の警察会社がテストを経て入札を行うのだ。

今週はA社、そして来週はB社といった具合だ。
A社とB社の成績は、常にA/Bテストされ、成績の悪かった会社は応札できない。

その結果、A社が警察を担う週は、B社がA社の成績を落とすべく犯罪を行い、B社が担う週には、A社が犯罪を行うようになったのだ。

このような事態はあっという間にメディアにさらされ、A社とB社は合同で釈明会見を行った。

「隔週警察、隔週泥棒は、互いの能力を向上させるため、敵対的生成ネットワークというAIを真似たのだ」

民衆は納得したようだ。

なにせ大多数の人は、すでに思考を停止しているのだから。

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