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三菱電機の中期経営計画の紐解き8

前回の記事はこちら。

三菱電機の中期経営計画はこちら。

ということで、続きを書いていきます。今日が最終回です。

P15)自動車機器事業
電動パワートレインシステムを含めた幅広い高効率機器群および高度 制御技術の連携・統合による、環境配慮、安心・安全、快適性の実現
■環境負荷低減・燃費改善 ・多様な高効率機器群のグローバル供給と電動パワートレインシステムの提供により、燃費改善と環境負荷低減に貢献
■運転時の快適性向上 ・エンタメ・ナビ・コネクティビティ・ドライバー支援機能等を統合した次世代情報機器により、更なる快適性向上に貢献
■安全で快適な自動運転の実現 ・既存製品やシステム制御技術の連携・統合、高度運転支援を視野に入れた通信技術・インフラ事業との連携強化により、 自動運転化社会の実現に貢献

割愛します。

P16、17、18も割愛です。

P19) 6. 技術シナジー・事業シナジー
- 安全・快適な自動運転化社会実現への貢献 -

解説
だんだんと生々しい事業の話から、少しテクノロジーよりのお話に変わってきました。個人的にはこういう未来の話の方が好きだったりします(現実のビジネスでは目先も未来も両睨みが重要ですが)。

用語の解説を行います。

準天頂衛星やITS(通信)
準天というのは赤道より少し上の位置で地球の周りを回ることです。そういう人工衛星を飛ばすと日本上空の滞在時間が長いのでGPSを補完しやすくなるようです。それに加えて、日本の真上を飛ぶので、高層ビルなどの高い建物の狭間でも真上から信号を飛ばせるので網羅性が高いとういう特長があります。その結果としてかなり高精度にセンチメートル単位のコントロールが可能になります。

この特長をいかしたのがITSです。Intelligent Transport Systemsの略で、簡単に言えばカーナビの精度がものすごく細かくできる訳です。

高精度ロケータ
もろもろ入っています。ここがまとめ役です。

V2X
Vehicle-to-everythingの略です。あらゆるものと車を接続する機器です。

DSRC
路側機と車載器間での狭い範囲(数m~30m程度)を対象としています。 5.8GHz帯を利用した双方向の無線通信方式で、自動車と道路間での 双方向の情報のやりとりが可能です。さきほどのITSに使用される通信です。

ECU
三菱電機じゃないですが、引用します。

Electronic Control Unitです。簡単にいえば、車の中の電子系で動く部分を制御するコンピュータのことです。車線維持システム、車間距離制御システムの処理などですね。

ADAS
Advanced Driver-Assistance Systemsの略です。日本語は先進運転支援システム。自動車自体が周囲の情報を把握し、ドライバーに表示・警告を行ったり、ドライバーに代わって自動車を制御するなどの運転を支援する機能の総称です。

EPS用デバイス
電動パワーステアリングのことです。


いっぱい出てきました・・・。要するに自動運転技術なんですね。自動運転の流れとそれに対応する資料中にある言葉を以下に示しておきます。

1車の絶対的な位置を把握する(東経135°的な位置です)
→GPS衛星や準天頂衛星

2車の位置を地図に載せる(東経135°的な位置情報を地図にプロットする)
→ITS

3車の相対的な位置を把握する(他の車との距離です。衝突防止とかに必要)
→刻々と変化するので5GスピードにてV2X機器やETC2.0を活用。
→DSRC、カメラ、センサー類が他の車を把握

4上記の1〜3の情報をインプットして車の動かし方を決める
→ECU(ADAS)というコンピューターで処理。

5命令をうけて動く
EPS用デバイス、モーター、インバータが動く。

こんな感じです。

右に行きます。

高信頼低遅延セルラーV2X
V2Xはさっき出てきました。車をインターネットにつなぐ仕組みのことです。セルラーは基地局を使った通信方式ということです。要は携帯電話と同じ仕組みです。当然ながら自動運転という刻々と状況が変わる中では、携帯電話のような無線通信をしつつも、その通信が途切れない(=高信頼、冗長性とも言います)、遅れが少ない(低遅延)でないといけません。なので、高信頼低遅延セルラーV2Xを実験している訳です。

パートナー会社
右下は海外含めてパートナー企業がでていますね。自動運転や高精度な地図機能の技術をもった会社です。名前くらいは知っておいてもいいかもしれません。ここでは会社の中身までは追いません。ここをやりだすと、自動車業界全体の話にまで発展してしまいます(またいつか)。

P20) 6. 技術シナジー・事業シナジー
 -当社AI技術「Maisart」の更なる活用拡大-

解説
三菱電機のAIのブランド名です。三菱電機がAIでしようとしてること、それはインフラ系に力を入れていると思われます。資料は異常兆候検知システムということで、プラント系の異常を把握するために使用するとあります。もう一つは、画像式水位計測。洪水時でも水位観測と情報提供ができるとあります。AIの使い方ひとつみても会社の得意な分野が見えてきますね。


P21)7. 持続的成長に向けて
- 研究開発 - 既存事業の徹底強化と変革に向けた開発とともに、技術シナジー・事業シナジーによる更なる価値の創出や、未来技術の開発を短期・中期・長期の視点でバランスよく推進

解説
ここはそのまんまですね。あまりお話することはないです。個人的には右下の大気中の腐食性ガスによる 金属部品の腐食進行度を検知するプリント基板に実装可能な 「金属腐食センサー」が気になります。これは本当ならおもしろいですね。

工場にもいろいろありますが、例えば特殊な薬品を使う工場、塗料や印刷などに関連する工場では、空気が通常の状態とは異なる場合があり腐食性ガスが発生したりします。単純に言えば腐食性ガスは、機械を錆びさせたり溶かしたりしてしまう可能性があります。

なのでそうした工場では通常の空気の場所よりも早く機械を入れ替えたりメンテナンスしたりしないといけません。特にプリント基板は繊細な配線がなされており、腐食が始まれば短期間で故障するリスクがあり、かつ機械を動かす指揮系統の役割を果たす重要な部品です。なので、故障する前に予兆を見つけて交換したい部品です。

しかし、先ほどもお伝えした通り非常に細かい配線で成り立っています。かつ機械の内側に取り付けてあります。簡単に人が目視で把握できるものではないです。またプリント基板は至る所にありますので、いちいちそれを見るためのカメラを取り付けておくのは費用対効果の面でも手間の面でも大変です。

なので、プリント基板そのものに腐食度合いを把握できるセンサーがあるのはなかなか面白いアイデアですし、三菱電機の強みを活かせそうなセンサーと言えると思います。楽しみですね。

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ふぅー、疲れました。まだ資料はありますが、ここで終えたいと思います。

知的財産とキャピタル・アロケーションについては、別途どこかでやりたいと思います。今回は事業方針とかテクノロジーの理解というところまでで留めたいと思います。

私も多少なりとも調べた部分はありましたが、ぱっと調べて意味を把握できるとか、だいたいの言っていることは理解できるようになれば、結構見える世界は変わると思います。なので、ぜひ少しずつでもエレクトロニクスの見識を広めてみてはいかがでしょうか?

ソフトウェアの時代であることは間違いないです。そして、みんなソフトの重要性は理解していると思います。なので、みんなソフトを一生懸命学びます。だからこそ、一歩差をつける意味においては、今回のハード的内容は意味があるかな、と思っています。

ながきにわたり、ありがとうございました。

中期経営計画はこれにて終了です。

ということで、また。

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