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抽象化された形,その中身 -ススム・カミジョウ個展@MAKI Gallery

 ある休日の午後、@天王洲アイル。

 ススム・カミジョウ個展「帰って来たら When You Come Home」(-2024/06/08)@MAKI Gallery(天王洲, 東京


1975年長野県生まれのススム・カミジョウは、16歳でアメリカに渡り、2000年にオレゴン大学を卒業した後、2002年にワシントン大学にて美術学修士を取得。現在はブルックリンを拠点に活動しています。

カミジョウは動物や人の顔など身近なモチーフを色や形の歪みを通して抽象化する表現を追求しており、2014年からプードルのドローイングおよびペインティングシリーズを精力的に制作しています。

彼の制作の伴侶とも言えるプードルの造形表現は年々進化し続け、ますます抽象化するとともに、様々な構図、色彩、背景、パターンとの組み合わせによって、作家特有の視覚的言語を築き上げています。また、最近の作品に鳥や魚、そして猫といった新たなモチーフを取り入れている様子から、作風が成熟しつつも、新たな挑戦へと踏み出す作家の積極的な姿勢が窺えます。

同上

抽象化で付与される、あたたかさ

 ホワイトキューブを贅沢に使った展示空間は、鑑賞用に椅子も用意されていて、心地よい。

 プードルは写実的に描いてもかわいらしいと思うけれど、解像度を下げて抽象化され、一本の線に収れんされていくうちに、その線と色塗られた丸みのなかに、かわいらしさが内包されていく印象をうけた。

MAKI Galleryはこの度、ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、ススム・カミジョウの弊社での3年ぶりとなる個展「帰って来たら When You Come Home」を天王洲ギャラリーにて開催いたします。2014年からプードルをモチーフに取り入れ始めたカミジョウは、プードルを起点としながらペインティングにおける形、色彩、構図、質感のあり方を追求し続けています。

これまでの作品は背景に多くのネガティブスペースを残しながら屋外空間にプードルを描いてきたのに対し、本展では画面をいくつかに分割して描かれた室内空間にモチーフが配置され、背景にこれまで以上に多様な色彩や要素―鳥、猫、魚など―を取り入れています。

細部まで描くことを通して自身の奥深くに内在する心理、欲求と交わり、自分が本当に描きたいと思う絵画と向き合う機会を作り出し、作家としてのあり方や癖を打破しようとするカミジョウの姿勢が現れています。カミジョウが自分との深い対話を通じて生み出した新作の数々をどうぞ会場にてご高覧ください。

同上

新たなモチーフたちが成す世界

 抽象化されているからこそ、観る者を疲れさせない心地よさもあって、そのニュアンスのある色彩からも、ふと足をとめて眺めてしまう魅力があった。選ばれた一本の線が囲む形は、造形としてまた美しいので、観ている愉しさもある。

 展覧会タイトル、「帰って来たら When You Come Home」
 アートと暮らすということは、もしかして、このようなことだろうか。



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