【ss】モンブラン失言

「わたくし、モンブランが大好きですの」
「それは奇遇ですね。私もなんですよ」
お見合いの後の最初のデートはホテルのラウンジだった。
少しばかり背伸びをしているわけだが相手はお嬢さんだ。
失礼のないようにしたい。

「なんと言っても最高峰でしょう?」
「そうですね。私は最高のモンブランを知っています。今度一緒に行きませんか」
「山のモンブランではないでしょうね。わたくし登山はちょっと苦手ですのよ」
「いえ、違いますよ。山ではありません」
「わたくしも、モンブランの最高の店を知っていますの」
「では、連れて行って下さい。プレゼントしますよ」

デートの当日、お嬢さんに連れて行かれたのは万年筆のモンブランの店。
とても嫌な予感がする。
「こちらをプレゼントしてくださるかしら?」
彼女が指さしたのは豪華な宝飾が施された万年筆だった。
「こ、これはいくらですか?」
私は恐る恐る店員に聞いた。
「2億です」
さすが最高峰。とんだモンブラン失言になってしまった。

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