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トルストイ『人生論』、読んでいます。2

トルストイの『人生論』。この本を読みながらしていることがあります。各章から、エッセンスと思われる一文を引用して「つぶやき」でnote記事に。この複雑で難解とおもえる本の内容を読みとき、読みこなすための作業として……。ここまでをひと区切り。通しで振りかえりたいと思います。

 今回は、第十三章から第二十四章までをまとめました。

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第十三章
 われわれの知識の真実性は、空間と時間の中で対象が観察しうるかどうかにかかっているのではなく、むしろ反対に、空間と時間の中でその対象のあらわれが観察しやすければしやすいほど、ますます我々にとって理解しにくくなるのである。
 
第十四章
 人間の真の生命、すなわち、人が他のあらゆる生命についての概念を作りあげるもととなる生命は、理性の法則におのれの個我を従わせることによって得られる、幸福への志向にほかならない。……人間の真の生命は時間と空間にかかわりなく流れているのである。

第十五章
 人間にとって個我とは、生存の一段階でしかなく、個我の幸福と合致しない生命の真の幸福はそこから開けるのである。人間にとって個我の意識とは生命ではなく、そこから生命が始まる境界線であり、その生命とは……幸福をますます大きく達成してゆくことにあるのだ。

第十六章
 滅ぶべきもの、たえまなく滅びつつあるものを使い惜しんではいけない、いずれ滅びるもの、滅ぶべきもの、すなわち、われわれの動物的個我を否定することによってはじめて、われわれは、滅びることのない、又滅びるはずのない真の生命を手に入れられるということである。

第十七章
 人に理性的な意識が与えられているのは、その理性的な意識の啓示してくれる幸福の中に生命をおくためにである。その幸福の中に生命をおいた者は、生命を持つ。ところが、そこに生命をおかず、動物的個我の幸福のうちに生命をおく者は……生命を失うのである。
 
第十八章
 自分自身よりも他の存在を愛さなければならない。この条件の下でのみ、人間の幸福と生命は可能となり、この条件の下でのみ、人間の生命を毒してきたものが消滅する。存在同士の闘争も、苦痛の切なさも、死の恐怖も消滅するのである。

第十九章
 全般的な生命の運動が、存在同士の闘争の強化と増大にあるのではなく、むしろ反対に不和の減少と闘争の緩和にあることを、人は歴史のうちに認めずにはいられない。世界が、……調和と団結に歩みよりつつあることに、もっぱら生命の運動はあられているのだ。

第二十章
 もともと人間が考えるべきでないことまで生涯考えつづけてきた人は、理性をゆがめてしまっているため、理性が自由ではない。理性が、個我の要求の検討だとか、その充足方法の工夫だとかいう、本来すべきではない仕事に忙殺されているのである。

第二十一章
 個我を否定するのではなく、個我の幸福を否定して、個我を生命と認めるのをやめること――これこそ、統一に立ち戻るために、そしてまた、それへの志向が生命となっている幸福を、手に入るものとするために、人間がやりとげねばならぬことなのだ。

第二十二章
 理性とは、人間の動物的個我が幸福のために従わねばならぬ法則である。愛とは、人間の唯一の理性的な活動である。動物的個我は幸福にひかれる。そこで理性が個人的な幸福の欺瞞性を人間に教えて、ひとつの道を残しておいてくれるのだ。この道での活動が愛である。

第二十三章
 こうした選り好みのあらわれのはげしさは、動物的個我のエネルギーを示しているだけである。ある人々を他よりも好む情熱のはげしさは、誤って愛とよばれてはいるが、そんなものは、真の愛をその上につぎ木して実を結ばせることのできる、野生の若木でしかない。

第二十四章
 真の愛は常にその根底に個我の否定と、そこから生ずるあらゆる人に対する好意を有しているものだ。この全般的な好意の上にのみ、……真の愛が育ちうるのである。……こういう愛だけが、生命に真の幸福をもたらし、動物的意識と理性的意志との外見上の矛盾を解決する。

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「つぶやき」は要約でもあらすじでもない「抜き書き」でしたが、このようにひとつにつなげてみることで、論旨をつかみやすくなると思いました。

 各章の中から一文を選択するときに、章によっては複数の候補を立てて迷いながら決めたこともなんどか。それもまた読書の楽しみといえるかも。

 ただ、本書『人生論』を河の流れにたとえたときに、ここに船を浮かべても、あそこに船を浮かべてもいずれいき先は同じ。そうわりきって好みと主観で選びました。トルストイからはお叱りを受けるかもしれませんが。

 次回、つづく各章についても「つぶやき」とそのまとめとしての「読んでいます」をシリーズでお届けしたいと思います。

 出典は、新潮文庫版『トルストイ 人生論 原卓也訳』です。



※ひろゆき さんの画像をお借りしました。

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