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役作りは「内側派」か「外側派」か。

昨日、舞台に立つ覚悟の話を書いたんですけど、ちょっと強めの言葉もあって、読み返して「あぁ」と思いました。基本的には冷めた人間というか、感情的になる事が無いと言われる人間なんですけど、サッカーの時と芝居の時は凄い機嫌悪くなったり気後れする事なく意見を言ったりして、本気で向き合おうとするんですよ。好きなんでしょうねサッカーと芝居が。

芝居の話をしてると、役作りする時に「内側」から作るか「外側」から作るか。みたいな話をする事があります。僕は断然「内側派」でしたけど、やった事ないし勉強したいと思って「外側」を固めていく演出家の方の舞台に出演させて頂いたことがあります。この時は、狙い通りに「外側」からどんどん役作りしていってその「外側」に「内面」を入れ込んでいく感覚でした。動きが先にあって後から理由付けしていく感覚です。

結果的に思ったのはどっちでもいいって事でした。おそらく辿り着く場所は同じです。どうせどこかで混じり合います。やりやすい方でいいと思うし、演出家が自分とは違う方だからって敬遠する事も無いと思います。僕は「内面」をどんどん掘り進めて知っていって作っていって、その時どうしたいかを感じたり思ったりするのが好きなので「内側派」でしたが、何度も何度も「外側」を繰り返していくと無意識に動ける瞬間がやってきます。その意識を排除した無意識の瞬間ほど、役者を離れて役を生きてる実感があった時はありませんでした。面白いと思って大切に丁寧に意識的に役を演じる事で役者が考えなきゃいけない舞台上の事をたくさん排除する事が出来ました。これはやってみないと気付けなかった。いい体験でした。

だからと言って「内面」からがダメという事でもなくて、「内側派」は演出されたものにすぐに役で反応できる強みがあります。僕は演出されても一回しっかり考えたい人間でしたが、落とし込むのにそれほどの時間を要さないって事です。演出と演技の間に摩擦が少ないと芝居が崩れにくいし、よほど演出家が馬鹿じゃない限りは理由付けはやりやすいです。

最初の稽古の時に絶対にセリフを覚えてくる人と、絶対に覚えてこない人がいて、そこも面白い所なんですよね。人それぞれスタイルがあって、やりやすさがあって安心感もあって。僕はたまには自分のスタイルじゃないやり方でやってみたいと思うので、完全ノープランで行く事もあれば、いくつも決めていく事もあるし、セリフを覚えていく事も覚えていかない事もありました。芝居に正解は無いけど、いくつも正解はあるし、作者の思いの込められ方も無視していいと思います。ふざけたり、手を抜いたりじゃなく、本気で役と向き合って作品と向き合って、その中で感じた答えは信ずるに値するし、演ずるに値すると思います。だから舞台で役者は演じるし、演出家は演出する。作者の考えだけが正解なら演劇は邪魔でしかないしやらない方が良い。そうじゃないから面白いし、見る価値がある。

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