シェア
朝寝とんかつ
2020年6月3日 13:41
「デザートくだしゃーい」 昼食時、娘が言った。娘の食器はどれも、綺麗さっぱり空っぽになっていた。「バナナくだしゃーい」我が家にはデザートシステムがある。満腹中枢があるのか疑わしいほどの食欲を持つ娘に、食事の終わりのサインとして与えていた。今の主なデザートは、子供にも食べやすいように工夫されているこんにゃくゼリーだが、たまの楽しみに果物を買うこともあった。この日の数日前も、たしかにバナナを買
2020年5月31日 00:59
乳児は眠る。日に何度も眠る。眠ることが彼らの成長の一助となるのだ。ここにもまた、強い睡魔に襲われし男児がいた。そしてその子を寝かせるまいと必死に挑み続ける母親の目は、既に死んだ魚のそれのように暗く澱んでいた――。 時は令和、新時代の幕が開けた頃。季節は梅雨、その晴れ間。一人の男児が元気な産声を上げた。髪は少なく、顔はマイルドなゴリラのような顔をしていた新生児であった。私の息子である。生まれた
2020年5月28日 00:04
「あ!犯人が逃げたじょ!」 事件は唐突に始まった。犯人からすれば、それは周到に用意した予定通りの犯行かもしれない。だがそれ以外の人々にとっては、それは常に突然の出来事なのである。 「犯人逃げちゃったの?どうしよう……」 困り果てた女性に、女児が声をかける。「警察を呼ぶんじょ!」言われるがまま、女性は警察を呼んだ。「助けてー!娘ちゃん警察ー!」女児はその言葉に呼応するように、その場