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ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(5) 〜官僚・国連篇〜


1. 官僚 〜「危機管理」という領域〜

政府に入るにあたり、官僚の先輩達が飲み会を開いてくれました。

君のやりたいと言っているのは、『危機管理』と言うんだよ。

先輩M氏より

先輩M氏が放ったその言葉によって、道が啓けた気がしました。

初めて、「危機管理」という単語を知った瞬間であり、今でもその居酒屋での場面を鮮明に覚えています。そして、「危機管理をやりたい」と言って厚生労働省に入省しました。
【②望むことは何か】

厚労省に入る人間は、医療・介護・福祉・年金などをやりたいと言って入ってくるのが普通だと思いますが、私は一貫して「危機管理」。その中でも特に、「感染症危機管理」をやりたいと。なぜなら、私が元々影響を受けたSARSがまさにそれだし、内政上の対応だけでなく、元々興味を持っていた国際政治も大きく影響するからです。

ちなみに、官僚になるにあたって初めて買った本は、「危機管理 (公務員研修双書)」(佐々淳行著・1997年刊行)です。

2. 政策実務と「①できること」

厚生労働省では、内政と外政の両方に携わるべく、医療政策(診療報酬改定やワクチン政策など)に加え、感染症危機管理、テロ対策、邦人保護、諸外国や国際機関との外交など、様々な政策実務に従事しました。

これらの政策実務を通じ、霞ヶ関の省庁に官僚として勤務する同僚・先輩・後輩から多くのご指導をいただき、永田町の国会議員の皆様からも薫陶を頂戴し、「①できることは何か」を徐々に身に付けていくことができました。
【①できることは何か】

3. 国士官僚・自衛官からの教え

最も大きな薫陶をいただいた先輩の一人は、外務省のI氏。常に明るく情熱的で、周囲を楽しい気分にさせて下さる気さくな先輩。一方で、天皇陛下の通訳を務めるにあたり、少しでも時間があれば英語を聞き、どんなに遅くとも夜寝る前に30分で良いからシャドーイングをするという英語習得法もご教授下さるなど、ストイックな一面も持ち合わせており、「③すべきことは何か」を貫くその姿勢は、人としてもプロフェッショナルとしても私の指針でありました。
(その後、若くして急逝されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。)
【③すべきことは何か】

また、2014年、エボラ出血熱アウトブレイクへの危機対応の最中、厚生労働省の主担当として、とある自衛隊基地で邦人保護の仕事をした際、当時の航空自衛隊副司令からかけていただいた言葉も、私の指針となっています。

眼(まなこ)は世界に。心は祖国に。

航空自衛隊副司令より

常に世界の国際公益を見据えつつ、自国の国益のために力を尽くすべきであると説いています。
【③すべきことは何か】

エボラ出血熱アウトブレイクに対する危機対応の一環で現地へ
外交の現場から

4. 国際政治・安全保障の研究

政府で勤務する中、外政部分に関する知見を深める必要性を感じ、米国の首都・ワシントンDCにあるジョージタウン大学に留学。国際政治・安全保障についての研究に従事しました。

特に、大量破壊兵器に対する政策や、紛争調停、インテリジェンスなどについての研究を深めました。その中で、紛争止まぬ国際社会で、日本外交として紛争調停(Peace Mediation)を積極的に実施する重要性を感じると同時に、対外情報機関(Foreign Intelligence Agency)を設立する必要性も実感しました。
【②望むことは何か】

米国議会

安全保障を研究する中で、恩師や軍人の同級生から、以下の言葉を言われました。

究極の「危機管理」は、紛争地帯にあり。

恩師や軍人の同級生より

その言葉を受け、①できることは何か、②望むことは何か、③すべきことは何かの3要素が収斂した「日本と国際社会を、危機に強い平和な社会にしたい」という志を研ぎ澄ます必要があると感じ、学生時代に訪れた世界保健機関(WHO)の門を叩き、中東・アフリカの紛争地帯における危機対応を専門に担う部門に所属することとなりました。
【①できることは何か、②望むことは何か、③すべきことは何か】

5. 世界保健機関(WHO)〜紛争対応とパンデミック〜

WHOでは、紛争が起こっている脆弱国家における危機対応オペレーションの支援や、大量破壊兵器に対する政策の立案のほか、上司の副官として国連安全保障理事会に出席したり、国連安全保障理事会におけるテドロス事務局長のスピーチ原稿を執筆したりしました。
(この最中に、繰り返し「ガンダムSEED」を見返し、「沈黙の艦隊」を読み返しました)

そのような状況下、2020年1月にCOVID-19パンデミックが発生。同月から、WHO本部のCOVID-19対策本部に所属し、参謀として政策立案を行いつつ、各国の危機対応の調整を担いました。

WHO COVID-19緊急委員会

6. 経済安全保障と官民連携

パンデミックの最中に感じたのは、危機管理政策における民間企業の重要性。民間企業がつくるワクチンを初めとする医薬品がなければ、各国政府の危機対応は機能しません。民間企業は、人類の脅威に対抗する武器を作っているのです。それは、我が国の自衛隊も同様であり、民間企業が潜水艦や航空機を作ってくれなければ、機能しないのです。

昨今、経済安全保障や、防衛産業の振興、医薬品産業の振興などがしきり叫ばれているのは、国家の危機管理政策のラストマイルは民間企業が担っているからです。

国民の生命と財産を守るためには、官民の連携が不可欠なのです。

ガンダムSEEDが教えてくれたキャリア論(6)


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