見出し画像

写真とコーヒー

僕の勤めている会社の広報誌の巻末にクリエイターズコラムというページがあり、そこで何かこだわりのある事を書いてくれ、と言われたことがあった。
「本業以外でね」というのが一応きまりらしい。つまり写真ネタは封印である。

さて、そもそも「こだわる」という事があまり好きではなく、「つまらないこだわりは捨てる」と言うことにこだわっているので「なんともなあ」ではあるのだが、まあ自分の趣味を総ざらいしてみた。車?バイク?今時ではないなあ。オーディオ?これは後輩にとっておこう。旅?普通すぎる。掃除?つまらん。コーヒー?、コーヒーか、これだな。

画像2


理由はいくつかある。
まず、自分の中にコーヒーのイデアがあること、これはブラジル滞在時代に刷り込まれたものだ。
次に、趣味としてやっている人が少ない(当時)こと。
そして、写真と似ている事。
かくしてそのコラムは僕がコーヒー器具に囲まれた写真を使ってレイアウトされた。

僕の中でのコーヒーのイデア、オリジナルはブラジルのカフェジーニョである。
これは輸出基準に満たない低品質の豆を七難隠すほどに深く焙煎し、真っ黒になった豆から真っ黒なコーヒーを入れ、デミタスカップの半分近くまで砂糖をいれてかき混ぜないで飲む。というもので、こう書くと美味しくなさそうに聞こえるが強烈な苦味と甘味が猛烈にタッグし、なかなか味わい深いものである。
ちなみにカフェはコーヒー、ジーニョは小さいという意味で、見た目はエスプレッソに近い。小さな巨人系である。

これが僕のコーヒーのデフォルトであるからして、帰国当時日本のコーヒーのデフォルトであった粉末のインスタントコーヒーは、違う飲み物として認識された。またとくに食後にコーヒーを飲む文化も無いわけで、しばらくコーヒーから遠ざかることになった。

大人になってどこかでコーヒーを口にする機会があり、やはり違うなあと感じていたのだが、ない物は自分で作ってみようと思いレギュラーコーヒーを淹れるマシンを購入した。ほとんどデザインに惚れて買ったもので性能は良く分からなかったが、これがキッカケでコーヒー道にハマる事になる。

コーヒーは調べてみるとなんとも広く深い。
世界で最も飲まれている飲み物だという。確かに味はともあれコーヒーが飲めない国はほとんど無い。
栽培は赤道を挟んで北回帰線と南回帰線のあいだ、コーヒーベルトと呼ばれる熱帯地域で行われ、これが世界中に流通していく。そして様々な地域で独特のコーヒー文化が生まれ、人々に親しまれている。

少しコーヒー道をかじってみて、様々な道具や豆を駆使して色々な味わいを作ることができるので趣味として十分成り立つと感じた。だから、「コーヒー好きです」ではなくて、「趣味でコーヒーやってます」と言う事にした。 

画像3

飲まれている地域も広ければ、コーヒーに関わっている人も非常に深度が深く。たまにしか飲まない人から毎日飲む習慣のある人、趣味人から世界一のバリスタを目指すプロまで、世界中の人々で巨大なコーヒーピラミッドが出来ている。

やっと本題にはいるが、
これは写真文化に近しい。写真が無い国は無い。写真消費者から趣味で撮る人、トッププロまで多くの人がピラミッドを作っている。
他の事でも同じような構成になっているものもあるが、この2つ、コーヒーと写真はその規模の巨大さで群を抜いている。
多くの人が必要とし、楽しんでいる文化なのである。

さて、趣味としてはカフェジーニョの再現から始まり、様々な器具を手に入れ色々なコーヒーを淹れて楽しむ事を覚えた。他の趣味よりお金もかからないし、なにより難しさが魅力だ。
なかでもエスプレッソは深い。繊細である。マシンは僕にとってはカメラに近い。いい写真を一枚撮るのが大変なように、あのシンプルな一杯を淹れるのに中々の苦労をする。

エスプレッソは
(写真は)
豆を選び焙煎を調整し、
(フィルムの銘柄や感度を選び)
ポタフィルターに粉を押し込み
(カメラにフィルムを詰め込み)
目標の味を求めて
(綺麗な写真を求めて)
プレススイッチを押す
(シャッターボタンを押す)

と言った具合に夢中になれる。挽き具合やタンピング(粉をダンパーを使って押し込める作業)など細かい調整も、写真の露出やピントを決めるようで面白い。 そして、思うようにはいかない。
とにもかくにも、「一杯にこめる想い」と、「一枚にかける想い」は近しいのだ。

画像4

画像5

この趣味の醍醐味はコーヒーの味がわからない、飲めない、という人に美味しいと言わせることだ。
飲めない理由も様々だが、繊細な違いに意識が行かない人種、水は水、酒は酒みたいな人が一番手強い。
こういうい人は写真にもいて、僕が撮った写真も素人が撮った写真も同じ(^◇^;)という人種である。
そう言う人種にはもう手を変え品を変えレシピを変え、機嫌を読み志向や思考を推測し、その日の気圧まで考慮してコーヒーを撃ち込むのである。

何度かそう言う人種にも「あれ、これ美味しいよ」と言わせた事がある。気を使って言ってくれたのかどうかはさておき(笑)「あ。そう、良かった」とクールに振る舞いつつ、心の中ではガッツポーズを決めるぐらい勝った気になる(^^)

画像6

ちなみにこの付け合わせのお菓子も全て僕の自家製である。

自分が淹れたコーヒーを美味しいと言ってもらえるのも、自分が撮影した写真を綺麗だねと言ってもらえるのも同じくらいに嬉しいかもしれない。
多くの人を楽しませたい、クリエイターとしてそれはコーヒーも写真も同じ。そして道は長い。どちらもまだまだ、長く楽しめそうである。
その為にも、この文化を大事にして、楽しさを伝えていく事もしっかりやって行こうと思う。

人は自分自身で幸せになる為の意識を持って、自らが行動しなければならない。それが素敵な街づくりや平和への原動力となる。

画像1


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?