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【瀬戸芸2022 秋】男木島(おぎじま)アート作品を巡る[前編]

 瀬戸芸、秋の部(11/6まで)。よく晴れた朝、高松港からフェリーで40分の男木島(おぎじま)に渡った。

高松港→女木島まで20分→男木島まで同じく20分

 静かな砂浜と、急な坂道を登り切ったあとの海の景色が美しい男木島。本稿では、瀬戸芸のアート作品を紹介していく(すべては周りきれていないので、続きは10月下旬に再訪してから)。

■男木島の魂 ジャウメ・プレンサ

 まず、港の案内所そのものが作品だ。

男木島の魂 ジャウメ・プレンサ

夜には空に向かって光を投射する光景が広がる
島を訪れた人を迎え入れる半透明の空間。屋根に多様な文字が配され、日中はその影が地面に映る。

瀬戸内国際芸術祭2022作品 より

 文字のシルエットが旅人になにかを投げかけ、知的な問いかけをもらった気分になる。そして屋根の狭間から望む空と海とが本当に美しい。


■タコツボル TEAM 男気

 しっとりとした雰囲気の「男木島の魂」の隣に、突如として出現するのが、このアートだ。TEAM 男気は「ちーむ おぎ」と読む。なるほど。

タコツボル TEAM 男気

遊具を空地に設置し、子どもの遊び場に
島の伝統であるタコ漁に使うタコ壺をモチーフとした遊具を制作し、港そばの空地に設置。この島には少ない子どもたちのための居場所、遊び場として解放する。芸術祭以来、男木島には移住者が増えつつあり、休校だった学校も再開した。そこで、子どもたちの成長を願い、未来に向けたプロジェクトを展開する。

瀬戸内国際芸術祭2022 作品 より

 瀬戸芸の魅力でもある、地元の伝統×アート、という文脈に則るだけでなく、さらに島の子どもたちの居場所にしてしまおうという、実用も見越した貪欲な作品なのだった。

このインパクトで「男木島といえばタコ漁」はインプットされた
ツボの中にはもちろん、タコ。キッチュさも期待通り

男木港から「歩く方舟」目指して

 男木島は何度か訪れているのだけど、今回は港から少し離れた場所にある「歩く方舟」(山口啓介)をじっくりと鑑賞したいと思っていた。屋外アート作品を鑑賞しながら、「歩く方舟」を目指していく。

男木島港

■漣の家 眞壁陸二

 海を右手に見ながら、ときに集落の中を歩いていくと、やがて視界が開けていく。目の前に現れるのがこの家だ。

漣の家 眞壁陸二

ワークショップで完成させる人びとの「多様性」を示す壁画
倉庫の壁面に、さまざまな色に塗られたアクリル板を重ねて貼っていく。芸術祭会期中、島の住民や来場者のそれぞれが感じる「空と海の色」の板をつくるワークショップを数回行い、作品は徐々に増殖し、変化していく。

瀬戸内国際芸術祭2022 作品 より
「瀬戸芸デジパス」でスタンプを押す
「空と海の色」のアクリル板は、観ていて飽きない
ちょうどいい場所に設置されたベンチで、作品と風景を鑑賞

■歩く方舟 山口啓介

 「漣の家」から先は、海沿いの道となる。

 潮の引いた入り江。遠くに作品が見える。道路でなく、入り江を歩くことにした。磯の香りが強くなる。

 それにしても、この、澄んだ青色。瀬戸内を訪れると、こんなにたくさんの種類の青色があったのだと気づかされる。

 「歩く箱舟」には、やはり、ここにずっと立っていたかのような不思議感と、周囲の風景との調和があった。来てよかったと思う。

歩く方舟 山口啓介

海や空に溶け込むような青と白の立体作品
旧約聖書のノアの方舟に想を得た立体作品を堤防に展示。白と青に着色した4つの山を持つ方舟が、海を渡ろうと歩くさまを視覚化する。
実施設計=林幸稔(VAKA)

瀬戸内国際芸術祭2022 作品 より


■No.105 ワン・テユ(王德瑜)

 「漣の家」まで戻り、急な上り坂を進んだ先にあるインスタレーション作品。空気で膨らませた巨大な風船のような物体。形が常に変わるこれを、作家は海に見立てているという。

≪夏公開≫
空間における人間の存在の在り方と、人間による空間への介入とその変化をテーマにインスタレーション作品を制作。従来の視覚優先のアートの在り方から離れ、観客に開かれた作品として、人間の直感的な感覚と意識を呼び戻そうとしている。

瀬戸内国際芸術祭2022 作品 より

 靴を脱いで、中に入る。

「海の底」でしばし佇んだ
見上げると、こんな感じ

 海底から「波」の様子を眺めると、ときにそれは大きく拡張し、ときに急に縮小してきて、まるで押しつぶされるような恐怖も感じる。そんな自分の「素」の反応も興味深い。

 こんなふうに、いきなりなにかの状況に巻き込まれる、という作品は、脳を心地よく刺激してくれる。

こちらは、下から覗くタイプ。向かって右には階段があり、上から見下ろすこともできる
海を臨む

■青空を夢見て レジーナ・シルベイラ

 集落の中には、学校の体育館の壁面を使った作品も。

体育館に出現した刺繍のような雲と空
学校の体育館の正面に刺繍のように見える雲と空が出現。瀬戸内独特の青い空と光のイメージだ。
助成=ブラジル大使館
※敷地内への立ち入りはご遠慮ください。

瀬戸内国際芸術祭2022 作品 より

■瀬戸で舞う 川島猛とドリームフレンズ

 一度港に戻り、そこから坂を上って、この古民家へ。

深呼吸ができる瀬戸内の海で心を自由に踊らせる
作家がニューヨークで制作した「Blue and White」シリーズのパネルを古民家に展示。日々の閉塞感を離れ、作品のなかで当たり前だった自由な日常を感じてほしい。

瀬戸内国際芸術祭2022 作品 より
瀬戸で舞う 川島猛とドリームフレンズ


坂道に息を切らしつつ、作品を堪能

 男木島は本当に坂が多い。そして坂道の途中には民家が軒を連ねる。案内板を頼りに、ときには迷いながら、迷路のような坂道を上がって下がって、作品に辿り着くのも、この島の魅力だ。

 わたしは1作品の鑑賞時間がかなり長いこと、また体力の問題もあって、男木島は2回に分けることにした。次に訪れるときも、こんな快晴であることを祈って!

↓ 瀬戸内国際芸術祭2022についての記事は、下記にまとめています。


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