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親子という社会から踏み出す、はじめの一歩に祝福を

一昨年の夏前のこと。

年中さんにあがったばかりのYちゃんが、急に教室を怖がるようになった。

私が手を出したことはないし、
怒ったこともないので理由がわからない。

お母様いわく、以前から時々、
母のもとを離れようとせず、
幼稚園にも行けなくなるとのこと。

「早く元のYに戻ってくれるといいのですが・・・」

親としては大変だろう。
終始そばにいなければならない。

同時に、「元のとは?」と、思ったり。

『元に戻るというなら、今のYちゃんは本当のYちゃんではない?
そんなはずはない。母親と離れたがらないYちゃんも本当のYちゃんだ』
そう思いつつ、
理由も分からないから何もできない。

でも、力になりたい。

「出来ることがあれば言ってほしい」
という思いは伝えた方が、
お母様の気持ちも少しは楽になったり、
変わるかな、と電話をつかむ。

一方的なエゴにならないかな…とすごく迷いながらかけたコール音は留守だった。


なぜかこのとき思い出したのが、
Hくんのお母様。

悩みがあると、
レッスン後に40分近く相談下さったり、
欠席のお振替で少々無茶なお願いを下さったり。

私としては、
相談はしっかり聞きたいからこそ、
事前に日程を聞いてほしいし
振替ルールも守ってほしいと思うのだが、電話などの折り返しはいつも必ず下さった。

それは、
きっとそれぐらい、
私を近い存在として
無茶を言うほど頼って下さっている、
とも考えられるんだなぁと振り返る。


Yちゃん母には、メールにした。

「サポートできたらと思っております」
「なにか出来ることがあれば、いつでもご連絡下さい」

届いてくれているといいなぁと、思う。



三日後、
Yちゃんのお母様から返信があった。

カウンセラーに相談したところ、
HSCの特徴に似ているとのこと。

「二か月近く母親から離れず、困っています」と文末は締めくくられていた。

返信の内容を考えながら、
Yちゃんのことを振り返る。


Yちゃんは、実に思考力と理解力が高い。

だからこそ、
先を読む力に長け、
大人では想像つかないことも想定してしまうのかもしれない。

同時に、
協調性も高いので、
他の子の涙や辛さを自分事のように
感じて敏感になっているのかもしれない。
優しい心を持っているのだ。


勇気を出して、
えいや、と電話を手に取る。


今度は、幸い繋がった。
言葉を選びながら、
私から見るYちゃんについて伝える。

涙声で「ありがとうございます」と、
言って下さったお母様。
本当に少しでも、
心が軽くなっているといいなと思った。



そんなYちゃんも、
今年で卒園と同時にレッスンも卒業となる。

母子分離が難しくなってから見守り続けた3カ月弱を経て、
毎週自分でレッスンに行く教材準備をするようになり、
控えめだったYちゃんから一変、
「こんにちは~!」と元気な挨拶もできるようになった。

今では、
「え~、先生はスタバ飲んだことないの~?ふふ!」
と、あくまで可愛い上から目線で、
笑ってくれるほどだ。

友達には、自分から質問したり、
話しかけたり、他者と積極的に打ち解けられる成長を見せてくれている。


Yちゃんは本当にかしこく、心の優しい子だ。
君なら、きっとどこでもうまくやっていける。
自信をもって、
怖がることなく、
色んな人と新たな道を拡げていってほしい。

記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。