阿部圭史

日本維新の会 衆議院兵庫2区支部長(神戸市兵庫区・長田区・北区、西宮市北部)。兵庫との…

阿部圭史

日本維新の会 衆議院兵庫2区支部長(神戸市兵庫区・長田区・北区、西宮市北部)。兵庫との県境にある岡山白陵高校→北海道大学→医師・官僚・国際機関・民間企業などを経験。得意分野は医療・公衆衛生・危機管理・国際政治・安全保障。著書に『感染症の国家戦略 日本の安全保障と危機管理』など。

最近の記事

危機と科学とアート 〜映画『Don’t Look Up』より〜

1. 危機への「認識」と科学映画『Don't Look Up』 危機を認識するためには、科学が必須。 外敵・自然災害・感染症・気候危機・事故など、その脅威がなんであれ、迫り来る脅威の能力や動態といった情報を把握したり、対抗するための手段を研究・開発・実装するためには、科学的知識が必須なのです。 それを面白おかしく描いたのが、Netflixが製作したコメディ映画『Don't Look Up』(2021年)。地球に彗星が衝突して破滅するというテーマです。 科学者が警鐘を

    • 政治家による「危機の認識」

      1. プリペアドネス(準備)の難しさ 「まず『危機がある』と認識をすることから政治課題が始まる。」 最近、私が敬愛する国会議員が言っていた言葉である。 2021年12月半ばまで放送されたドラマ『日本沈没-希望のひと-』が一貫して描いたのは、「プリペアドネス」(危機に向けて準備すること)の難しさだ。 大地震の兆候を検知した偏屈な地震学者・田所博士が唱える「関東沈没説」を暴論だとして、日本政府の政治家や官僚たちが全否定することから物語は始まる。 関東沈没の確率が50%と

      • 我が国の悪弊と国会の可能性 〜記録と検証〜

        1. 危機の記録危機管理において、記録することは重要だ。 危機が発生すると、事態対処行動が始まる。その初動の立ち上げから、「◯月○日×時×分 ●●会議」、「◯月○日×時×分 ●●発布」など、生じた事項を逐一記録していく。 この記録を「クロノロジー」という。 危機が去り、事態対処行動が終了した後は、この「クロノロジー」を基に、その危機管理活動の全体に関する記述が行われる。そして、その危機管理活動の検証が行われる。 2. 当事者の視点と傍観者の客観性小説『日本沈没 第二部

        • 政治は裏方?表方?

          1. 政治は裏方?表方?政治は裏方なのか。表方なのか。 小説『日本沈没』(小松左京著、1973年刊行)を題材に紐解いてみる。 日本列島沈没の危機が目の前に迫り、緒形総理大臣は野党の協力を求めるため、衆院議長公邸で野党四派党首との会談に臨む。そこで、緒形総理は言う。 それに対し、ベテランの野党第三党の渥美党首が言う。 政治は裏方なのか。表方なのか。おそらく、一般的な政治の性質としては、両方とも正解なのだろう。裏方のときもあれば、表方のときもある。 2. 危機の人、平

        危機と科学とアート 〜映画『Don’t Look Up』より〜

          3月11日と小説『日本沈没』

          1. 3月11日3月11日。 その日付が出てきたとき、脈が一気に早くなった。小説『日本沈没』(小松左京著、1973年刊行)を読んだときのことである。 小説では、「日本消滅の日せまる」というニュースが全世界に流れたのが、3月11日という設定になっている。3月11日に、アメリカ測地学会が「アトランティス大陸伝説」になぞらえて緊急談話を発表し、同日パリのAFP通信が全世界に向けて報道した。 実際には時差の関係で日本では3月12日である。しかし、これらの報道を受けて、同日、日本

          3月11日と小説『日本沈没』

          ガンダムSEEDに見るバイオテクノロジー

          1. ナチュラル vs コーディネイター人生で最も影響を与えたアニメ「ガンダムSEED」。 (「ガンダムSEEDに教えてもらったキャリア論」は以下参照) 架空の紀元であるコズミック・イラ(C.E.)という時代に展開されるガンダムSEEDの世界観に一貫しているのは、ナチュラル vs コーディネイターの戦い。 これまでの人類である「ナチュラル」と比べ、バイオテクノロジーによって遺伝子調整が行われた人類「コーディネイター」は、あらかじめ強靭な肉体と優秀な頭脳を持って生まれ、生物

          ガンダムSEEDに見るバイオテクノロジー

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(6) 〜民間・政治篇〜

          1. 民間からの危機管理「危機に強い社会をつくる」ため、公の側面からのアプローチは、国内外で随分経験させていただいた。今度は民間の側面からアプローチし、官民で一体的な危機管理体制を築いていきたい。 【②望むことは何か、③すべきことは何か】 そう思い、WHOでの仕事がひと段落した後、まずは自身のこれまでの経験を本にまとめました。 その後、コンサルティング会社のマッキンゼー社を経て独立。独立した個人として、世界銀行における防災分野の仕事や、政府の外交交渉のサポート、国会議員

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(6) 〜民間・政治篇〜

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(5) 〜官僚・国連篇〜

          1. 官僚 〜「危機管理」という領域〜政府に入るにあたり、官僚の先輩達が飲み会を開いてくれました。 先輩M氏が放ったその言葉によって、道が啓けた気がしました。 初めて、「危機管理」という単語を知った瞬間であり、今でもその居酒屋での場面を鮮明に覚えています。そして、「危機管理をやりたい」と言って厚生労働省に入省しました。 【②望むことは何か】 厚労省に入る人間は、医療・介護・福祉・年金などをやりたいと言って入ってくるのが普通だと思いますが、私は一貫して「危機管理」。その

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(5) 〜官僚・国連篇〜

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(4) 〜震災・医師篇〜

          1. 東日本大震災と「③すべきこと」大学卒業を間近に控えた2011年3月11日、東日本大震災が発生。 元々宮城県生まれの私は、宮城県沿岸部に親戚が多くおり、たまたま震災発生の1週間前にそれらの地を訪れていました。多くの親戚の顔が頭をよぎり、親戚を助けに行かなければ、と強く思いました。 非常食や身の回りの品を買い込み、100L入るリュックと段ボールに詰め込んで、東北道の開通を待ちました。仙台の小学校に通っていた時分の同級生・けんちゃんが埼玉に住んでおり、彼の現在の実家が石

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(4) 〜震災・医師篇〜

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(3) 〜高校・大学篇〜

          1. 高校時代と修学旅行外交や国連といったものに憧れを抱く一方、私が朝から晩まで過ごしていた高校は岡山県の田舎にあり、見える景色は、田んぼと畑、山と川。商店もありません。田舎を地で行く高校生活の最中には、普段の生活で外交官や国連職員などという人種に触れる機会はゼロ。 多くの人と行き交う街中に行くとしても、たまに同級生と岡山市内にでかけたり、山陽本線に乗って姫路や神戸でカラオケをして遊んだり、神戸で予備校の模試を受けるくらいなもの。外交や国連などは、どこか遠くの世界の出来事

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(3) 〜高校・大学篇〜

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(2) 〜アナン・海江田篇〜

          1. コフィ・アナン 元国連事務総長私のキャリアの原点は、小学生の頃にたまたまテレビで見た、国連総会議場の壇上で演説するアナン国連事務総長の姿だったように思います。そもそもそのおじさんが誰なのか知らなかったし、何を語っていたのかも全く理解できなかったことは覚えていますが、その堂々たる姿に憧れを抱きました。 2. 漫画『沈黙の艦隊』中学に入って部活でテニスに熱中するうちに、そんなことはとうに忘れていました。しかし、中学3年生のときに友人から借りた漫画「沈黙の艦隊」(かわぐち

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(2) 〜アナン・海江田篇〜

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(1) 〜ガンダムSEED篇〜

          1. ガンダムSEEDと人生の道(キャリア)人生で最も影響を与えたアニメは?と聞かれたら、迷いなく「ガンダムSEED」と答えます。 ガンダムSEEDシリーズは、以下のように、20年以上にわたって続く伝説的なガンダムシリーズで、「21世紀のファーストガンダム」と言われています。 TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』(2002年) TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2005年) 映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(2024年) T

          ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(1) 〜ガンダムSEED篇〜

          米国CDCの改革〜安全保障・危機管理の重視〜

          CDCをリセットせよ米国の安全保障において重要な位置付けを占めている米国疾病予防管理センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)が、揺れています。 米国の外交・安全保障分野のトップ・シンクタンクの一つである戦略国際問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)は、「健康安全保障強化委員会」を設置し、CDCのあり方について検討を行いました。 そ

          米国CDCの改革〜安全保障・危機管理の重視〜

          「CDC」とは何ぞや

          「CDC」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 「疾病予防管理センター」(Centers for Disease Control and Prevention)という米国の公衆衛生機関を表す略語です。COVID-19パンデミックの中で、ニュースなどでその名前を聞いたことがある方もいると思います。 その名前にあやかってか、日本でも「日本版CDC」というものができるそうです。COVID-19パンデミックでは、3年間で5万人の日本人の命が失われました。その危機対応の中で、良

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          無人島サバイバル

          安全保障・危機管理といった領域に携わっていると、「国とか国際社会といった大層な話の前に、そもそも自分自身の安全を確保する能力ってあるんだっけ?」と自問自答することがあります。 そのための教育訓練として、これまで、国連・国際NGO・軍などのトレーニングに参加してきました。 今回は、究極の状況に自身を置いてみるということで、4泊5日の無人島サバイバルに参加しました。 「Cast Away」というトム・ハンクス主演の無人島サバイバル映画をご覧になったことがある方ならわかる

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          危機の力

          1. Us vs. Them 危機の「機」は、チャンス(機会)の「機」。 政治リスクコンサルティングファームのユーラシアグループ代表、イアン・ブレマー氏は、その新著『The Power of Crisis』(邦訳『危機の地政学』)で、我々の世界が現在直面している課題を克服するためには、危機が必要であると述べています。 現在、我々の世界は、国際政治に大きな影響を与える以下の2つの構造的課題に喘いでいます。 ①米国内の政治的機能不全(US domestic dysfunct

          危機の力