マガジンのカバー画像

BAR HOPE

5
小さなBARに訪れる風変わりな客達の、お酒にまつわるショートストーリーを書いていきます。
運営しているクリエイター

#小説

「BAR HOPE」

「BAR HOPE」

②ジャックダニエル〜

カウンターの中に置いた木製のスツールに腰掛けて夜空を眺めていると、店の古い電話が鳴った。僕は慌てずに、約束の5コール目までたっぷりと待ってから受話器を取る。

「今日は席空いてるかい?」

受話器からはいつも通り本間さんの声がして、空いてますよと僕が返事をしたら、今から二人で向かうとだけ言って、本間さんはさっさと電話を切ってしまう。この店の電話は本間さんの為にあるような

もっとみる
「BAR HOPE」

「BAR HOPE」

①ブラッディーサム〜

この店にはあまり客が来ない。マダムが騒がしいのはごめんだと言って、駅から30分も離れた雑居ビルの三階に店を構えているせいだ。
古びた雑居ビルの、錆びくさい螺旋階段を登った先にこの「HOPE」という名のBARはある。地獄の門みたいに重く大きな扉を開けると、店内には豪奢な一枚板のカウンターと、ゆったりとした椅子が五脚だけ並べられている。
三段に配列されたバックバーには、ウ

もっとみる