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青野千穂 作品展[柔らかなカタチ]@銀座 蔦屋書店(-11/10)

 青野千穂 作品展「柔らかなカタチ」@銀座 蔦屋書店10/14 - 11/10。この展覧会案内を見て興味を惹かれた。

 理由は、作品の素材だ。

 実際の作品。

 表面は布地で、中には綿が入って、という先入観を見事に裏切って「えっ」となる。発想の理由が知りたくなる。


ぐにゃりと形を変えそうな

 今でも動きそうな、作品たち。

青野千穂は、粘性のある流動体となった有機物が支持体を侵食していくかたちを、陶を素材として表現するアーティストです。作品の表面に網目や動植物の模様をマットに描くことで、陶はまるで布のような質感を獲得し、硬さ、重さから解放され、何でもない不思議な存在感を湛えています。
粘性のある流動体に心を惹かれるようになったのは、幼少期に親戚総出で行われた餅つきの体験がきっかけといいます。それから、そのような形態を持つ生物、イソギンチャクやサンゴ、微生物などに興味がわき、有機的なかたちへの関心が高まっていったと言います。粘土で造形する陶という素材と、かねてからの関心が出会い、彼女独自の表現方法が生まれました。現在はオーストリア、リンツにて制作を行っている青野。作品に描かれる模様にその影響を垣間見ることができます。モチーフは、流動体より連想される水紋からヒントを得た網目模様から、ヨーロッパの古い部屋を訪ねたときに目にする壁紙のような文様、連続した植物や動物の文様へと変化が見られます。生活と芸術を一致させることを主張した1880年代の「アーツ・アンド・クラフツ」運動によって、ヨーロッパの人々の生活に根付いたデザインが、彼女にインスピレーションを与えています。(後略)

【展示】青野千穂 作品展「柔らかなカタチ」 より

 餅つきの体験。それがが原点となり、広げて広げて、このようなオリジナリティを生み出したのだなと知る。作品がいっそう、弾力をもったものに見えてくる。

 先ほどの引用の続き。

陶という素材から解き放たれた美しい有機物が粘り、流れ、侵食する。奔放にかたちを変える青野の作品は鑑賞者に動きを感じさせます。例えば、オーストリアでよく見かけるというアコーディオンの形状にインスパイアされて制作した「とある楽器」のように、有機物が既存の無機物に侵食するあり様を表した作品では、抗い難いものに対する抵抗や感情、湧き出す生物的エネルギー、変化と順応を想起させます。
本展では、オーストリアに渡る前の2003年から23年までの作品、20点以上が展示されます。

同上

境界線はどこにあるのか

 陶で創作された、というのは、例えば次の作品を観れば、なるほどと思うけれど、

 このようにして並んだ作品たちを観ると、どこまでが硬く、どこまでが柔らかさなのだろうとか、もともと柔らかかったものが、固まってやがて硬くなっていく変化だとかを考えることになる。

 考えているうちに、境界線ということに行きついたりする。

 視覚的な見た目と、実際の素材の大きすぎるギャップによって、ぐらぐらするアート体験、については、同じく銀座 蔦屋書店で展示されていた、浅香弘能[KASHOUMON]も印象に残っている。

 もちろん作品に触れることは許されず、また、近寄ってじっと観れば、たしかに硬い陶によるものだということはわかるのだけど。

 それでも、1作品くらい、本当に柔らかな素材のものが紛れ込んでいるのではないかと思わせるような、静の中の動がみなぎってくる作品たちだ。



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