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food skole 第4回目のメモ

第4回目の講師は、やさいバス(株)の梅林泰彦さん。
テーマは「野菜は誰かが運んでいる」

このやさいバスはNewspicksのモビエボで知っていた。そのやさいバスの方と直接お話ができるなんて。やさいバスに関しては上記のリンクでチェックしてください。とても素敵な試みです!

ふと春休みに思い立って、食の学び舎「foodskoleフードスコーレ」に参加をしまして、隔週で学んでおります。
*以下、梅林さんの言葉で印象に残ったものを中心にまとめていきます。

物流がなければ、そもそも届かない

美味しいトマトを届けたい。でも、それを「食べる人」に届けるのは誰なのか?

大多数の人はスーパーで野菜を買う。そのスーパーまで運ぶ人がどうしても必要

物流がなければ、届かなければ、結局美味しいのを作っても、意味がない。

配送にかかる日数を知ってますか?

宿題で、事前に自分(あべ)が調べた図。

自主学習_2021年5月23日のノート

梅林さんに見せていただいたルートは、さらに詳しく細分化されていた。畑でお野菜ができてスーパーに届くまで、本当に様々なルートが存在している。ごく一般的なルートは、農協の出荷場へ運び、そこから地域の市場へ運び、中央卸売市場へ運び、物流センターへ運び、物流センターから小売店へ運ぶ。

畑からお店に届くまで、ルートによって、野菜は最低1回、最高で6回もトラックに乗ることになる。そして、日数は、農家が野菜を直接スーパーの物流センターへ運び込んだ場合が最短で1日、あとは平均で4日かかっている。

スーパーで新鮮そうに見える野菜、実は4日前に畑から出発しているのだ。新鮮な野菜、という感覚。9割の野菜が実は違う、という現実。実際に、買い物する時に配送にかかる日数は、誰も気にしていない。棚に並べる店員さんだって、きっと気にしていない。

「時間地図」という概念

講座の中で、梅林さんから非常におもしろい地図を見せていただいた。この地図は、東京からかかる時間で作られた日本地図。つまり、配達でかかる時間をもとにぎゅっと日本地図が変形している。

*調べていくと、「スギウラ時間地図」というものを見つけた。梅林さんが見せてくれた地図とは少し違うけど、概念は同じだと思う。

私たちが見慣れた地図は「距離」でできているが、この地図は「到達時間」でできている。時間だと、北海道、長野の松本よりも早い位置に金沢がある。仙台と宇都宮が同じ位置、そして山形よりも函館や千歳が早い位置にある。大阪、名古屋とほぼ同じ位置に山梨県の大月が来る。東京と福岡はめちゃくちゃ近い。

距離に関係なく物が動く日本。

東京にいると、あらゆるものが食べられる。時間地図で見ると、大都市の近くに産地がありすぎ。「鮮度がいいものを食べたい」という欲求が強く、時間(地図)がぐちゃぐちゃになった。

野菜がトラックに乗るのも、タダじゃない

配送業だって、タダで仕事をしているはずがない。6回もトラックに乗るということは、6回分のトラックの配送料がかかっている、ということ。

配送料金を下げるためには、トラックにとにかく乗るだけ乗せる。10トントラックに野菜がいっぱい。箱の山。上から下までいっぱいに箱を積む。

山積みされたものを一つずつ箱を開けて選別なんてしていられない。そこでできたのがJAの出荷企画。つまり、出荷する際に箱にできるだけたくさん入るように、そして野菜が長持ちするように計画的に収穫して出荷する。

配送業のドライバーさんが、トラックに隙間なく箱を詰める。1回でどれだけの量を運べるかが勝負。荷積み・荷下ろしの時にフォークリフトを使えない。野菜は基本は手積み・手降ろしが基本

物流センターへの入荷は15分刻みで時間が指定されている。その時間に合わせてトラックを物流センターにドッキングし、15分以内で野菜の大量の箱を手降ろししなくてはならない。ドライバーさんの腕次第。

そしてスーパーに並ぶ野菜。きゅうりが1本18円。
6回もトラックに乗って、6回もドライバーさんが重い思いをして箱を手降ろしして、そしてきゅうりが1本18円。

一体、この値段のどのくらいが配送料で、どのくらいが農家の収入なんだろうか?関わっている人がこれだけいるのに、この野菜の値段は適正なのだろうか?本来、もしかしたら「高い」と思っている値段の方が適正なのかもしれない。

今の物流は欲望でできている

なぜこのような仕組みになったのか。複雑な物流を知らずに、価格だけで判断している消費者。いつでも野菜が手に入る、と思っている日本。

スーパーには肉や魚など様々な食材が並ぶ。肉や魚は値段が高くても仕方がないけど、野菜だけは無意識なうちに、値段が決まっている。野菜は安くて当たり前。野菜はいつも棚に並んでいて当たり前。

レタスがない時期に、無理してレタスを作って届ける理不尽さ。自然の流れで言えば今の時期は育たないはずの野菜が、なぜ店には並ぶのか。旬を無視した野菜がスーパーにあるのは当たり前、という感覚は、実はとても異常なこと。

「お客様は、神様です」という概念。お客様の要望にはできるだけ応えようとする。これが欲しい、早く欲しい、新鮮なままで欲しい、安く欲しい。その結果、人の欲望が作り出した、今の物流システム

いや、要望には答えたって、現場はどんどん苦しくなるだけである。そもそも、人手が足りない。配送もギリギリ。このような物流の破綻は目に見えている。物流って言っているのに、実際には物が流れていない

インフラとしての物流を作る

梅林さんの願いは、物流がインフラになること。蛇口の水と同じように、捻ったら水か出てくる仕組み。いつでも誰でも使える、ずっと流れている仕組みを作りたい。野菜バスは、このインフラとしての物流を作る仕組み。

至ってシンプル。水道管を水が回るように、バスのルートを野菜が回る。蛇口を捻る作業を消費者がするだけ。水が出る場所に行って蛇口を捻るように、野菜が届く場所に行って野菜を取り出す。届くのを待つのではなく、取りに行く仕組み。

野菜は届く物ではなく、取りに行くという文化がある国もある。「取りに来る」は物流の人にとっても嬉しいはず。「取りに行く」ことで、物流の負荷を減らせるのかもしれない。

消費者が物流に参画する=農業が変わる。野菜が無理な移動をしなくていい。トラックに6回も乗らなくていい。農家がバスに乗せるだけだから、畑からそのまま、とても新鮮。そして、農家が収穫したい時期に収穫するから、野菜が一番いい状態。普段から美味しい物が買える。ドライバー不足といった業界としての労働人口の問題も解決しちゃう。無理矢理なトラック配送をなくせるのかもしれない。

今、手に取っている野菜が、どういうルートを通ってきたものか。私たちは今一度、考えてみたほうがいいのだと思う。結果として、地域のものを消費した方がいい。ないものを無理やり得ようとするよりも、あるものを食べることが大事なのではないか。

無理なく、美味しく、楽しく。

手塩にかけた野菜がモノのように扱われ、誰が食べているのか分からないものを作ることに疑問を感じて、個送をしている農家さんもいる。

物流が整えば、野菜を売るのは難しくは無い。美味しいと思ったものを売る。季節によって並ぶ野菜が変わる方が自然で日本らしい。日本の四季と産地の旬を知っていて、今の時期一番適正に取れている野菜や果物を知っているかどうか。

旬のものの消費が進めば、産直は進むのかもしれない。旬のものが一番美味しいし安い。野菜の生年月日がついていれば、購買行動が変わるかもしれない。

なんとしても24時間以内に届けなきゃ、ではなく、美味しいものを無理なく届ける仕組み。一緒に楽しく仕事ができる人と物流を作る。それが梅林さんの願い。

ないものはない、と言えるスーパーになって欲しい。一次産業の人たちと関わって、日常的に話を聞く機会があれば「ないものはないよね」が共有できるようになるのでは?

この先、どう野菜を買うか

今回の講座を受けてみて。まず配送業の方々の実情を知れたのが良かったと思いました。時間指定で届く仕組み、翌日には届く仕組み。便利だけれども、その裏ではものすごい人や車が動いていて、どこかで無理をしながら動いているのかも知れないとわかったことと、それを実現させた日本の物流システムの凄さを知ることができました。

その上で、やってみたいのは、こちらです。同じフードスコーレのメンバーさんに、「地産地消チャレンジ」をしている方がいます。

まずは地域でどんな野菜が売られているのかを知ること。そして、自分で取りに行ける場所がどこにあるのかを知ること。

ここでふと。
旅行に行って、その地域の市場でたくさんの食材を見て感動して、という経験をされた方もいると思います。国内外問わず、市場は楽しいその土地特有の食材が並んでいて、「ないものは扱わない」という潔さ。野菜も食材も本来はそういう買い方の方が自然だし、おもしろい。

一方で、ここまで日本の食文化が多様化したことも、スーパーが食材を揃えなくてはならない原因の一つだと思います。和食以外にも洋食・中華・エスニックと本当に様々な種類の食事を普通に楽しんで味わえる。ということは、その食材も多様化が求められている訳です。

もともと日本は食材が豊富でしたが、地域の素晴らしい食材を広めたのも市場の卸売、仲卸の「目利き」があったから、これも日本の文化でもあると思います。だから梅林さんも言っていましたが、卸売市場の機能を活用する(それこそ良い目利きの人がいる市場をしっかり理解する)と、その価値が再認識されるのだと思いました。

最後に。こういうやさいバスのような取り組みが、社会の教科書でも扱われればいいのになぁ、と思いました。絶対解=画一的なサービスはない、でも納得解=そういう事業が生活を支えるかもしれない、という点を扱えたら。物流に対しては大人でもあまりに知らないことが多い気がしました。確かに物流がなかったら今の生活はありえないわけで、その部分に意識を向けることは消費者としてもとても大切だと思いました。

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