【ss】非情怪談

超芸術トマソン。
それは美しく保存された無用の長物のうち不動産のものをいう。
この廃病院の非常階段もそうだ。

肝試しは夏の風物詩だ。

「やめようよ」
「びびってんじゃねぇ」

二人の青年が廃病院に入っていく。
行く先は屋上の非常階段。
三階より下が取り壊されていて非常階段として用をなしていない。

二人は非常階段を降りていく。
その先がないことは事前の知識として知っている。
しかし、実際に来てみると階段の続きが見える。

「今度は君がビビる番だよ。僕は君にいびり殺されたクラスメイトだ。さぁ、下の階へ降りるしかないよ」
「最高だなぁ。またお前を殺せるなんて」

脅された側が脅した側の手を掴み、最後のステップを踏み外した。

二人はもつれ合いながら落下した。

そしてまた次の夏。
似たことが繰り返される。

二人とも狂っていた。
あるときは片方だけ記憶が残り、またあるときは二人とも記憶が残る。
でも最後はいつも同じであった。

幽霊が互いを殺し続ける。
そこに救いはない。

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