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DAY 21,22:「誕生の夜」 "A NIGHT AT BIRDLAND" ART BLAKEY WITH CLIFFORD JORDAN,LOU DONALDSON, HORACE SILVER,CURLY RUSSELL Blue note 1521,1522-volume 1,2

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もし。




タイムマシンがあったとしたら。

いつの時代の、どこに行きたいだろうか。



過去の自分に会って、
自分の未来を変えたいと思うだろうか。



デロリアンに乗って、
スポーツ年鑑を過去の自分に渡すだろうか。



渡すかな。渡すなあ、たぶん。



一回はビフみたいに暮らしてみたいもんな…。

って、書いたのが見つかったら、
妻に怒られそう。



じゃ、未来に行きたいと思うだろうか。
それは、少し怖い気がする。

変なことになってたらどうしよう。


未来は、わからないから面白い気がする。
未来は見なくていいや。




起こってしまったことは、変えられない。
これから起こることは、わからない。


だから、どっちも考えるだけ不毛な気がするが、
現実の僕らは過去のことを後悔してばっかだし、
起こってもいない未来に対して、
期待したり、不安を抱いたりする。


まったく、人間はやっかいな
考え方をする生き物だとつくづく思う。



仕事を休んで思ったことは、
できるだけ「今」をより良く生きたい、
それだけである。




適応障害が改善するかどうかなんてわからない。
だいいち復職しようとしてるし。
じゃあ転職しなきゃよかったのか、
なんて考えても何年も前には戻れないし。



どんどん「今」は「過去」になっていく。
そして先の「今」が未来だ。
だから、この「今」をどう過ごすかに
心血を注ぐのが一番いい気がする。


どんなふうに「今」を積み上げていくのか、
それがこれからの私の課題である。


未来に何かを残すことが
できるかどうかわからないが、
過去には残るものがある。

人間関係や、家族関係もそうだし、
モノでいえば、いろんなものがある。
今手元にある数々のレコードも、
そのうちの一つだ。

過去に素晴らしい「今」を残してくれた
先人達のおかげで、今では誰もが
それに触れることができるようになった。


本当にありがたいことで、
残してくれた先人達には感謝しきりである。



もし。


私が一回だけ、レコードに残された、
過去のライブに行けるとしたら。


どのライブに行きたいか、と聞かれたら、
間髪入れずに、
間違いなく、こう答えるだろう。


1954年、2月21日の
バードランドの夜に行きたい、と。


ブロードウェイの52丁目と、
53丁目の間のブロックの真ん中にある
「ジャズ・コーナー・オブ・ザ・ワールド」。


20時に入り口のドアが開く。
カーペット敷きの階段を降りて、
切符売り場で75セントの入場料を払う。
そこから6段降りれば、
もうバードランドの店内。
できればピー・ウィー・マーケットの出迎えを
受けてみたいもんだ。


どこに陣取ったらいいだろうか。
バンドの真正面のテーブル席か。
それとも酒を飲みたいからバーの前か。

考えたあげく、
やっぱり、ビル・クロウのように、
バーとバンドスタンドの左端の間に仕切られた
「外野席」で観たいと思うんだろうな。

そして各ジャズメンの
一挙一投足を見逃すまいと、
思い切り、血眼で、かじりつくに違いない。

きっと、ピー・ウィー・マーケットの、
あの聴き馴染みのある甲高い声の、
あのアナウンスが始まっただけで、


私は泣く。


間違いなく泣く。



そして「SPLIT KICK」が始まる。
私は泣きながら、それでも目を大きく見開いて、
それでもやっぱり泣きながら、聴くだろう。


「ONCE IN A WHILE」の
クリフォード・ブラウンのトランペットでは、
号泣するだろう。


「QUICKSILVER」では踊りながら、
笑い泣きするだろう。


「A NIGHT IN TUNISIA」では
ドラムからのベース、ピアノ、
そして2管の奏でるテーマに感動して、
また泣くだろう。


「MAYREH」では私は拳を固く握り、
強く小さく振って、リズムを取るだろう。
やっぱり泣いている。


「WEE-DOT」ではナイアガラ大瀑布と呼ばれた
ドラムの響きを体全体で浴びながら、
泣くだろう。


「IF I HAD YOU」では
ルー・ドナルドソンの音色に酔いしれて、
泣くだろう。


「NOW’S THE TIME」では
カーリー・ラッセルのベースに合わせて
体を小刻みに揺らして、踊るだろう。
もちろん泣きながら。


「CONFIRMATION」では名残惜しさに、
そして、最後の
「LULLABY OF BIRDLAND」
が終わったあと、


まだ終わって欲しくないと、泣くだろう。



…結局泣き通しである。
大好きで大好きで
たまらないレコードなのに、
やっぱり陳腐な表現しかできない、
自分に呆れてしまう。



でもこれからも、私はこのレコードに
針を落とし続けるだろう。



このライブ盤は、産声から始まる、
人生の喜怒哀楽が詰まっているような、
そんなレコードだ。



少なくとも、私にとっては。



今日もピー・ウィー・マーケットが
アナウンスを始めて、


「 SPLIT KICK」が始まる。


私の「今」も、始まっていく。



ここまでお読みくださり、
ありがとうございます。

noteの時系列は、現在とリンクしてません。
なので若干の違和感がある場合もあるかも
しれませんが、どうかご容赦ください。

今後も、
あなたのちょっとした読み物に、
私のnoteが加われば、
とても嬉しいです。

今日があなたにとって
いい、いちにちでありますように。

それでは、また、あした。7時に。

アイ

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