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逆ギレ編: 思い込んだら試練の道を


おもい‐こ・む〔おもひ‐〕【思い込む】
[動マ五(四)
深く心に思う。固く心に決める。「—・んだら命がけ
そうだと独り決めして信じてしまう。

デジタル大辞泉 weblio辞書


イギリス観光地の女子トイレは、
高確率で長蛇の列である


なので、娘が幼児のころは公共トイレの個室へ一緒に入っていた。娘がコトを済ませ、

「次はお母さんの番ね」
「はーい」
「動かないで、待っててよ」
「はーい」

と、私がズボンを降ろし、
便座に腰を降ろした頃合いで、

「お父ーーーさーーーん」
カギを開けて娘は出ていく。

しょせんは幼児の口約束である。

お、オラに力を貸してくれ…
と、尿道括約筋をフルで使っても、
もうどうにも止まらない。

尿は急には止まらない。オー、 尿Oh No

当時、これが何度かあった。
夫も心得たもので、女子トイレ出入り口の前で娘のために待機してくれていた。

でも残された母親の私は悲劇である。

なぜなら、
イギリス観光地の女子トイレは、
高確率で便器からドアのカギまでが遠い。

用を足しながら手が届くような、
そんな甘い造りではない。

広いのだ。

だから放尿が始まったのち、出ていかれると、もう、為すすべなどはない。


女の子が個室からでてきて、ドアも開いていれば、並んでいたイギリス人女性達は、
躊躇なしに入ってくる。
まだアジアのおばはんが座っているとは
つゆとも知らずに。

「Oh No!」(嫌っ)
「Oops!」(おっと)
「My goodness!」(あらま)
「Jesus Christ!」(なんてこと)

様々な英語表現を、便器に座り私は学んだ。
活きた英語とはこのことである。


イギリスには公衆トイレがあまりない。

ということは、かなりの我慢を強いられて、
このトイレまで辿り着いていることになる。

よって、放水時間は長い。

放水時間が長くなればなるほど、
ドアを開け放したまま、私が座って用を足している個室への訪問者は増える。申し送りなどしないのだから。


ひとりが「あっ」と驚いて去り、
また次の人がきて「あっ」と驚いて去る。

最高記録は1尿ひとにょうで3人に「ジーザス!」を頂いた。

こちらは、背筋を伸ばし真顔で会釈するしか為すすべはなかった。

ここで、英国淑女に問いたい。


ひとり、個室から出たとて、
中におばはんがいないなんて、

You、思い込みだよ、と。

ダイバーシティが叫ばれる、この時世、
己の常識をまず疑い、
己の常識を打ち壊していただきたい。

おばはんがとり残されていることもある。

昨日と同じ今日はないんだ、と。


日本人がいつもペコペコ謝ると思ったら大間違いである。




…というような、盛大な思い違い、
逆ギレの思い込みが自分でも怖い日記を、
放尿やら便器やらと、パブリックに発しているのはなぜか。

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