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DAY 77:「突然の知らせ」"BLUE TRAIN" john coltrane blue note 1577

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いろいろあって、異動することになった。

先日、突然、仕事中に上司から声をかけられ、

「人事と面談をするので、
 会議室まで来るように」

と、声をかけられた。

突然の呼び出し。
まさに"MOMENT'S NOTICE"。

頭の中で、この最高に格好いい曲が流れ始めた。
が、
その曲はすぐに止み、
代わりに不安がたくさん出てきた。

人事との話し合いとは、いったい何ぞや。

何か、私の低い評価について
話されるのではないか。

充分に専門職としての職責を
果たしていないことについて、
お叱りを受けるのではないか。

そうなると、もうこの職場に
私を置いておくわけにはいかないと
判断されるのではないか…

え?まさか解雇?クビですか私?

クビか…まあ復職してから、
実際半年近く、通常業務に戻れていないからな…
クビなのか…次の仕事は何にしようかな…
もうこの職種での仕事は懲り懲りだな…
どうしよう…妻になんて言えば…
妻にも働いてもらうしかないか…
無職か…ついに私も無職…
子どもたちよ…ごめんよ…とうちゃんクビだよ…
仕事すぐ探すから許してな…

その日の昼休みは求人情報を見て過ごした。

抗不安薬も飲んだ。

午後になると、気もそぞろである。
簡単な作業にも身が入らない。

だってクビなんだもの。
これから肩叩きにあうというのに、
どうして仕事なんかしてられようか。

ついに人事との面談の時間がやってきた。

足取りは重い。そりゃそうだ。
クビになる(と思い込んでいる)んだから。

会議室へ向かい、ドアをノックする。

「失礼します」

「どうぞ」
低い声が響く。

ドアを開けると、
上司2人と、人事の上役が既に
席に深く座っていた。

皆、神妙な面持ちだ。

やっぱりアレか。
ー私に引導を渡すための話かー

肩を落として、差し出された自分の席に座る。

上司が、口を開く。

「今日いきなり、
ここにアイさんを呼んだのは
他でもなくって、アイさんの
これからの話なんだけどー」

咄嗟に思い浮かんだのは
裁判所で判決を受けるシーンだ。

「主文、被告人をー」

ー終わったー。
ー私の、長いとは言えないが、
それなりに頑張ってきた、
専門職としての職業人生がー。

上司の話は、こう続いた。

「ー仕事の場所を変えて、
業務内容も変えて、
やってみるのはどうか、
という提案なんだけどー」

ん?

一瞬固まり、そして理解する。
どうやらクビではないらしい。

身体中の力が抜けるのを感じた。
よかった。とうちゃん、まだ働いていいってよ…。

上司の言う提案とはこうだ。
・現在の事務室から、
 別のフロアの事務室に異動する。
・そこで直属の上司と、
 マンツーマンで仕事する。
・業務内容を一部変更、見直して、
 今後の仕事内容拡大を目指す。
・異動は一時的なものを考えている。
と、いうものであった。

ー悪い話じゃない。むしろ、良い話だ。

実際、現状のまま、
今の事務室にいることは、
私にとって、
あまり良いこととは言えなかった。

周りで忙しなく働く、かつての同僚たち。
その役に立っていないことを常に感じながら、
過ごす時間。

私に向けられたものではないだろうが、
漏れるため息が、あちこちで聞こえる。

そしてウマの合わない、人間関係…
減らない薬。増える酒量と体重。
抜け続けていく髪、減り続けていく貯金…

どう考えても、その"場"に、
いない方がいいと思った。

二つ返事で承諾しようと思ったが、
妻とも相談して、返答することにした。

正直、異動したとして、不安は残る。
異動先でも、うまくやっていけるだろうか?
一時的ということは、
また戻らなければいけない。
そこからまた、仕事していけるだろうか?
そんな思いが、付いて回る。

ただ今は、あの苦々しい記憶のある場所、
いるだけで苦しくなってしまう場所から、
一時的であっても、一刻も早く出ていくことが、
私の精神を安定させるには、一番良いと思った。

家に帰り、妻に話した。
妻も、私と同じ気持ちだった。
嬉しかった。

次の日、正式に、異動の申し出を受けることを
上司にお願いした。

私は幸せだと思う。
辛い経験をして、今も治療中だけれど、
それを考えてくれる職場があるから。

そして毎日、支えてくれる家族がいるから。
悩みを分かち合える仲間がいるから。
楽しみを共有できる仲間がいるから。
みんな、ありがとう。

これからも、大変なことはあるだろうけど、
大丈夫、きっとなんとかなる。

人生は予期しないことや、
突然の知らせばかりだけど、
それが悪いことばかりでもない。

今、この時を、精一杯、生きよう。

そしてコルトレーンはいつでも、
応援してくれている気がする。
あの日から、ずっと。

もう一度、
この最高に格好いい曲を聴きながら、
みんなに感謝して、進んでいこう。

"MOMENT'S NOTICE"

ここまでお読みくださり、
ありがとうございます。

今後も、
あなたのちょっとした読み物に、
私のnoteが加われば、
とても嬉しいです。

いい知らせが、ありますように。

そしてきょうが、あなたにとって
かけがえのない、いちにちでありますように。



このレコードから、
私が大好きな曲を、もう一曲。

"I'M OLD FASHIONED"

アイ

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