象牙問題と、生で見る美人画 - (美術館インターン10日目)
(2018/06/12) 学芸員インターン、10日目のスケジュール:
朝9:45 開始
昼12:30 ~ 2:00 収蔵スペースで作品のチェック
午後2:00 ~ 2:50 ミーティング
午後3:30 終業
午前中はコレクションの中にある屏風絵について、オンラインリサーチ。
お昼に、作品収納庫に行って、ボスと中国の鼻煙壺(sniff bottle)を幾つか確認しました。(写真はwikipedia commonsより)
鼻煙壺は、清の時代に流行った、粉状の嗅ぎたばこを入れる容器のことです。大きいものでも10cm程度の瓶に、緻密な細工が施されています。
瓶を開けると、象牙でできた小さなスプーンが蓋の裏から伸びています。柄の直径は数ミリ程度の、繊細なもの。蓋を開けると同時に瓶の中からたばこを掬える、合理的な仕組みです。
ただ、ボスが言うには、美術館の外にこれらの鼻煙壺を送る時、象牙の部分は全て切り落として捨てなければならないのだそうです。象牙の取引が国際的に禁止されているからです。
元から象牙はこの工芸品(美術品)の一部だったわけで...これも当時の風習や技術を残している貴重な一部分。現代の都合で手を加えてしまうのは、悲しい気もします。
引き続き収納庫にて、今度は日本の江戸時代の掛軸を開いて、作品の状態を確認。
窪俊満の「三島の玉川美人図」と、水野廬朝の「美人戯狗図」の掛軸を、隣り合わせで壁にかけて、見比べました。
窪俊満
水野廬朝
ボスに「この二つの美人画、どちらの方が好きか」と聞かれたので、廬朝の方を指すと「まだ若いからね」と微笑まれました。どういうこと...?
天龍道人の「葡萄図」の掛軸も、拝見しました。1800年に描かれた作品です。
82歳の時の作品、と作品の左に書いてあります。82歳とは思えないほど、構図も筆の運びも、しっかりと力強い作品です。
この葡萄図は、表装(絵の書かれた本紙の周りに布を貼って、掛け軸として鑑賞できるようにすること)がとっても丁寧に施されていました。ボスが言うには、おそらく明治時代にされたものだろうと。
表装に、葡萄色の濃い紫と、葡萄のつるを思わせる薄い緑色の布が使われていたところが、すごく作品にあっていて素敵だと思いました。
絵自体は水墨画なので、色は付いていないのです。だから、布地の色が、どんな色の葡萄なのか、鑑賞する時に、想像を助けてくれる。
美術館で絵を見る時に、どんな額(フレーム)に入っているのか見るのも好きなのですが、表装技能士の腕次第で、巻物は絵画以上に、作品の印象を左右されるのかもしれません。
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午後は、ボスたちが出席するミーティングに、他のインターンの子達と端っこに座って参加しました。
ミーティングでは、来年の夏に開催される予定の特別展示についての概要を、担当のキュレーターが、ほかの部署の担当者たちに向けて報告していました。いろんなキュレーターのプレゼンを見ていて「プレゼンのスキルって大事だなあ」と、改めて思いました。伝えたいことを端的に、順序立てて言えるスキルがあるかないかで、情報の受け手にとっての伝わりやすさが全然違ってくるから。
...ミーティング後は、リサーチを進めて帰宅し、カツカレーを作りました。笑
半年ぶりに作った日本食は、やはり美味しかったです。
上の3作品の画像は全て、美術館が一般公開しているオンラインデータベースから引っ張ってきています。ご参考までに!
読んでいただき、ありがとうございます!