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短歌作品  足のない虹 (10首)


足のない虹
   生田亜々子


橙色ののうぜんかずらゆるやかな風にも揺れて眼の奥を射る


花びらの影は薄くて唐突にわからなくなる悲しみのこと


思い出のように明るい草むらに紙飛行機のふわりと降りる


現し世を暮らす体に水分が足りない 一気に飲み干した水


選ばれたことも選んだこともあり土鳩静かに鳴いている午後


耐えているように見えると言われての帰り それぞれ揺れる茱萸の実


光りつつ夕雨は降り口にせぬままの思いが消え去ってゆく


雨あがり少し視線を上げながらまた戻しては通りを渡る


蟻の列 乱さないよう踏み越えて見上げた空の足のない虹


最後まで残ったものを信じつつ庭に埋めるアボカドの種


初出:第38回熊本県民文芸賞作品集2016年 短歌部門1席

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この連作は生田亜々子第一歌集「戻れない旅」に収録されています。


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