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Lessons no.07「2017年に共有された危機感」

こんにちは、「だんすまん」です。

既にある原稿から、note用に編集した書籍の一部を載せます。
タイトルに番号を振っています。
予定投稿数を数えてはいませんが、おそらく
100回くらい切り分けて投稿することになりそうです。

「あなたが社会に届く」少し長いツアーへようこそ

経済産業省から届いたある危機感

2017年5月、経済産業省から
一つのレポートが上梓されました。

「不安な個人 立ちすくむ国家」

第20回 産業構造審議会総会(2017年5月18日)
における部会資料の一つとして、
省内若手プロジェクトから東京大学教授陣と、
松岡正剛氏をヘッドとする
有識者との意見交換を経て提供された

一人ひとりを閉塞感が覆う産業構造における
危機感を表したものです。
その危機感を、一言で表しています。

「モデル無き社会」

上梓から既に数年が経過したことから
目にしたことが無い方も多いようですので、ここで紹介します。
スライドは70枚程あるので、全てを載せるわけではないですが、
ここに一枚だけ載せます。
公表資料ですので、pdfでご覧いただくことができます。

不安と不満吹き出し

この1枚は、私たちが漠然と抱えている
不安・不満を凝縮したものです。
私たちが抱えている不安・不満は4つあります。

「早すぎる変化」
「あふれる情報」
「変わらない仕組み」
「見えない将来」


この4つの不安・不満は、組織中心社会から
個人中心社会に移行する中で、
個人の決断やリスクテイクに依存する領域が増大したことから
沸き起こっていると書き込まれています。
そして、この4つの不安・不満が覆う社会の液状化を
「モデル無き社会」と言いまとめています。

下に、本レポートにおいて「モデル無き社会」を構成する統計データと、
経済産業省が読み取った問題提起を一覧しておきました。

ここに示されるように、既に
多岐にわたる問題提起がされていることから、
私は「about You」と名付けた打開案を提起し、
展開しようと挑むものです。

ちなみに、本書が提起する課題にまつわるマーケットリサーチは、
経済産業省が代わりに行ったものとして扱います。

統計が示す問題提起一覧

筆者注:各統計名はここでは割愛します。「全文」には掲載。
    細かいので問題提起部分のみ確認で良いかもしれません。

問題提起1 居場所のない定年後

・就業を希望しても1割程度しか常勤の職に就いていない。
・7割の高齢者は地域における活動にも従事していない。
・家族や仕事のある高齢者は充分に生きがいを感じるが、
 独り暮らしや仕事なしでは生き甲斐を感じにくい。

問題提起2 望んだものと違う人生の終末

・現状病院以外で最期を迎えるという選択肢はほとんどない。
・国民医療費の2割が80歳以上の医療費であり、
 その多くを入院費用が占めている。

問題提起3 母子家庭の貧困

・母子家庭の過半数は貧困で、日本だけ突出して高い。
・母子世帯は高齢世帯に比べセイフティネットの恩恵を受けていない。

問題提起4 非正規雇用・教育格差と貧困の連鎖

・貧困が連鎖・固定化する構造。
・現役世代に極端に冷たい社会。

問題提起5 活躍の場がない若者

・日本の若者は貢献意欲が高いが、社会を変えられると思えていない。
・若者は社会貢献を諦め、自分中心になっている可能性。
・大学においても若手研究者の活躍の場が急速に失われている。

問題提起6 多様な人生にあてはまる
 共通目標を示すことができない政府

・1人当たりGDPが伸びても、かつてのように個人は幸せにならない。
・1人当たりGDPが幸福度に与える影響は世界的に低下している可能性。
 つながりや「健康寿命」も幸福の重要な要素。

問題提起7 自分で選択しているつもりが誰かに操作されている?

・既存メディアに対する信頼は低下し、
 ソーシャルメディアが信頼される傾向

官僚との意見交換

本レポートが2017年末に文芸春秋社から書籍化された後、
2019年5月頃、実際に若手プロジェクトのお一人と、
意見交換をさせていただきました。

私の当時のアイデアはアイデアとしてお話しましたが、
お墨付きを頂くことが目的ではなかったことから
「モデル無き社会は打破できるかどうか。
その役割を担っている方はいるか。」
という質問を最後にしたところ、

官僚氏はこうコメントされました。
「モデル無き社会は、既にそうだから変えられない。」
「モデル無き社会について、明確な打破を目指した動きはない。」
「Facebookに代わるコミュニティを一から築くことは、
労力が多大で意味がない。」
「私たちが提起する制度設計は一定の進捗にある。」

そして、「若手プロジェクトは解散している」とのことでした。
これは、官僚機構の人事異動サイクルの都合から
それほどのことではありませんが、
「モデル無き社会の打破」は、
経済産業省官僚の役割ではないことを確認しました。

「不安な個人 立ちすくむ国家」は、Facebookをはじめとして、
官僚が従来の枠組みを越えて提言したと一時期話題になったものです。
しかし、3年経過した今、残念ながら
出しっぱなしに近いものとなっています。
危機感として表した「モデル無き社会」を
打破する役割が彼らにないからです。

そして、2017年5月同月、
産業構造に関する情報が海外から届きました。


筆者から補足

ここまで、ご覧いただきありがとうございます。
次は、no.8「壊滅的な生産性」という小見出しを掲載します。

全文について

no.7から毎回貼り付けることにしました。
目次を見て興味あるところからご覧ください。
よろしくお願いいたします。


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