憩い
仕事終わりの憩いの時間。
疲れのせいか、帰宅の電車をうっかりと一駅寝過ごす。
次の日休みだった事もあり、確信犯的に寝過ごしたってのもある。
実はそれだけで充分気分転換になったりする。
次の日休みだからこそ出来る、ある意味究極の気分転換だったりして。
その足で昭和の香りのする、レトロな喫茶店へ。
店内が外から見える店の構図は奥ゆかしい。
そしてこれまた昔懐かしい趣きのある扉を開けて店内へ。
すぐに数席のカウンターが出迎えてくれ、右手に見えるテーブルも素晴らしい。
何が素晴らしいか…。
テーブル達の間を仕切る木材を基調とした板である。
革張りのしつらえに、ツヤっとした木材の二重奏は、あたかもすがって下さいといわんばかりの艶やかさ。
人が少ない事をこれ幸いとテーブル席に座り、雰囲気とコーヒーと純喫茶的な食べ物に浸る。
ふと外を見れば秋特有のウロコ雲が、太陽の光を優しく遮っている。
それはまるで夏の日差しに疲れた全てのものを労わるかのような、絶妙な空の慈しみ。
まさしく憩いの時。
店内を見上げればそれ程高くない天井は圧迫感を与えず、むしろ親近感すら沸く。
その壁は黄ばんでいるように見えて、敢えてそのような色に見せる絶妙な配合。
そして演出。
天井から吊られている電球は、弱々しく、なおかつ温かみを讃えたオレンジ色。
きっとこれからの季節、このオレンジ色は人々を癒し、ほっこりとさせてくれる効果を演出してくれるだろう。
昔懐かしい雰囲気や、ちょいとしたしつらえなどにはそのような効果があるものだ。
多分。
鞄に入れていた小説をキリの良い所まで読み終えたので、店を出ようとふと壁を見ると張り紙が。
よくあちらこちらで見るバーコードの張り紙。
例え店内の様子はレトロだとしても、キャッシュレスの波は世の中に浸透している事を痛感。
昭和の「レトロ」と、バーコードの「モダン」…
これも一つの現代的シンボルとも言える。
ええ、
利用してます、キャッシュレス…。
良い憩いの時間だった。
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